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我々はどう生きるか。これからも問い続ける|第3回「明日の危機」レポート

首都災害、意外な新事実 清水建設、データ分析で明らかに

2023年11月30日 11時00分更新

文● アスキー
提供: 清水建設株式会社

行政との民間の連携を探った産官学セッション

大村 そして9月21日にはそれらの情報をふまえた産官学セッションを実施しています。国交省、東京都、江東区、地元住民、学識、協議会関係者などの関係者が集まり、2時間にわたって議論しました。

── どんなテーマが出たんですか?

大村 1つ目は交通防災拠点、高台のまちづくりです。

  今回の水害にしても、そもそも江東区の城東地区・深川地区は海抜0m地帯が広がっており、水害時に、高台のまちづくりが実現していたら、垂直避難(ビルなどの高いところに避難する)で良いという話が大前提としてあります。一方臨海部は埋立地という特性から、水害には強いエリアになっています。また、国際展示場や豊洲市場、オリンピックレガシーなど大規模なスペースが存在していて、そうした拠点を活用できないかとこれまで議論を重ねてきました。そして災害時の避難拠点を今後どこに増やすべきかという議論の際に、ミチノテラス豊洲のような交通防災拠点となる「道の駅やバスタ」など道路上の新拠点の整備に合わせて防災機能を確保することが必要だよねと。

 そしてもうひとつは行政区画をまたぐ避難です。今回、想定したのはあくまでも江東区内での避難ですが、実際の水害時には江戸川区や葛飾区など江東5区にも甚大な影響が出てきます。東京都としては水害時の対応を広域で考えているので、今後はそこが大きな課題となるだろうという話になりました。

 2つ目はデータ分析と情報収集・発信です。

 今回は事前に発災が予見できる水害を対象にしたのでバスの事前避難シミュレーションもできましたが、地震の場合は変数が多すぎるのでシミュレーションが難しくなります。その場合、事前のリスク周知など、避難のハードルをいかに下げるかが重要になります。そこで今回のような防災訓練を、定期的にやる必要があるよねという話になりました。あとはサイネージなどを使ったリアルタイムの情報発信を、いかに行政と民間と学識で連携してやるか。産官学民の連携が大事ではないかという議論になりました。

 3つ目は、先ほどのバスのような移動手段の議論。

 ここで面白かったのは、大新東株式会社さんの話です。オリンピック聖火の運用を請け負われていたそうで、そのときに全国から運転手さんを募集すると、一気に集まったと。災害時にも全国から運転手を集められるんじゃないか、それは全国にネットワークがあるバス会社だからこそできるところなんじゃないかと。現在、運転手の確保がむずかしいという社会課題がありますが、災害時にもバスの運転手や船の乗務員をいかに確保するかということが話題になりました。

 そして最後は教育です。

 すでに3.11から10年以上が経ち、学生世代は当時6歳前後という状況になりました。今後どんどん防災意識が希薄になっていくなか、学校教育から防災について伝えていく必要性があるよねという話になりました。地域の話も同様ですね。臨海部のタワーマンションなどはコミュニティが希薄で、隣に住んでいるのが誰かさえもわからない状況。人のネットワーク、普段からのたすけあいをどうするかということは継続して議論を進めなければならないいう話になりました。

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