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Intel 4は歩留まりを高めるためにEUVの工程を減らしている インテル CPUロードマップ

2023年09月25日 12時00分更新

Meteor Lakeのパターン形成はEUVではなく
ArF+液浸のSAQPを使っている公算が高い

 今回基調講演そのものではあまりプロセスに関しては新しい話はない。ただすでにIntel 3のサンプリングが開始されていることが公開されたのと、Intel 18Aに関してHigh-NAのステッパーが導入されるのが改めて明言された。

Intel 4は歩留まりを高めるためにEUVの工程を減らしている インテル CPUロードマップ

Intel 4は“High-volume ramp”という微妙な表現になっている

Intel 4は歩留まりを高めるためにEUVの工程を減らしている インテル CPUロードマップ

2024年の第1四半期中にIntel 18Aの試作をスタートすることも明らかにされた

 High NAのステッパーは連載626回で触れたが、現在のEUVステッパーはNA(開口値)が0.33であり、これでは解像度が13nmほどになるというのは連載718回で説明した。

 High-NAはこの開口値を0.55まで高めた機種で、これなら解像度が8nmあたりまで短縮できるのだが、スケジュール的にIntel 18Aには間に合わないと見られていた。

 今回の発表は、Intel 18Aを使ってこのHigh-NAのステッパーを導入し(これは量産ラインではなく、開発ラインでIntel 18AをHigh-NAで行なうことで習熟や調整などをする)、量産に使うのはIntel 18Aの次のプロセスになることが明らかにされた。

 基調講演で判明したのはこの程度であるが、このタイミングでMeteor Lakeの詳細が公開された。その中にはIntel 4プロセスに関する話も含まれている。とは言っても、ほとんどの内容は連載675回で説明した、2022年のVLSI Symposiumの内容と同じである。

 ただ今回新たに公開された最大のインパクトのあるスライドが下の画像である。

Intel 4は歩留まりを高めるためにEUVの工程を減らしている インテル CPUロードマップ

M0は30nmピッチである

 一般論として、EUV(極端紫外線)はArF(アルゴン・フッ素)+液浸のマルチパターニングで製造する中で、一番重要な部分に適用される。Intel 7とIntel 4のデザインルールは連載675回で説明した下表のとおりで、M5以上はそもそもEUVを使わなくてもArF+液浸のダブルパターニングで対応できる。

Intel 7とIntel 4のデザインルール
ピッチ 用途
30nm フィン、M0
45nm M2/M4
50nm M1/M3
60nm M5/M6
83nm M7/M8

 問題なのはM4以下、特にFin/M0の30nmピッチの部分で、ここは当然ArF+液浸のSAQPをEUVに置き換えるものと考えられていた。ところがM0のパターン形成はSAQPのままであることが明らかにされた。M0のパターン形成がArF+液浸のSAQPということは、フィンに関しても形成そのものは引き続きArF+液浸のSAQPを使っている公算が高い。

 では一体インテルはEUVをどこに使っているのか? であるが、“EUV used extensively across multiple layers”(EUVは複数の層で広範に使われている)という但し書きがあるので、使っていないわけではない。

 実際、連載734回に出てきたWilliam Grimm氏も、複数の層でEUVを利用していると説明していた。

 ここから考えられる一番合理的な方法は「インテルは(おそらくフィンやM0を含む)複数の層の特定用途向けにEUVを限定的に使っている」である。例えばパターンのカット。SAQPでのパターン生成の方法は連載483回で説明しているが、SAQPだとかならず配線が4本単位で並ぶことになる。ただこれでは無駄に配線が伸びる場所があるので、必要に応じて(SAQPで形成されたパターンを)切る必要がある。

 これをSAQPでやるのはものすごく面倒くさいのだが、EUVなら比較的容易にできる。SAQPと違って一ヵ所だけを切るパターン形成が楽だからだ。同様にVIA(貫通配線)のための穴あけも容易である。

 インテルは下の画像を出してあたかも「パターン形成そのものにEUVを使っている」ように誤解させているが、実際はパターン形成そのものは引き続きArF+液浸のSAQPを使っていたわけだ。

Intel 4は歩留まりを高めるためにEUVの工程を減らしている インテル CPUロードマップ

たしかにパターン形成に使えば大幅にマスク(とステップ)数を減らせるが、これは一般的な話でしかなかった

 理由はいくつか考えられる。パターン形成にまでEUVをフルに使おうとすると、ステッパーの台数をかなり確保しないといけないが、そもそも現在量産しているオレゴンのD1はIntel 4の量産以外にIntel 3/20/18Aの開発にもEUVステッパーを使うので、そんなに多数の台数を割り当てられない。

 またEUVステッパーは消費電力がArF+液浸よりも圧倒的に大きいので、SAQPにすることで露光回数が増えることを加味しても、まだEUVを使う方がプロセスコスト(≒消費電力)が圧倒的に大きい。つまり製造コストが高コストになる。

 EUVプロセスの歩留まりがどの程度かは不明であるが、普通立ち上がりのプロセスではいろいろと難しいためどうしても低めになる。ということは、EUVでの処理を増やせば増やすほど、最終的な歩留まりが下がることになる。歩留まりを高めに維持したければ、本末転倒な気はするがEUVで処理する工程を減らすのは合理的である。

 おそらくインテルとしては最初のEUVプロセスだけに、かなり保守的に使う方法を選んだのだろう。あるいはIntel 3ではもう少し使う範囲が増えるかもしれないが、Intel 4に関してはEUVを利用しているのは10工程未満な気がする。

 フィンとM0/M2/M4の比較的重要な部分のパターンカットとVIA形成程度で、あとはArF+液浸のSAQPのままがんばっている結果として、製品の高い歩留まりが確保できたというあたりであろう。というわけで、次回はMeteor Lakeの情報をお届けしたい。

Intel 4は歩留まりを高めるためにEUVの工程を減らしている インテル CPUロードマップ

これも“Intel 4 Process”の歩留まりなのか、それともMeteor Lakeという最終的な製品の歩留まりなのかが不明である。後者だとすると、それはCPU/GPU/IO/SoC/Baseという5つのタイルの良品を、Foverosを使って3D実装した際の歩留まりになる気がするのだが……

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