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カナダのLendbrookがMQAを買収

2023年09月24日 09時00分更新

MQAサイトから

 MQAが救われたようだ。いや、SCL6が救われたというべきかもしれない。

 以前の記事でMQA社が経営破綻に陥ったようだと伝えたが、この件に関してカナダのレンブルック(Lenbrook)が9月19日にMQAの買収を発表した。MQAのサイトでも同じリリースが掲載されている。

レンブルックは著名なオーディオブランドを抱えるカナダ企業

 レンブルックは傘下にBluesoundやNAD、PSB Speakersなどのオーディオブランドを擁している。日本での馴染みは少ないが、どれも海外ではかなり名の知られたブランドである。

 リリースによると、「レンブルックは長期的な視野に立った投資と市場開拓をする安定した資本力のある組織としての地位を確立した会社であり、この買収によってレンブルックの知的財産権にMQAとSCL6という2つの著名なオーディオ・コーデックが加わり、この買収によって進化するオーディオ技術における卓越性と革新に対するレンブルックのコミットメントをさらに強固なものにする」と書かれている。

 MQAは120を超えるライセンシーと複数のコンテンツ・パートナーシップを獲得していて、レンブルックが買収する主な目的は、MQAの管理下に置かれる前に進行していたビジネスと技術開発に確実性を与えることだということだ。ちなみにこの記述から推測すると、以前この連載でPSB SpeakersがSCL6を採用したヘッドホンを開発中であるという記事を書いたが、この件とも関連性があると考えられる。

 その結果としてレンブルックは、MQAのライセンシング責任者であったアンディ・ダウエル(Andy Dowell)を含む、エンジニア、開発者、セールス・マーケティング担当者の中核グループを維持し、引き続き事業開発活動を指揮することになったということだ。

買収に関する各界のコメント

 レンブルックのCEO、ゴードン・シモンズ(Gordon Simmonds)氏はこの買収について次のように述べている。「レンブルックのビジョンは、消費者の選択と最高音質の追求を促進する技術が投資と育成に値するような繁栄するHi-Fi業界です。この買収は、MQAの研究者やエンジニアによって開発された技術が、特定のブランドや企業に限定されることなく、業界の利益に貢献し続けることを保証する機会だと考えています。」

 レンブルックの最高技術責任者グレッグ・スティッドセン氏(Greg Stidsen)はMQAについて以下のようにコメントしている。「MQAは、スタジオからリスニングルームまでのオーディオ・シグナル・チェーン全体を考慮し、一貫した再生品質を保証する唯一の技術です。MQAの根底にある特許と研究は、最近までよく理解されていなかった時間領域の問題に焦点を当てたもので、デジタルオーディオの品質向上に大きく貢献するものです」。 この件についてグラミー賞受賞プロデューサーでレコーディング・エンジニアのジョージ・マッセンバーグ氏(George Massenberg)は、「MQAとSCL6がレンブルックの下で継続されることになり、とても安心しました。細部表現、複雑さ、サウンドステージを忠実に表現するMQAのテクノロジーは、20年にわたるオーディオ配信方法の質の低下を救う方法を提示し、私たちがレコーディングスタジオに戻りたいと思う理由を与えてくれました」と語っている。

 またグラミー賞にノミネートされた2Lのマスター・エンジニアであるモーテン・リンドベリ氏(Morten Lindberg)は、「MQAがレンブルックに引き継がれることを嬉しく思います。2LにとってMQAを使用することで、音の細部の表現が向上し、透明性が増し、聴き疲れが軽減されるなど、録音そのままの状態を超えるようなレコーディング体験の向上ができました」と語っている。

 当のMQAのアンディ・ダウエル氏は「MQAの最も重要なライセンシーの1社であり、また受賞歴のあるBluOSハイレゾ・コンテンツ・プラットフォームの所有者でもあるレンブルックは、スタートしたことをさらに発展させるのにふさわしい立場にあります。BluOSプラットフォームへの取り組みにより、レンブルック・チームはライセンサーであるためにはある程度の中立性が必要であることを理解している。そして製品開発の観点からの要望やニーズに関して、顧客の視点に立つことができると証明された」と述べている。

 ちなみにBluOSとはBluesound社が提供するオーディオ向けの基本ソフトウエアのことである。おそらくはレンブルック社によるMQAの買収は、前記したように傘下のPSB Speakersが開発に着手していたSCL6搭載ヘッドホンの投資回収などが契機になったのではないだろうか。

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