「国際郵便で受けとった原本の訂正を国際郵便で送って、また国際郵便で戻してもらっていました」。海外駐在員を支えるための業務が、かえって海外駐在員や担当者の足を引っ張る結果に。アナログ業務、属人化、情報の分散をどうにかできないか?
kintone hive 2026 osakaの3番手として登壇したのは、食品素材加工会社である不二製油グループ 海外人事部。海外駐在員を支えるべく、kintoneアプリを導入した結果、属人化された業務が仕組み化され、関係者が連携できるワンチームとなるまでの経過をRPG風プレゼンで披露してくれた。
海外駐在員のサポートにはだかる「セキュリティの壁」
「kintoneと共に歩んだ関係性の再構築~賢者と武闘家の大冒険~」というタイトルで登壇したのは、2024年のCybozu Daysにも登壇した不二製油 人材開発部 海外人事部の大森誉史さんと小林麻紀さんだ(関連記事:言語も文化も慣習も違って、業務環境も変化し続ける そんな海外現地法人をサポートするkintone)。
終始2人の掛け合いで行なわれたセッション。「海外人事部の仕事って、わかりにくいですよね~」(大森さん)と「RPG風にしたら、少しはわかりやすいかも~」といううやりとりの末、以下のプレゼンはすべてRPG風に。自己紹介で「冷蔵庫パンパン」くらいの体重を謳う大森さんは「賢者」、「この世に存在しないのリンゴ3つ」くらいの体重という小林さんは「武闘家」という設定だ。
ゆるふわな掛け合いでスタートしたプレゼンだが、不二製油自体はグループ連結で5000人を超える規模の大企業。「植物性素材で世界の食を支える」を謳う食品素材加工会社で、植物性油脂、乳化・発酵素材、業務用チョコレート事業、大豆加工素材などの4事業を展開。お菓子やパン、惣菜など身近な食品の「美味しさ」と「機能」を縁の下で支えている。
また、同社は世界中に拠点をかまえるグローバル企業でもある。展開拠点は15カ国に渡っており、海外駐在員は約70名。原材料の調達を実現するため、まずはアジアから拠点展開を始め、現在は日本のチョコレートを拡げるため、ヨーロッパにも進出しているという。この海外駐在員を赴任から帰任まで支えるのが2人の所属する海外人事部だ。
従来、この海外駐在員のサポートにおいて最大の障壁は「セキュリティの壁」だった。この壁のために、海外駐在員は国内のポータルサイトが見られず、海外人事部も海外駐在員に対してはメールで対応するしかなかった。「サポートするつもりで大量のメールを送りつけてしまい、むしろ攻撃になってしまっていた(笑)」と大森さんは振り返る。
申請書もExcelだったため、複数のバージョンで混乱を来していた。また、現地の担当者からが駐在員を介して海外人事部に問い合わせをしても、メールベースだったので板挟みになる事態。海外駐在員をサポートするための業務だったが、結果的に現地の負担になっていたという。
「このやり方はもう続けられない」でkintone導入 最初から完璧を目指さない
こうしてなんとかやってきた海外人事部だったが、コロナの来襲でついに限界を迎えることになる。業務がアナログすぎて、在宅勤務が難しかった。「国際郵便で受けとった原本の訂正を国際郵便で送って、また国際郵便で戻してもらっていました」と小林さんは振り返る。
「このやり方はもう続けられない」と考えた海外人事部は、kintoneの導入を決断する。この背景には海外でも安心して利用できる「高いセキュリティ」、時差・距離を超えてリアルタイムに連携できる「クラウド型」、英語・日本語を同一アプリで扱える「多言語対応」、複数業務を一元管理できる「アプリ間連携」など、kintoneにはさまざまな「魔法」があったという。
「われわれのような非IT人材でもアプリが作れるノーコードというのがかなり魅力的でした」(大森さん)とのことで、kintoneに挑戦し始めた海外人事部。「サポートとコミュニティには本当にお世話になりました」(小林さん)と語りつつ、言語・文化などが異なる多様な関係者間において、「どのように業務をkintone化したか」「どのように課題に対応したか」という2つのアプローチで紹介した。
まず「どのように業務をkintone化したか?」。これに関しては、「最初から完璧を目指さない!」とキーワードに5つの段階的なアプローチをとった。ステップ0では、まず海外駐在員に方針説明会を実施。海外駐在員が不安を持たないよう、全体像を見せた上で、余裕を持ったスケジュールで段階にリリースすることにした。「海外駐在員にとっても安心してkintoneになれる時間を確保でき、私たちもリリースの時期を早めたり、フィードバックが集中することを避けられました。なによりkintoneを構築する時間を確保できました」と大森さんは振り返る。
ステップ1では基礎固めとして、駐在員台帳、家族台帳、異動・帯同、グループ会社一覧などのマスタを整備した。海外駐在員は登録情報を把握できるだけではなく、マスターのルックアップにより入力が容易になった。もちろん、海外人事部ではばらばらだった情報がデータベース化され、1つの資産になったという。
ステップ2はチュートリアルとして安全な訓練場を作った。たとえば、お知らせ、各種資料、給与明細などは見るだけのアプリなので、慣れと簡単を実感できる。また、このうち給与通知や現地受取額変更アプリなどは利用必須なので、練習にもなり、便利さを実感できるという。こうしてユーザーも、構築社も徐々に慣れていった。
ステップ3はレベルを上げながらいよいよ実践。とはいっても、まずは「関係者の少ないアプリ」を複数人数のアプリへ、「シンプルなアプリ」から「複雑なアプリへ」とステップアップ。最後のステップ4では、現地担当者やVISA業者、国内担当者など仲間の巻き込みを行なった。導入メリットを説明し、一度断られても粘り強く交渉し、安心して利用できるようにアクセス権設定を明確にした。これにより、70名程度の海外駐在員に対して、アカウント数は170程度に増やすことができたという。
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