週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

VRAM 16GB実装でパワーアップできたか?Radeon RX 7600 XT 16GBの実力検証

2024年01月24日 23時00分更新

ライバルと同じ轍は踏まない

 ここで改めてRX 7600 XT 16GBのスペックを確認しておこう。RX 7600をベースにVRAMを倍の16GB構成とし、さらにゲームクロックを220MHz&TBPを25W引き上げたのがRX 7600 XT 16GBだ。

 これはNVIDIAが昨年投入した「GeForce RTX 4060 Ti」の8GB版と16GB版をを想起させるが、NVIDIAは16GB版創出にあたりクロックやTGPを据え置いてしまったため、多くのシチュエーションで16GB版を選ぶメリットが消失してしまった。

 だがAMDはRX 7600 XT 16GBのクロックやTBPを引き上げることで、VRAM容量が効かない状況でもパフォーマンスを向上させ、RX 7600との差別化を図った。パフォーマンス向上を狙っているのならなぜCU(Compute Unit)を増やしていないのか? という疑問も出てくるが、わざわざ新ダイ(RX 7600 XT 16GBもRX 7600もモノリシックダイ)を作ってしまうと、コスト的に見合わないと判断したのだろう。RX 7600の中で高クロック動作が可能なものを選別し、RX 7600 XT 16GBとして出荷しているのではないかと予想している。

RX 7600 XT 16GBと、その上と下の製品とのスペック比較

GPUの情報:「GPU-Z」で評価用カードの情報を拾ったところ。PCI Express Gen4のx8接続である点にも注目

 ハードウェア的には既存のRX 7000シリーズと変わる所はない。AV1のエンコード機能であったり、結局具体的使い方が明かされないまま現在に至るAI Matrix Accelerator(生成系AIで使っているだろう、とは思われるが……)といった要素も全て継承している。特にAV1を使ってゲーム画面の高画質録画やストリーミングができるのはゲーマーにとって大きなメリット。

 しかし「OBS Studio」を使ってRX 7000シリーズに搭載されているエンコーダーのポテンシャルを最大限に引き出すには、少々面倒な設定が必要だ。これはRX 7000シリーズ発表当初からの設定であり、筆者はそのうちOBS側に吸収されるだろうと思っていたのだが、AMDはエンコードのパラメーターオプションを手動で設定することを「いまだに」推奨している。

 本気で使わせたいのであれば、OBSのような定番ツールなら設定不要で最適な設定ができるようにするべきではないだろうか(Radeon Softwareの録画機能を使えというつもりなのかもしれないが……)。

レビュアーズガイドからの抜粋。OBSでRX 7000シリーズのエンコーダーを最大限に活用するには、この表の通りにすることを推奨している。無論これを無視してもエンコードはできるが最適設定ではない、ということだ

上表の続き。一番左のBest Speedなら8K@60fpsでエンコードできるが、中央や右の画質重視設定ではフルHD@60fpsが上限となる

現行Radeon vs GeForceで対決

 1月に入ってGPUレビューが本製品含め立て続けに3本も発生したため、いつものように新旧製品を交えた包括的な比較ができなかった。その代わりにRX 7000シリーズおよびRTX 40シリーズを対決させる、というスタイルで現状のRadeonとGeForceの力比べを実施する。具体的にはRadeonはRX 7800 XT~RX 7600まで、GeForceはRTX 4070 SUPER〜RTX 4060までの比較とする。

 今回の検証環境は以下の通りだ。GeForceや一部Radeonのデータは本稿掲出の1日前に公開されたRTX 4070 Ti SUPERレビューをそのまま継承することでRX 7600 XT 16GBとRTX 4060 Ti (16GB)という立ち位置が非常に近いGPUの比較もできるように配慮している。

 RTX 4060 Ti (16GB)はレイトレーシングの処理に強く、さらにDLSS FG(Frame Generation:フレーム生成)が使えるというメリットがあるが、RX 7600 XT 16GBはゲームの対応に関係せずフレーム生成が行えるAFMF(AMF Fluid Motion Frames)が利用できる。AFMFといえば新GeForceレビューで散々RTX 4070 SUPERやRTX 4070 Ti SUPERを蹴散らしてきた技術ではあるが、下位モデルでAFMFはどの程度有用なのだろうか?

 ドライバー環境だが、AFMFを使う必要があるため、Radeonのドライバーはテクニカルプレビュー版23.40.01.10、RX 7600 XT 16GBはレビュー用に配布された23.40.01.15(つまりほぼ同じドライバー)を使用している。検証にあたってはResizable BARやSecure Boot、さらにコア分離やWindows HD Color(HDR)も有効としている。

【検証環境】
CPU AMD「Ryzen 7 7800X3D」
(8コア/16スレッド、最大5GHz)
CPUクーラー ASUS「ROG RYUJIN II 360」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI」
(AMD X670E、BIOS 1602)
メモリー Micron「CP2K16G56C46U5」
(16GB×2、DDR5-5200動作)
ビデオカード AMD「Radeon RX 7800 XTリファレンスカード」、
ASRock「Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC」、
ASRock「Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC」、
AMD「Radeon RX 7600 リファレンスカード」、
NVIDIA「GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition」、
NVIDIA「GeForce RTX 4070 Founders Edition」、
Palit「GeForce RTX 4060 Ti SUPER Jetstream OC 16GB」、
MSI「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」
(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0、システム用)、
Silicon Power「SP002TBP34A80M28」
(2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、ゲーム用)×3
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2)
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事