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模型製作におすすめ!

小さなベンチドリルセットにはロマンがある「SDS電動ドリルセット」

2023年10月16日 18時00分更新

 工具は基本的に実用品ですから、実用性に疑問がある時点で価値が激減してしまいます。通常、こういった工具は購入候補から真っ先に外されるわけですが……。しかし、それでも欲しくなってしまう工具というのは存在します。

 個人的にはそういったものを「ロマン枠」とか「特別枠」とか「別腹」などと呼び、実用性とはまた別の価値があるものとして(心の中で)扱っています。

 今回試したアローマックスの「SDS電動ドリルセット」はまさに、そういった工具のひとつ。実用性がないわけではないのですが、他の物でも代替できてしまうこと、利用シーンが限られてしまうことなどを考慮すると、微妙な工具に分類されるでしょう。

 しかし、です。

 そういった微妙な部分はさておき、手に入れたいと思えるほどの魅力があるのです。その理由は単純明快。カワイイから。

手と比べるとサイズ感が伝わりますかね?

穴あけ用のスリムな工具が手のひらサイズで存在する喜び

 用途は穴あけ。単純に穴を開けるだけなら電動ドリルでいいですが、垂直に多数の穴を開けるとなると、結構大変。手動だと刃先が滑って別の場所に穴が開いたり、垂直だと思っていても、結構傾いていたりしますからね。

 普通に考えれば、穴あけ用の工具が欲しいのであれば、卓上ボール盤を選ぶのが最適でしょう。しかし、個人で所有するにはそれなりの覚悟が必要な大きさで、置き場所にも困りがちです。

 そんな工具が手のひらサイズであるとなれば、気になるのは当たり前。しかも、いかにも工作機械といった野暮ったいものではなく、スリムで華奢なデザインとなれば、欲しくなるのも当然です。……いや、野暮ったいのは野暮ったいので、結構好きなんですけども。

 ということで、「SDS電動ドリルセット」(定価2万7500円)を借りて試してみました。

電動ドリルは5つの動作モード

 SDS電動ドリルセットは、スリムで小さなペン型電動ドリルと、コンパクトな組み立て式スタンド、ドリルビットのセット。もともとはラジコンなどのカスタムや調整用に発売されている製品です。

箱に入ったセット一式

 まずはスタンドの組み立てから。といっても、裏からネジ2本で止めて、滑り止めのパッドを貼るだけという簡単なもの。最後に、左右どちらかに小さなハンドルを付ければ完成です。

 ちなみにスタンドはアルミ製で、結構……というか、かなり丈夫です。

ネジ2本で止めるだけでオーケー

 ドリルの使い方はちょっと複雑。動作はA、D、1、2、3という5つのモードがあります。

 シンプルなのは、1〜3のモード。これは回転数が違うだけで、1だと550rpm、2だと500rpm、3だと450rpmと切り替わります。電源ボタンの長押しで正回転(右回り)し、もう一度押すと逆回転(左回り)、さらにもう一度押すと停止という、わかりやすい動作です。

 Aはオートモードで、電源ボタンを長押ししながらゆっくり右に回転させるよう傾けると正回転となり、更に傾けると回転数が上がります。左に回転させるよう傾けると逆回転です。

 Dは回転方向の切り替えはAと同じですが、回転数が550rpmに固定されるというもの。AもDも手でもったまま電動ドリルとして使うのであればいいですが、スタンドに取り付け、ベンチドリルとして使うのであれば、1〜3のモードを選びましょう。

 ちなみにモードの切り替えは、電源ボタンを押して起動し、さらに3回ボタンを押します。すると切り替え画面になるので、ここで選びたいモードになるまで電源ボタンを連打。モードを選んだら、2秒放置で確定です。

モード切り替えは電源ボタン3回押しです

 付属のビットは0.6〜2.2mmまでの10本。このことからもわかる通り、トルクが低いので細い穴しか開けられません。また、素材はプラスチックか木材あたりが限界で、金属には向いていません。

 ビットは本体と一緒に、アルミケースに収納されていました。なお、試用品はなぜかビットの種類が異なり、1〜2.2mmとなっていました。

10本のドリルビットが付属

 ドリル本体のスタンドへの取り付けは、上から挿し込んで横の手回しネジを締めるだけという簡単なもの。強く引っ張れば抜けてしまいますが、そこまで力を加えることはないのでまず大丈夫でしょう。

挿し込んでネジを締めよう

2つの素材で穴あけチャレンジ!

 実際どんな感じに穴あけができるのか試してみましょう。といっても、全てのビットで試すのはあまり意味がないので、1mmと2.2mmの2つで試してみました。

 対象としたのは、端材として持っていた25.4mmの木材と5mmのアクリル板です。木材は最初から端材として入手していたため、種類不明。かなり目が詰まって硬く、重量感があるものです。

硬めの木材と、アクリル板を用意

 動作モードは1に固定し、まずは木材から。

 硬めとはいえ、削れてしまえば抵抗が少ない木材。細い1mmであれば、多少回転数が落ちていきながらも、一番奥、約19mmまでなんとか穴を開けられました。

 しかし、抵抗が増える2.2mmではだいぶ苦戦。何度か削りカスを取り除きながらでしたが、約12mmまでいったところで止まってしまいました。さらに手間と時間をかければもう少し掘れそうですが、10mmくらいが限界だと思ったほうがいいでしょう。

約12mmまで掘ったところでストップ<

 5mmのアクリル板は、2.2mmでは削りカスを取り除きながらで貫通までいけましたが、問題は1mm。粘りが強い素材ということもあって刃先が食い込みやすく、4mmを超えたあたりで進みも戻りもできなくなってしまいました。

完全に食い込んで外れなくなったビット

 とりあえず、ライターで炙ってアクリルを溶かして外し、再度チャレンジ。しかし、やはり4mmあたりで止まり、外れなくなりました。

 簡単なテストですが、木材なら10mm、アクリルなら3mmくらいが限界だと考えた方がよさそうです。

模型や電子工作のプリント基板自作に使えそう!

 一般的な工作だと3mmネジが使いやすいので、2.5mm以上の穴あけができなければ実用になりませんが、SDS電動ドリルセットで開けられるのは2.2mmまで。このことからも細かな加工用途、例えば模型の制作とかに向いています。

 個人的にいいなと思ったのは、プリント基板の自作用。感光基板を使い、エッチングで銅箔を溶かしてつくるプリント基板はそこそこ手軽ですが、最後の穴あけ作業が結構面倒です。

 穴あけの数が多い上、ズレると修正が大変なだけに、次々とほぼ正確に穴をあけていける小型ベンチドリルは最適。手間も作業時間も大幅に削減できます。

 とはいえ、汎用的な工具として、実用目的で買うのはお勧めできません。もっと大きな製品の方が力もあって用途も広く、断然便利だからです。あくまで、「ミニチュア工具っぽいのにちゃんと動いて、限られた用途(模型製作やプリント基板自作など)で活躍できる」というのを楽しめる人向けです。

 ちなみに、今回は電動ドリルを試しましたが、本体はほぼ同じで回転制御などが異なる「SES Pro電動スクリュードライバーセット」、「SGS電動リューターセット」もラインアップされています。

 どちらもスリムで持ちやすく、そしてカワイイので、興味があればチェックしてみてください。

●お気に入りポイント●

・小っちゃくてカワイイ!

・ドリルスタンドがカワイイ!

・穴があけられてえらい!

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この記事を書いた人──宮里圭介

 PC系全般を扱うフリーランスライター。リムーバブルメディアの収集に凝っている。工作が好きだが、最近あまり時間が取れないのが悩み。

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