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愚痴って、プロに相談して、泥臭く議論 そして全員で育てるシステムに

岸和田のおかんが語るkintoneの育て方 大事なのは「忍耐と根気」「現場の声」、そして「母心」

2026年06月04日 07時00分更新

 「なんとかしてあげたい母心」でkintoneの社内導入と業務改善を進めた2人のおかん。優秀な社員たちだが、システム入力に後ろ向きで、お願いもなかなか通用しない。果たして社内にkintoneは根付くのか?

 kintone hive 2026 Osakaの5番手に登壇したのは、地元大阪岸和田の型枠製造メーカーである高洋商会の天堀真紀子さんと稲田千保さん。利用が浸透しない社員たちに愚痴り、プロに頼って、現場と議論し、社内にkintoneを根付かせていく。そこには「なんとかしてあげたい母心」があった。

だんじり大好きな型枠メーカー 人情派おかんの人生訓がすでに含蓄深い

 高洋商会はだんじり祭りで有名な大阪府岸和田市にある型枠製造メーカー。従業員は50名で、18歳から80歳まで年齢も幅広いが、やっぱり祭り好きが多い。だんじりの時期が近づくと、みんな浮き足立ってくるという。展示会などで着用するハッピTシャツをまとった2人も、すっかり祭り気分だ。

 今回登壇した高洋商会の天堀真紀子さんは五十代・三児の母で、大好きな言葉は「笑う門には福来たる」だという。「みなさんも、私も50年生きてたら、人生いろんなことあるんですけど、そのときはとりあえず口角を上げて、前向いといたら、前向きになるんじゃないかと思って、この言葉が大好きです」と含蓄深い言葉。所属は企画部で、「kintoneを活用した業務改善やなんでも屋」を自認する。

高洋商会の天堀真紀子さん

 もう1人の登壇者である稲田千保さんも五十代・二児の母。好きな言葉は「義理人情」。「AIが発達している世の中ですが、義理人情がなければ、この世の中はうまくいかないと思っています」とこれまた含蓄深いコメント。所属は営業部で、見積や図面制作、企画などのほか、「業務改善アイデアの請負人」を自認する。

高洋商会の稲田千保さん

 そんな人情派の2人だけに、共通のマインドは「なんとかしてあげたい母心」(2人)。まるで2人のランチに混ざったかのような掛け合いで始まったセッションは、高洋商会が作っている「型枠」の説明からスタートする。

 型枠とは、コンクリートを固める枠のこと。木の枠にコンクリートを流し込んで、固まったところで枠を外せば、好きな形が作れる。高洋商会はトンネルや高速道路の橋脚、らせん階段などさまざまな型枠を作って、型枠大工やゼネコン、サブコン、工務店に卸している。

特殊な型枠が得意な高洋商会。木工部と天候部があるのも珍しいという

 高洋商会は特殊な型枠が得意。木工部と鉄工部が両方あるのも、型枠業界では高洋商会だけだという。「ちょっと自慢させてください。先ほどのような素晴らしいものを作れる技術者集団です!」とアピールした天堀さんは、高洋商会に入社した約5年前にさかのぼる。

社内にあるシステムがバラバラ 書類もファイルもバラバラ

 天堀さんが高洋商会に入社した直後。山川社長から言われたのは、kintoneの始動だった。「会社の全体像見るためにkintone入れるんだけど、稼働できていないので、まずは営業から動かしていこう。取引先と担当者アプリもね。天堀さん、よろしく!」と言われたのだ。

 天堀さんは当時kintoneを知らず、読み方すらわからなかった。ともあれ、高洋商会にkintoneが誕生し、ここから「高洋成長アルバム」に最初の1ページとなるのだが、第1の壁「社内バラバラ問題」が発覚した。社内にあるシステムも情報も、すべてバラバラだったのだ。

 高洋商会では、請求書・仕入れ管理、生産管理、図面管理という大きく3つのシステムを利用しており、各人がそれぞれにファイルを保有していた。そのため情報探しが大きな課題だった。

システムも、情報もバラバラだった

「ホント、大変でしたよね~」(天堀)
「たとえばね、総務さんから『稲田さん、この案件の見積ってどこにあるんですか?』と聞かれて、遠くにいる営業さんに問い合わせると、電話で「どこどこのフォルダのどこ」と説明されるんです。で、その『どこ』って『どこ』?(笑)」(稲田)

 社内ではオーダーや手配の「言った言わない」も日常茶飯事。天堀さんから見ると、営業から回ってきた見積書を請求書に転記する作業も大変そうだった。しかも、同じような資料がその都度作成される。

同じような資料をその都度作ってしまう

「主婦なんで大根に例えさせてもらっていいですか? 同じ大根で、いろんな料理を作って、いろんなところに置いて、腐らせるんです(笑)」(稲田さん)

システムアレルギーが引き起こす「負のループ」 データが登録されない!

 優秀な職人だらけなのに、業務の課題も多かった高洋商会の営業部。kintoneを任された天堀さんは、サイボウズの相談窓口を頼りに、なんとかSFA(営業支援)パックの展開にこぎ着ける。SFAパックはテンプレートにあるkintoneアプリ群で、取引先・担当者・案件・活動履歴などを登録できる。

 kintone事例のテンプレとしては、現場への浸透でだいたいつまづいてしまう。その点、高洋商会では企画部の天堀さんが展開したSFAパックの浸透を、営業部の稲田さんも布教してくれた。入力を続けていくと、案件と活動履歴がグラフで見えるはずと考えたが、なかなか浸透しなかった。これが第2の壁である「システムアレルギー問題」だった。

 営業部の稲田さんは「営業のメモ代わりに登録しよう」「会議での周知に便利」「営業数字が管理できる」などアピール。しかし、営業からは「自分で管理できてるのに、また入れなあかんの?」「必要な資料、出したるから言うて」「なんのためにこれやるの?」といったコメントが戻ってきてしまう。

布教の母が営業部に働きかけてみたが……

「今から思うと、私が小手先の対応だったのがよくなかったのですが、当時はよくお昼ご飯食べながら、いろいろ言うてましたよね」(天堀)
「愚痴ってましたよね~。おばちゃんの言うこと、なんで聞いてくれへんのと」(稲田)
「おばちゃん、しゃべり過ぎて、うるさい言われましたよね(笑)。でも、よく考えたんです。うちはkintoneなくても通常業務、回っていたんですよね」(天堀)

 kintoneに情報が登録されないと、データが蓄積されない。データ活用できないと、やっても無駄なので、協力者が減る。そうすると、ますます情報が登録されないというまさに「負のループ」。しかも、kintone活用しなくても、通常業務が回っている。「そりゃ、私も撃沈しますよね」と天堀さんは振り返る。

 どん底の状況だった当時だが、天堀さんはあきらめない。「くわしい人を紹介してほしい」と社長に直談判すると、数ヶ月後に救世主の「芳井さん」が現れる。「人を動かすとき、お願いはしない。動きたくなる仕組みを作る」が口癖の芳井さん。裏から組織を動かす少しデビルな一面を持つ芳井さんとペアを組み、天堀さんの「高洋kintone」は再起動することになる。

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