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arrowsとらくらくは? モトローラとのシナジーは? FCNTが復活に向けて始動!

2024年02月21日 12時00分更新

◆Lenovoの支援を受けて不死鳥のように復活

 昨年5月の民事再生申請後、9月末にLenovoグループの傘下となったFCNT。10月から「FCNT合同会社」として新しい経営体制で再スタートし事業を進めている。

 富士通時代から考えると30年以上にわたってモバイル事業を手がけてきただけに、大勢のユーザーもいる。arrowsユーザーやらくらくユーザーはどうなってしまうのか? シリーズの今後は? そして会社の再生ビジョンは?

 FCNTのキーマンであるFCNT合同会社 執行役員副社長 桑山泰明氏と、同社 プロダクトビジネス本部 チーフプロフェッショナル 外谷一磨氏にお話を聞く機会を得たので、あのときどうだったのか、何が悪かったのかなど聞きにくいことを聞きつつ、今後の展望を聞いた。

FCNT

FCNT合同会社 執行役員副社長 桑山泰明氏(左)、FCNT合同会社 プロダクトビジネス本部 チーフプロフェッショナル 外谷一磨氏

◆突然のことで社内は混乱ぎみに

──Lenovoグループ傘下になり新しい体制がスタートしましたが、元FCNT社員の心境はいかがでしょうか?

桑山泰明氏(以下敬称略) 民事再生の適用の後に、Lenovoが来て、いきなり事業再開しますと言われても、なかなか気持ちの整理がつかない人もいるかと思います。楽しみだと前向きに考えている人もいれば、どうなってしまうんだろうと心配したりする人、人それぞれの色んな感情があるでしょう。経営の立場としましては、まず従業員のみなさんにしっかりと安心して仕事ができる環境を整えることと、「FCNTは大丈夫、みんなで力を合わせてやっていけば何にも問題のない会社なんだ」ということを時間をかけて共有しているところです。この数ヵ月は激動の時間だったと思います。ここからのFCNTは大丈夫だということをキチンとアピールしていきたいです。

FCNT

外谷一磨氏(以下敬称略) ひとりひとりと面談をするなど、丁寧なコミュニケーションを重ねてきています。今は社内の雰囲気も悪くはありません。

──Lenovoが入って事業内容が変わったことはありますか?

外谷 旧FCNTはケータイのプロダクト事業に加え、らくらくコミュニティを中心にしたサービス事業、ローカル5Gのソリューション事業という3つの柱で事業運営を行っていました。今回Lenovoに承継したのはプロダクト事業とサービス事業となります。そのことによって、よりプロダクトとサービスのシナジーを中心に考えられる事業体制になりました。ここが変化としては大きな部分です。

桑山 FCNTから承継提案のあった事業は新会社で引き継いでおり、今後大いに市場にアピールしていきたいと思っています。また、Lenovoからもスマートフォンを中心としたFCNTの事業に価値を見出してもらっていると感じています。

◆FCNTのスマホはモトローラにも影響を与えている

──プロダクトで言うと、arrowsブランドは今後どうなっていくのでしょうか?

桑山 方針としては大きく2つあります。まず1つはarrowsもらくらくもすでにブランドとして確立されており、それらが持つ機能や特徴は素晴らしいのでもっと伸ばそうという方針です。製品で訴求する機能・強みやターゲットなども異なるので同じLenovo傘下のモトローラとは共存していけると思ってます。また、せっかくグローバルな会社の一員になりましたので、そのスケールメリットは使わない手はありません。現在、(モトローラ本社のある)シカゴのスタッフと日本側とで連日連夜議論を重ねている最中です。もしかしたら、要望次第でarrowsやらくらくがグローバル展開というのも考えられます。その前に、まずは日本のお客様に愛していただいているブランドを、これまでと変わらず、しかし進化させたものを投入していく、というのが第一のステップですね。

FCNT

外谷 よくモトローラの端末をarrowsブランドで売る(もしくはその逆)のか? と聞かれるのですが、そのようなことはありません。基本的に我々のブランド提供価値を継続して伸ばしていき、独立したブランドとして育っていく中で、日本もグローバルも視野に入れて開発していく予定です。

FCNT

スマホをハンドソープで洗えるのは時代にあった特徴だった

──もうひとつのブランド「らくらく」ですが、昔からのユーザーもらくらくコミュニティの登録者数も多いと思うんですけど、その方々は今後どうなりますか?

