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ベネッセ、窓口業務に生成AI “人の価値”見直すきっかけに

2023年10月13日 12時00分更新

2025年に向けて自動化率を上げていきたい

──社内のナレッジをつなぎ込んでいく次の段階というのは、どのくらいのフェーズで考えてらっしゃるんですか?

森田 社内データを読み込むというより、生成AIが要約した履歴を業務システムに自動保存できるようなしくみも作っていきたいと思っていて、その意味で生成AIと既存のCRMシステムを連携させるところは、今年度に始めようとしています。

 ナレッジのつないでいくのとあわせて、インプットについても検討していかなければなりません。今のChatGPTなどはWebにある情報をうまく使って回答を生成するしくみですが、たとえば弊社のコンタクトセンターでは、弊社の商品や業務の中から最も適切な回答を作ってくれるようにしなければなりません。そのための学習データをいかに適切に用意してインプットできるかも、今後かなり重要になってくるかなと思っています。

 現段階ではMicrosoft Azureのような既存のサービスを使って、そこにいかに自社のナレッジを組み合わせるかというところですが、さらにその先には専用のLLMを作っていくという方向性もあると思っています。コストの問題もあって簡単にできることではないし、ロードマップでもかなり先の方になるとは思いますが、そこが目指さない限り、先ほどのリアルタイム性やセキュリティが100%解決できるところまでいかないとも思っています。

──将来的にここまでは生成AIに任せたい、あるいはこのくらいまで効率化したいといった目標を設定されているのでしょうか?

森田 現時点ではまだ実証実験としてやっている領域が大きいので、どこまで効率化できるのか数値目標を設定できるのは、PoCから実運用を経て具体的に見えてくるのだと思います。今まで人がすべてやっていたところを、徐々にAIに任せていってどこまで自動化できるか。どんなに精度があがっても、100%AIがやるということはたぶんないと思いますが、2025年に向けた3カ年で自動化率をだんだん上げていく方向では考えています。

 単純に自動化して人を減らすということではなく、これまでその作業に従事していた時間をお客様サービスの品質向上にあてるとか、AIの回答精度をあげるためのインプットに注力してもらうとか、そういったコアの部分にリソースをシフトしてもらうという意味合いが大きい。さらにその先には、自社のためのこうしたサービス提供モデルを他社に販売していくということも考えられると思っています。

稲垣 弊社にもグループ企業がありますので、グループ内に横展開していく可能性はあると思います。きっかけはコスト削減だったとしても、最終的には人の価値を人でなければならないところに転移していけるか。企業グループとしてどう持っていけるかが大切だと思っています。

 

筆者紹介――太田百合子
 テックライター。身近なデジタル製品とそれら通じて利用できるサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。

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