2024年4月15日、生成AIサービスを手がけるOpenAIは、日本法人の設立を発表した。日本法人の代表として、元AWSの日本法人で代表取締役社長を務めた長崎忠雄氏が就任。スタートラインに立ったばかりのAI市場の拡大を見据え、顧客との対話でAIの利用用途を広げていきたいと抱負を語った。
OpenAIが日本での活動を本格化 カスタマイズモデルも発表
OpenAIは、2015年にサム・アルトマン氏やイーロン・マスク氏などにより米サンフランシスコで設立。当初はAI技術の研究・開発、リサーチ、実装などを行なう非営利団体としてスタートし、2019年に営利企業を設立。マイクロソフトからの多額の出資を受けることとなる。
2022年にリリースされた「ChatGPT」は2ヶ月で1億ユーザーを超える驚異的な成長を遂げ、今も生成AIの代表的なサービスとして君臨している。すでにダブリンやロンドンにオフィスを開設しており、本日アジア初の拠点として東京にオフィスを設立した。営業活動はもちろん、カスタマーサポート、採用などを進める。
日本法人設立の発表会に登壇したOpenAI 最高執行責任者(COO)のブラッド・ライトキャップ氏は、「汎用人工知能(AGI)によって、人類全体に利益をもたらすこと」というミッションを披露しつつ、「AIで人々に役に立ちたいというミッションは、日本でも共感してもらえるはず」と語る。
現在、OpenAIはAIプロダクト、API、モデルなどを提供している。コンシューマー向けの生成AIチャット「ChatGPT」、スモールビジネス向けの「ChatGPT Team」、大企業向けの「ChatGPT Enterprise」のほか、OpenAIの各種API、マルチモーダルのAIプラットフォーム「GPT4」「GPT4 Turbo」「GPT3.5」のほか、自然言語からイメージを生成する「DALL-E」、テキストから音声を生成する「TTS」、オーディオからテキストを生成する「WHISPER」などのモデルを提供している。
今回は日本法人設立とあわせて、日本語に特化したカスタマイズモデルもあわせて発表した。「GPT4よりも高速で、費用対効果も高く、正確。日本語処理では従来のモデル(GPT Turbo)の3倍の速度を誇る」(ライトキャップ氏)とのことで、アーリーアクセス版を提供する。
日本の拠点は「自然な選択」
今回の日本法人設立に関してライトキャップ氏は、「日本ではテクノロジーリーダーシップという伝統がある。そしてテクノロジーは未来を作っていくと考えられている。われわれにとっても日本は重要なマーケットでもある。コンシューマーだけではく、企業、政府、教育にも拡げて行きたい」とコメントした。
またビデオメッセージを寄せたOpenAI CEO サム・アルトマン氏は、「日本は、公共の利益のために人々と技術が協力してきた豊かな歴史を持っており、私たちはAIによって、日本のみなさんがさらに創造的で、生産性を向上し、世界の進歩にさらに貢献すると信じています。東京は、その技術とイノベーションのリーダーシップで思えば、私たちの拠点として自然な選択でした」とコメントした。
ライトキャップ氏に引き続き、日本法人代表となった長崎忠雄氏も登壇し、「アジア初の拠点ができたこと、そこから新たな一歩を踏み出せたことを大変うれしく思う。今日は生成AI、OpenAIの活動を始める記念すべき初日」と語った。
かつて考えられなかった事例をこの数年で作っていく
長崎氏は今回の就任について、「テクノロジー業界に25年近く身を置いてきたが、さまざまなお客様と対話を重ね、新しいテクノロジーをどのように根付かせるかを培ってきたつもり。AIはまさに始まったばかりで、ものすごい可能性があるテクノロジー。私の経験を活かすことで、日本の社会、日本のみなさんに貢献できると考え、今回このミッションを遂行することにした。対話を重ねることで、かつて考えられなかったような事例を、今後数年かけて作っていきたい」と抱負を語る。
長崎氏のコメントでたびたび出てきたのは、この「対話」というキーワード。クラウドコンピューティングの認知を進めてきた12年半におよぶAWS時代、同氏が継続してきたのが顧客やパートナー、本国などとの対話だ(関連記事:2兆2600億円の投資に値する日本市場を育てたAWSジャパン長崎社長)。「生成AIの登場は、クラウドコンピューティングやインターネットに似ていると感じた。われわれの生活を変える可能性がある。でも、それを実現するのは簡単ではなく、お客様との対話を重ねながらやっていく必要があると思った」と長崎氏は語る。
こうした顧客として、ChatGPT Enterprise導入を決めたトヨタ自動車のIT子会社であるトヨタコネクティッドの常務取締役の伊藤誠氏も登壇した。今回のOpenAI日本法人設立へのエンドースメントを贈るとともに、「100年に1度という大変革期を迎えるモビリティ業界において、われわれもさまざまなDXの取り組みを進めているが、この中で生成AIの活用は欠かせない」と指摘。今後はChatGPT EnterpriseやカスタムのGPTsを活用することで、「プログラミングスキルを持たない従業員でも業務課題に特化したAIツールを開発できるのではないか」(伊藤氏)と大きな期待を寄せているという。
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