桑山 らくらくスマートフォンやらくらくコミュニティをご利用頂いているお客さまに対しては、従来から変わることなく、今後もサポートさせていただきます。そのため、サービス事業に従事していた従業員は引き続きFCNTで事業に注力しています。ただ、サービスをもっと拡充していきたいという気持ちはありますが、まずはこれまでのサポートメニューや体制を維持していきます。

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初代らくらくホン

外谷 お客様から見たら、FCNTがフロントで対応させていただくことに変わりありませんので、ご安心いただきたいと思っています。

◆海外勢に押されている日本の市場でどう戦うか

──今の日本市場は海外メーカーの参入もあり、2023年も激動の1年だったように思います。

桑山 そうですね、かなり激戦区になっているかと。しかし、我々もやり過ぎってくらい端末を作り込んでいますので。防水性にしても堅牢性にしても、かなりこだわり抜いて作っていますので、他社との違いは明確に出せていると思います。さらにそれに甘んじることなく「これがFCNTの製品だ!」という部分を、今後妥協なく磨き上げ、弱点を補完していけば、FCNTの市場をしっかり作れると思っています。

外谷 これまでは製品で支持していただいている部分は裏切らずにいきたいですね。一方で、お客様の期待値と我々の実力が及ばず、乖離していた部分があったのも事実です。たとえば価格面とか。もっと手に取りやすかったら……という反省点もある中でグループのシナジーを最大限活用して、お客様に対して還元していくことが目に見えてわかるようにしていきたいですね。

FCNT

──これまでarrowsもらくらくもミドルクラスが多いですが、今後も主軸はミドルクラスなのでしょうか?

桑山 まずはミドルクラスを中心に再開しますけど、次のステップとしてはハイエンドにもチャレンジしたいですし、お客様にお求めいただけるのであればさらに別のこともやっていきたいですが、それは次のステップですね。

外谷 買い換えの受け皿をまずは強化していくつもりです。ハイエンドについてはいろんな方向性がありますし、各社もハイエンドを作られていますので、そこに対して我々ならではの価値を出していけるものでないとダメですよね。

──最後に出したスマホがSDGs的なアプローチの「arrows N F-51C」でしたが、今後もあの路線は続けていくのでしょうか?

外谷 環境配慮という方針のもと開発していくというのは今後もかわりません。arrows Nで培った技術はDNAとして、これからのarrowsシリーズやらくらくシリーズに受け継いでいきます。我々が大切にしてきた日本品質でのコントロールがグローバルに広がっていくことによって、グローバルレベルでモノづくりの品質を日本品質に上げていけると考えています。そうすることで、たとえばサステナビリティ観点においても、よりカーボンオフセットに繋げていける可能性もありますので、お客様にもその重要性を伝えていく努力も考えていかなければ、と思います。

──キャリアとの関係値はいかがでしょうか?

桑山 変わらず、ですね。これからも変わらずにお付き合いいただけると信じていますし、グローバル企業の一員になったFCNTに対する期待のほうが大きいと思います。実際、キャリアの方にお会いして話をしていると、今後のFCNTに多いに期待していただいているという実感があります。

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◆モトローラとのシナジーでお互いの良いところを取り入れられる

──開発面でのシナジーを教えてください。

桑山 グローバルのポートフォリオにFCNTのarrowsなどがあるという感じですね。新製品を準備する過程で、Lenovo本社の従業員とFCNT側で綿密に話し合ってます。モトローラ本社とFCNTが一緒に仕事をするという感じですので、現在シカゴのモトローラ開発チームとFCNT開発チームが一緒に機種開発を進めているところです。

──将来的にはarrowsの機能がモトローラに搭載されたりとか、その逆もあるんですか?

桑山 たとえば防水や落としても割れない堅牢性などのクオリティの高さには、モトローラ側も驚いている機能です。ほかの国で発売してみたら反響あるのではと言われています。双方向でarrowsもモトローラもお互いの良いところを出し合って、それぞれの商品を進化させられるんじゃないでしょうか。

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こんなに曲げても、1.5mの高さから落としても割れない耐久性がウリ

外谷 ハードウェアについてFCNTではなかなか調達しづらかったものが、今後はグローバルサプライチェーンを活用する中で、調達しやすさとか購買コストのメリットもある環境の強みを享受できるので、いいシナジーが生まれると思っています。

