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アドビの考える生成AI「技術と法律」作家に利益を還元、“無断画風コピー”の禁止も提案

アドビのイーライ・グリーンフィールドCTO

アーティストに利益を還元し、
法的にも「スタイルを守る」方法を模索

 この話は、あくまで「利用する側の安心感」の話であり、クリエイターにとってあまりいい話ばかりでないように思える。もちろん、アドビはもう少し前向きな方法論を考えている。

 「我々は、アーティストがそのスタイルとスキルで生計を立てる能力を保護し、著作権が生成AI技術に追いつく方法を考えている」アドビのイーライ・グリーンフィールドCTOはそう話す。

 技術的に核になるのは、生成Matchに代表されるテクノロジーだ。これを使うことで、クリエイターは作品だけでなく「画風」「色合い」「タッチ」を売り物にすることができる。

 「あの絵の風合いが欲しい」と思った人に、「生成Match」して好みの作品を作る方法論を提供し、それを収益化するわけだ。

 現在はAdobe Stockで「作品」が提供されている。しかしそれだけでなく、作品からの派生物として「Fireflyを介して何かを作る権利」も提供できるなら、Adobe Stockに「Do not train」タグをつけずに作品を提供する人も増えるだろうし、そうする意味が生まれることにもなる。

ただ現状、著作権では「画風」「タッチ」などは保護されない。そこでアドビは、米連邦議会に「FAIR法」という法案を提案しているという。詳しくは以下リンクをご確認いただきたい。

 この法案は簡単に言えば、「AIを使って生成された時」を対象とし、クリエイターのタッチを真似た作品や、誰かの肖像を真似たものに対し、訴える権利を与えるものである。人間の手で描かれるものは対象とならない。要は「AIを使ってお手軽に、無許可に真似られことによる被害」を防止するためのアイデアと言える。

 現状は「案」なので、すぐに成立するものではない。

 しかし、技術的な枠組みと法的な枠組みを組み合わせて、生成AIとアーティストの共存を進めていくことができるのだとすれば、非常に重要な動きとなっていくだろう。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。

 

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