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現場を主役に、全社横断プロジェクトチームを結成

まずは動かしてみる。沖縄の中小企業を支える支援機関のプロジェクトチームが守った3つのルール

2026年08月25日 12時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水 写真提供●サイボウズ

現場の声がその場で形になり、システムは育てるものだという意識が根づいた

 現場の声を聞き、その場で解決・改善し、チームに持ち帰る。メンバーはまた現場の声を聞く。この往復を毎週続けたことで、チームにも組織全体にも心の変化が現れた。自分たちが出した意見が目の前でシステムに反映されるという驚きから当事者意識が生まれ、システムは与えられるものではなく、自分たちで育てるものだという実感がチーム全員に広がっていったのだ。

 運用と改善のサイクルを回すなかで、アプリ作成の鉄則も定まった。現在だけでなく未来を見据えて設計すること、個人ではなく組織で使うものにすること、そして完璧さよりもシンプルさを重視し、日々改善できるものにすることだ。この考え方を徹底し、kintoneは職員全員に浸透していった。

現場の声をその場で反映する往復を毎週続け、当事者意識が育っていった

 続いて、実際に作ったアプリを見せてくれた。職員向け共有スペースの画面は、ITが苦手な職員でも迷わないよう、シンプルなアイコンとわかりやすい動線にこだわっている。基幹アプリである「企業情報」「相談カルテ」「事業管理」は新崎さんが作り、各事業で使うアプリはプロジェクトメンバーがそれぞれ手がけた。企業情報も相談カルテも、項目を徹底的に削ぎ落としているとのこと。

「アプリの開発自体には、そこまで時間はかかっていません。ですが、その何倍もの時間を、この項目の選定にかけています」(新崎さん)

 工夫したのは、kintoneの標準機能である「アクション」の活用だ。相談カルテを入力した後にボタンを1回押すだけで、必要な情報が該当する事業のアプリへ自動転記され、二重入力を防げる。事業管理アプリでは、36事業の予算執行やKPIの月次状況をリアルタイムに追えるよう可視化した。予算執行率を示す横向きの棒グラフは、コードを使わず、文字列1行の計算式にIF文を組み合わせた力技で、標準機能だけで実現している。

基幹アプリは項目を削ぎ落とし、動線をシンプルに設計した

 成果は数字にも表れた。情報確認にかかる時間を約40%、毎月の集計業務にかかる時間を約50%削減できた。数字に表れない変化もある。大量の資料を印刷して臨んでいた調整会議は、今では職員全員がノートパソコンを持ち寄り、画面を見ながら進めるようになったという。事業管理アプリの効果もあり、KPIの達成率が大幅に向上するとともに、職員の業務改善に対する意識も高まった。

 新崎さんが一番嬉しかったのは、削減した時間でも達成したKPIでもなかったという。ある日、職員からこう声をかけられた。

「新崎さん、ありがとう。助かります。起業支援に使える時間が増えて、先方にも感謝されました。支援の幅が広がりましたよ」

 残業中だった新崎さんの疲れは一瞬で吹き飛んだ。業務を効率化し、空いた時間で起業支援を手厚くする。支援が企業の課題解決と成長につながり、企業から感謝され、その支援ノウハウはkintoneに蓄積されていく。泥臭く作った業務システムは、そんな好循環を生む仕組みになっていた。

情報確認にかかる時間を約40%、月次集計業務にかかる時間を約50%削減した

 DXはまだ道半ばで、やっとスタートラインに立ったばかりだと新崎さんは言う。最後に、会場へこう呼びかけてセッションを締めくくった。

「組織を変えられるのはシステムではなく人です。そして人を動かすのは、その人の当事者意識、自分たちでやるという意識だと思います。私たちも、まだまだ成長し続けます」(新崎さん)

質疑応答

セッション後、サイボウズの西村杏さんが新崎さんに質問した

サイボウズ西村さん:組織横断のプロジェクトチームまで作っている組織は多くないと思います。今回、全社横断でチームを作ろうと思った背景やきっかけを、もう少し教えていただけますか。

新崎さん:私たちは外郭団体ということもあり、行政組織にありがちな縦割りが課題になりやすいところがあります。関わる先にもそうした組織が多いなかで、いろいろな経験を積んできた専務に、縦割りではダメだ、横串をきちんと刺していくんだという意識がありました。ですので、最初から組織全体で取り組むことを前提に進めていました。

サイボウズ西村さん:メンバーの選出はどのようにされたんですか。

新崎さん:各部署のなかから、若手の正社員を中心に選定していました。正社員のほうが各事業への波及性が高いと考えたためです。手を挙げてもらうというよりは、課長などが、この人がいいのではないかと選んで任命するかたちでした。

サイボウズ西村さん:今では現場が自らアプリを作り、意見も積極的に上がるようになったとのことでした。私も営業でお客様と話すと、現場がなかなか意見を出してくれない、アプリを作ってくれないという声をよく聞きます。新崎さんは、どうやって現場のやる気スイッチを押せたのでしょうか。

新崎さん:やはり当事者意識を持ってもらうことがポイントです。そのポイントは現場ごとに変わってきます。営業部門であれば、営業に関わるkintoneの活用方法から話を始める。それぞれの現場に合った形で少しずつ関わってもらい、その経験を積み重ねていくことが大切だと思います。

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