桑山 FCNT従業員はお客様に満足頂けるための、より良い携帯・スマートフォン・サービスを届けたい思いが強いです。今回は次期新商品の企画だけでなく、arrowsやらくらくシリーズの特徴や機能などの良さを、熱意を持って伝え続けた高い発信力が、Lenovoとモトローラ側の早いキャッチアップ(理解)に繋がりました。

 また、arrowsとらくらくを深く理解するだけでなく、その価値も実感してもらい、開発の議論に移行していくのは通常この短期間では難しいことですが、FCNTだけでなくLenovoやモトローラの従業員が一丸となって取り組んだからだと実感しています。

◆民事再生からのリバイバルプラン

──言いにくいかもしれませんが、なぜ民事再生になってしまったのか反省点をお聞かせください。

外谷 なかなかできていなかったところで言いますと、部品を買うにしても以前の購買力ではグローバルメーカーにかなわないところがありました。コスト面でのオペレーションはかなり苦労したことも事実です。今回Lenovoと一緒になって、その点が今まで違って対応できる部分かなと。あとは開発的な観点においても、適切な投資が端末にできていたかというと、社内リソースの適切なアロケーションも含めて難しかった部分もあります。たとえばカメラといった、スマートフォンとしての基礎的な進化の技術のために必要な投資ができたかと言うと不十分だったと感じております。

FCNT

 同じLenovoグループであるモトローラも携帯電話を取り扱っていて、同じ事業という共通言語で会話できるので、早期に強化していけるポイントだと思っています。

──らくらくシリーズもグローバル展開を考えていらっしゃいますか?

桑山 展開を考えるまでは進んでいないのですが、Lenovoの上層部からは注目いただいてます。見せるとその素晴らしさを理解してくれるんですよ。タッチパネルの触感とか、ゆっくりボイス、ハッキリボイスとか、普通ではなかなか作らない機能を作り込んできているので、国や人種関係なく良さがわかるんですね。で、いつ出すんだと。商品の良さというのは万国共通で伝わるので、ゆくゆくはチャンスがあれば挑戦したいと考えています。本当はMWCで、またらくらくとか展示したいんですけどね。

外谷 日本だけでなく、世界的にも高齢化社会になっています。身体の衰えに適切にアプローチするというのをFCNTはずっとやってきましたので、そういったソリューションをarrowsだったりらくらくだったりでグローバルに出して行くというのは非常にチャンスかなと思っていますので積極的に考えていきたいですね。

──それでは、arrowsとらくらく以外にブランドを出す予定はありますか?

外谷 我々としては考えていません。私の立場で申し上げていいのかわかりませんが、場合によってはモトローラブランドで我々の技術が乗ったものが出るというのは、グループのシナジーとして今後あるかも知れませんね。

桑山 あくまでもFCNTはarrowsとらくらくの2枚看板でやっていきます。らくらくシリーズも30年間モバイル市場の第一線で戦ってきたという素晴らしい実績があるので。

◆製造場所が変わってもFCNTは国産メーカー

──これまで国産の安心感といったブランドメッセージを打ち出してきましたが、今後製造拠点はどうなるのでしょうか?

桑山 FCNTは今でも国産メーカーだと思っています。その製造場所が日本じゃなくなることはあり得るんですけど、arrowsにしてもらくらくにしてもほかに類を見ないよいうな仕様で作らせていただいています。当然、FCNTのエンジニアとか品質チームが中に入って作るという体制でやりますので、FCNTは紛れもなく国産メーカーです。

FCNT

外谷 我々の品質コントロールがグローバルに広がっていけば、それだけカーボンオフセットに繋がる可能性もありますので、お客様にもそれを伝えていくような努力も考えていかなければと思います。

──今後、FCNTとモトローラのポートフォリオが一緒になることはありますか?

桑山 ここは明確に分けて考えないといけないと思います。市場におけるブランドという意味ではモトローラジャパンでは従来通りモトローラのポートフォリオを販売しますし、FCNTはFCNTのポートフォリオを販売していく。ここが一緒になることはないということは、間違いありません。

arrows N F-51C

◆新機種についてはフルパワーでアクセル全開

──それでは最後に、復帰後第1弾のスマホはいつくらいに出てくるのでしょうか?

外谷 次の商品についてはまだ時間はかかりますが、我々はフルパワーでアクセルを踏んでおりますので、しばしお待ちください。どれくらいの時期にお出しできるかまだ明確にはお伝えできませんが、近いうちに新機種を発表できるように準備をしているので、ご期待ください。

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──ありがとうございました。新しい端末の発表を期待しております!

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