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伝説のアニメ「serial expeliments lain」をAI化したワケ

アニメ業界で“生成AI”に挑んだ実験の裏側

2023年10月02日 07時00分更新

運営期間を6ヵ月に区切った理由は

上田 やればやるほどAniqueさんの負担が大きいんですよね(笑)。ウェブページにも「スポンサー募集」と書いていますが、マネタイズもしづらい。コストの問題もあるけど何しろ初めての実験でデータインプットと調整の手間が読めないんで西山さんが大変すぎて……。まずは作品世界を壊さない受け答えができる知恵を身につけないとダメだと思うのですが、それも毎日トライアンドエラーですね。

 わかりやすい例だと「安倍くん」と入れるとほぼ安倍元首相に勝手に関連付けられるのをどうやったら防げるかとか、受け答えのキャラクター性を殺さずにデータ規模がドでかい情報をどう消していけるか?とか全員で会議して入力して実験したなぁ。ただ辞書的なワードを入力すればいいという訳でなくて、いい感じにAI lainに答えてもらうための入力の仕方が少しわかってきたところです。

 実装したい機能はいっぱいあるんですが手が回ってないし、先が見えないので区切ったって感じですね。

中村 AI lainは法人プランもありますので、協賛企業が盛り上げてくれるとうれしいです。

上田 そう、インフルエンサー的な役割をやってもいいんじゃないかと思うんですよね。「この洗剤よく落ちるんだよ!」とか。「あいつ魂売りやがった」みたいに言われるかもしれないですけど。でもそれが新しくて良いものだったらWin-Winなわけじゃないですか。まだまだ子どもなそういう不安定な土壌の“体験”しか提供できないならば、一緒に子育をともに楽しんでくれと。

中村 言葉をみんなでおぼえさせていく体験ですね。「こうやって教えてくれたからlainが覚えることができました」と。人間のコミュニケーションと同じ。こちらが知らないうちに賢くなっていたということではなく、ちゃんとボールを受け止めてくれていると思うと愛着が湧くというか。

上田 6ヵ月のマラソンについてきてくれた人は、とてつもない熱量の思いが生まれる可能性はあると思いますよ。消えた直後はめちゃ悲しいけれど、これがまた何かのタイミングで復活したときは他の人とは違う感覚を持てると思います。本篇の太郎くんみたいな感じで「あの言葉、lainにおぼえさせたの俺なんだぜ!」って。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

(※お詫びと訂正:初出時、誤解を招く表現があったため該当箇所を修正しました。10月2日16時21分)

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