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ソフトバンク、中之島ロボットチャレンジ2023で高精度測位の「ichimill」を提供

2024年01月30日 12時00分更新

◆ソフトバンクがロボットの大会を支援

 1月28日、大阪府中之島公園にて「中之島ロボットチャレンジ2023」が開催された。このイベントは、人々の往来する実環境において自律移動ロボットが問題なく行動できる技術開発の公開実験を、大学や企業向けに提供する大会となっており、2019年からスタート。2020年からはソフトバンクがスポンサーをしており、インターネット回線を通じてGNSS(全地球航法衛星システム)の補正データを配信する通信方式「Ntrip」の無償提供や現地対応といったサポートをしている

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中之島ロボットチャレンジ2023に参加したロボットと各チームの代表者

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12チームが17のロボットを持ち込んでイベントに参加

 さらに今回から新しい取り組みとして、リアルタイムでロボットの位置表示・物体の位置把握に誤差数cmの測位を可能とするソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」を活用している。

 スマートフォンやドローンなどに搭載されているGPSを使った移動局単体での位置測位の場合、測位誤差は5~10mとなる。自律移動ロボットを運用するには、この誤差では問題があるため、より高精度な位置測位が必要となっている。

 ichimillは、ソフトバンクが高精度測位のため全国3300ヵ所に設置した固定局「ソフトバンク独自基準点」を使い、この固定局が受けたGNSS信号と移動局が受けたGNSS信号を元に、測位コアシステムで補正情報をRTK測位演算し、モバイル回線を使って移動局へ送るサービス。

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ichimillの概要

 さらにichimillは、補正情報配信を受信のほか、モバイル回線や可視化のためのウェブサービスがパッケージ化された、サービス一体型の専用端末「LC01」を使用。別途複数の機器を用意することなく、手軽に今回のようなロボットに搭載し運用可能だ。

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手に持っているのが専用端末「LC01」で、三脚に設置したGPSアンテナからGNSSを受信

 現地ではichimillを使用していないデバイスと、ichimillとを比較した測定デモも披露。三脚に固定したGPSアンテナの位置情報がichimillを使用していないデバイスでは、数mの範囲で常に揺らいだ位置として表示されているのに対して、ichimill専用端末では同じ位置を提示し続けていた。

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「LC01」とその上のモジュールはichimillを使用していないデバイスとして用意されたもの

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青がichimillでの位置情報で、赤がichimillを使用していないデバイスの位置情報。1m四方のマス目となっているが、ichimillでの位置情報はまったく動いていないことが分かる

 また三脚をほんの数cm傾けるだけでも、ichimill専用端末ではその移動の軌跡をしっかりと把握して表示するほどの正確さだった。

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ほんの少しだけGPSを取り付けた三脚を倒してみる

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10cm四方のマス目に表示した状態で、その微々たる三脚の動きをしっかりと検知している

 今回の中之島ロボットチャレンジ2023では、中之島公園にある中央公会堂および中之島図書館を周回する約500mの歩道をルートとして設定。参加するロボットについては、サイズが幅75cm以内、長さ120cm以内、高さは最高部0.6m以上1.5m以下で最高速度は6km/h。そのほかは、同じく自律移動ロボットのイベント「つくばチャレンジ」のレギュレーションに準拠となっている。

◆どれだけマイルストーンをクリアできるかを競う

 コンペティションではないので、優劣をつけるわけではないが、以下のマイルストーンが設定されており、各チームでどのマイルストーンにチャレンジするかは自由。そのため今回は2以降のマイルストーンにチャレンジするチームは少なく、基本的には1の周回を達成するマイルストーンに注力していた。

1、コース周回のマイルストーン

・マイルストーン1 コースを1周する
・マイルストーン2 コースを5周する

2、人物発見のマイルストーン

・マイルストーン1 2ヵ所のエリアで人物発見のエビデンス信号を出す
・マイルストーン2 2ヵ所のエリアで人物を発見し、正面写真撮影を行なう
・マイルストーン3 2ヵ所のエリアで人物を発見し、GPSデータの照合で基準を満たす
・マイルストーン4 5周走行を行ない、5回ともマイルストーン2と3を達成

3、ゴミ発見のマイルストーン

・マイルストーン1 2ヵ所のエリアでゴミを発見し判別も成功
・マイルストーン2 5周走行を行ない、5回ともマイルストーン1を達成

4、ゴミ回収のマイルストーン

・マイルストーン1 回収エリアに自律走行し、発見と回収は遠隔操作、その後自律で戻る
・マイルストーン2 回収エリアに自律走行し、発見も自律で行ない、回収は遠隔操作、その後自律で戻る
・マイルストーン3 回収エリアに自律走行し、発見も回収も自律で行ない、その後自律で戻る
・マイルストーン4 5周走行を行い、5回ともマイルストーン3を達成

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コース概要

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ゴミ回収のマイルストーンのために設置されたマネキンとテーブル。テーブルには回収用のゴミも用意されていた

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マネキンの上にGPSアンテナを設置

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マネキンの足下にはichimillの専用端末「LC01」があり、マネキンの位置を正確に特定していた

 参加チームにはichimillの専用端末「LC01」が貸し出されており、各ロボットに搭載しリアルタイムで周回中の移動位置が正確にチェックできるようになっていた。またichimillを自律移動のシステムに組み込んで活用しているチームもあった。

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各ロボットにichimill専用端末「LC01」を搭載し、正確な移動ログをとっている

 ロボットの形状はバリエーション豊かで、走行方法も車輪を使ったものから、キャタピラや4つ足歩行の犬型ロボットをベースに使うチームもあった。コースは単純な周回ルートではあるものの、一般の歩道かつ実験中という掲示案内だけで、一般の歩行者も普通に歩いているという状況。さらに各チーム2回チャレンジができたものの、2回目は雨天下での実施に。そのため自律移動ロボットにはかなり厳しい環境のようで、危険察知などのシステムがセンシティブに反応し、動きが悪かったり止まってしまうロボットや2回目は棄権するチームも多く見られた。

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参加した自律移動ロボット

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大阪公立大学知識情報処理光学研究室のロボット「Dulcinea」

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パナソニック アドバンストテクノロジーは位置情報の検知にLiDARを使ったロボット「Unibo」(左)とichimillの位置情報を使ったロボット「@mobi」(左)の2台

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神戸高専ロボティクスの「Nvit(oo)n」。こちらはカバーを外した状態

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チャレンジこそしなかったが、ゴミ回収のためのアームも装着していた

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カバーを装着した状態の「Nvit(oo)n」

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物珍しさから一般の人がロボットに寄ってきてしまい、それに反応して移動を止めてしまうケースもみられた

◆クリアできたチームは少なかったが
参加者の実力は上がってきている

 実際にマイルストーン1のコース1周をクリアできたチームは、17のロボットのうち7つ。マイルストーン2のコース5周をクリアできたのは、1つのみという結果だった。中之島ロボットチャレンジの2023年度委員長で神戸市立工業高等専門学校 准教授の清水俊彦博士は「雨対策の重要性も各チームに実感してもらえた。過去と比べると、周回をクリアできるチームは多くなってきていて、各チームの実力は上がってきている」と話していた。

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各ロボットが2分間隔でスタート

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担当者が併走しつつ、自律移動でルートを走行

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神戸高専ロボティクスのもう1台のロボットはUnitree社の4本足歩行ロボット「Unitree Go1」をベースに開発

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各チームのロボットに搭載したichimillで、正確な移動ログが表示できている

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最大5台までの位置をまとめて表示可能

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2023年度委員長の清水俊彦博士(神戸市立工業高等専門学校)

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