内野「そう。スターバックスに行くときって、単にコーヒーを飲みに行くわけじゃなくて、あの空間で何か作業をすると集中できるとか、あのいい雰囲気の中でのんびり過ごしたいとか、そういうことを求めていくわけですよね」
−そうですね。
内野「同じことで、このクリニックに来たら、なんとなく安心できて、いい気分になって帰ることができる。そんな場所にしたいと思っているんですよ。私、患者さんのことを、診察の間に必ず笑わせようと思っていますから」
−笑うことは脳にいいと言いますもんね。なんとなくですが、脳神経内科の治療というと、投薬をして症状を抑えていくような作業をイメージしますが、先生は、専門医としてどのように捉えていらっしゃいますか?
内野「うーん、薬っていうのは、あくまで薬なんですよ。よく、ニュースになっていますよね。『この病気に効く、こういう薬が認可された』と。まるでその病気を治してしまう薬が完成したかのように思えてしまったりしますが、深く見ていくと『特定の疾患に移行する可能性を、ある特定の患者の群に関しては、抑える』とかですね。そういうものだったりすることもありますよね。だから私、初診時は薬をなるべく出しませんよ。それよりも、生活習慣の中でどのようにケアをしていくか、症状の原因は、生活の中のどの部分にあるのか。そこを聞き出して、ご家族も含めて説明するという過程を大事にしています」
発症前のケアで病気を防ぐ考え方
−そういう意味では、ガンマ波サウンドを日常的に聞くことは、生活の中に脳のケアを取り入れているという考え方もできますね。
内野「とも言えますし、そもそも認知症って難しい。認知症だと思っている患者さんの中で、認知症じゃない方って多いんです。単なる加齢だったり。本物の重い認知症だと、自分でこの病院に辿り着けませんから、ご家族に連れて来られます。そうすると『あ、これは……』と思うんですが」
−病気でなく、加齢ですか。
内野「そういうこともあります。それから『認知症に移行するのを、日常的なケアで防いでいく』っていう考え方も大事になってくると思っています」
−歯周病になってから治療するのは大変だから、日常的なマウスウォッシュで口腔の環境をいい状態に保つ、みたいな。
内野「そうそう、そういうこと。私が本で書いた『脳のおそうじスープ』っていうのも、食事という日常生活の一部を通じて、脳のケアをしていくという考え方ですし、kikippaみたいに、生活に取り入れるだけで、脳のケアができるかもしれない商品って、いいと思いますね。設置して、たまに聴いてみるだけでいいんですから」
−大変面白いお話です。
内野「よく言われますよね。睡眠、食事、運動が健康にとって大事って。私、健康合宿っていうものに携わったことがあって、その合宿では、起床と就寝のリズムをきっちりやって、運動をする時間を設けて……と、生活習慣を徹底的に整えることをしたんです。そうしたら、参加者の血液検査で、ストレスホルモン『コルチゾール』の数値が、参加前と参加後で、明確に変化していたんですよね。健康を作っていくという考え方、大事だなって思います」
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