第327回
現場を主役に、全社横断プロジェクトチームを結成
まずは動かしてみる。沖縄の中小企業を支える支援機関のプロジェクトチームが守った3つのルール
2026年08月25日 12時00分更新
中小企業を支える公正中立な支援機関は、属人化と紙に追われる組織となっており、日々の業務で疲れ切っていた。平均年齢50.6歳の職員の意識を変えるには「アジャイル」しかない。組織を変革するためにプロジェクトリーダーが取った戦略は、横串を刺し、現場を主役にすることだった。
kintone hive 2026 fukuokaの3番手として登壇したのは、沖縄県内の中小企業の経営課題をワンストップで支援する沖縄県産業振興公社の新崎康利さん。プレゼンでは、バラバラな情報、属人化、紙に追われる手作業。さらに新しいものへの拒否感といったkintone導入時あるあるの壁を乗り越えた事例について語られた。
紙とハンコが根付く職場で、業務が属人化し、職員は疲弊していた
沖縄県産業振興公社は、沖縄県内の中小企業を対象に、経営革新や創業、海外展開など、さまざまな経営課題をワンストップで支援する、公正中立な支援機関だ。身近な組織に例えると、商工会に近いという。
所在地は那覇市で、設立は1971年、今期で55期目を迎える。県内の支援機関を束ねる中核的支援機関にも位置づけられ、年間予算は約20億円、36の支援メニューを実施している。職員数は120名だが、正社員は15名にとどまるのが特徴。各事業を担う専門人材として任期付き職員を多く採用しているためで、職員の平均年齢は50.6歳だという。
登壇した新崎さんは、新卒で入職して16年目を迎え、今回のプロジェクトではリーダーを務めている。新崎さんは、同公社が大切にしている価値を語った。
「私たちが一番大切にしているもの、それはお客様である沖縄県内の中小企業の皆さんからいただく、『ありがとう』の一言です」(新崎さん)
2年前、組織は相当に疲弊していたそう。情報はバラバラに保存され、業務は属人化して担当者しかわからない。集計は毎月手作業で、残業も増えていた。紙が中心で、紙に追われる組織になっていた。中小企業を支援する立場でありながら、日々の事務処理で疲れ切っていたのだ。
加えて、任期付き職員が多いうえに業務が属人化していたため、現場で得た支援ノウハウが共有・蓄積されず、組織として成長しきれていないという課題も抱えていた。
支援する組織が変わらなければ、顧客に届ける価値も高められない。新崎さんはそう気づいたが、どう変わればいいのかがわからなかった。
組織横断チームを結成、毎週改善を重ねるアジャイルで走り出した
転機となったのは、統括責任者である専務理事の谷合さんの一言だった。谷合さんは沖縄県庁からの出向職員で、県庁でのkintone活用の実績をもとに、新崎さんにこう告げた。
「おい新崎、kintoneをやろう。部分最適ではなく全体最適だ。完璧なんて目指さなくていい。まずはやってみよう。アジャイルでいくぞ」(谷合さん)
当時の新崎さんは、アジャイルという言葉の意味さえわからなかったそう。それでも、未来のビジョンを描く谷合さんと、現場で泥をかぶる新崎さんの二人三脚でプロジェクトが動き出す。
ところが現場では反発が起きた。平均年齢50.6歳の組織なので、またシステムを入れるのか、入力が手間だ、今のままでいい、といった冷ややかな視線が向けられたのだ。kintone導入時にはあるあるの壁とはいえ、システム担当でもなく通常業務も抱える新崎さん自身、何から始めればいいのか不安でいっぱいだったという。
そこで新崎さんが下した決断が、現場を主役にすることだった。5つの部署すべてから担当者を1人ずつ選び、全社横断のプロジェクトチームを結成する。
チームで守ったルールは3つだけ。全員が揃わなくても短時間でもいいので毎週必ず進捗会議を開くこと、現場の意見を吸い上げてその場で解決すること、そして完璧を求めず、まずは動かして使ってみること。これを繰り返すうちに、チームにアジャイルの文化が芽生えていった。
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