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楽しそうなApple Vision Pro購入旅inハワイについて行ってみた

アップル「Vision Pro」ハワイで買ったら税関で3万円を支払うことになる理由

2024年02月07日 07時30分更新

文● 中山智 編集●こーのス

合計20万超えのガジェットは税関申告が必要です
案外知られていない免税のルールとは?

 というわけで、自分は実にスムーズに日本への帰国を果たしたわけですが、石川さんにはひとつハードルが。実はApple Vision Proの価格が免税範囲の20万円を超えているため、税関申告が必要で、3万800円の消費税を税関で支払うことになります。このことを石川さんがX(旧Twitter)で投稿したところ、疑問に思うリポストが多かったこともあり、実は意外と知られていないのかもしれないなと驚いたのでした。

 免税品というと「酒・たばこ・香水」がまず思い浮かびます。これは例えば、紙巻きたばこなら200本までなど、それぞれ免税範囲が本数や量などで決まっています。そのほかのものに関しては、海外市価の合計額20万円までが免税額となっています。

 これは合計額なので、例えば「5万円の時計と10万円のバッグ、8万円のスマートフォン」を海外で購入した場合、合計23万円ですので免税額をオーバーしてしまい、税関申告が必要です。ただし、合計額が20万円を超える場合には、20万円以内におさまるものが免税になり、その残りの品物に課税されるのです。この場合は10万円のバッグと8万円のスマートフォンが免税範囲で、5万円の時計のみに課税されるといった具合です。

 Apple Vision Proの場合はどうかというと、単体で20万円を超えてしまっているので、本体価格の50万円から20万円を引いた額ではなく、50万円ぶんが課税対象です。Apple Vision Proのケースやバッテリーなどあわせて購入した場合、そのぶんは20万円以内の免税範囲内になります。

税関申告時に払う税金はふたつ
「関税」と「消費税(消費税及び地方消費税)」

案外知られていない免税の範囲

 税関申告時に払う税金はふたつあり、「関税」「消費税(消費税及び地方消費税)」です。関税は品目ごとに税率が決まっていて、例えば、衣類やバッグには15%が課税されます。腕時計やパソコン、スマートフォンなどは関税がかからず、Apple Vision Proもパソコンと同じ扱いになるため、関税はかかりません。

 また、海外での購入価格そのものが課税価格になるわけではなく、個人使用の場合は考慮され、海外購入価格の6割が課税対象価格となります。そのため、上記の5万円の腕時計に対して税金を支払う場合は、課税価格が3万円となり、3000円の消費税を納める必要があります。

 Apple Vision Proは約50万円なので、約30万円が課税価格になり、消費税は3万円ほどで、石川さんは3万800円を支払ったわけです。ちなみに税関ではクレジットカードのほか各種キャッシュレスでの支払いに対応しています。ただし、3万円以上の納税をクレジットカードで支払うと、システム利用料として、別途440円がかかるそうです。

石川さんは税関でApple Vision Proの消費税3万800円をお支払い

 実はアメリカにも、州によって税率は違うものの消費税(正確には小売売上税)があり、石川さんはApple Vision Pro購入時に税金をハワイ州に支払っています。それなのに日本帰国時にも消費税を払うことになるので、税金を2回支払うおかしな状況になっています。

タックスリファンド対象国なら税金の還付が受けられる
でもアメリカは税をダブルで払うことになるため注意

 これを解消するため、タックスリファンドという制度を多くの国が採用しています。例えば、フランスやドイツといった国でも購入時に消費税を支払いますが、帰国直前の空港で還付申請手続をすれば、その国で支払った税金を返してもらえるのです。

 タックスリファンドには購入時の店舗で書類の発行などが必要なため、すべての物品購入で利用できるわけではありませんが、高級品・高額品を売っているお店は大抵対応しています。以前、パリのApple StoreでiPhoneを購入したとき、タックスリファンドの書類やレシートを発行してもらい、実際に空港で税金の還付(クレジットカードへ後日入金)を受けた経験があります。

こちらはベルリン空港のタックスリファンドカウンター(2016年撮影)

 また日本はタックスリファンドではなく、海外渡航者は免税対応店で消費税抜きの価格で購入できます。そのため、海外からの旅行者が日本で免税価格で購入し、日本国内で転売するという事例が多く発生しており、政府はリファンド型の導入を検討しているようです。

 じゃあApple Vision Proもタックスリファンドを利用すれば……といきたいところですが、アメリカはリファンド制度を採用しておらず、日本のように海外渡航者へは税抜きで販売ということもしていません。残念ながら現在のところ、免税額を超える商品をアメリカで購入すると、アメリカの小売売上税、日本の消費税をダブルで払う必要があるのです(オレゴン州のように小売売上税が0%の州もあります)。

Apple Vision Proをハワイで買った場合、4%ほどの小売売上税がかかりますが、ほかの州では8%かかることもあり、アメリカ内では税が安いほうなんです

 というわけで、日本発売日未定のApple Vision Proをアメリカに行って買ってこようかな、と考えている人もいるとは思いますが、製品自体が高い上に税金の支払いもあるので、そのぶんの予算も計算してからにしましょう!

この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)

世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

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