毎秒1000回の計測が可能
Powenetics v2は専用のツール(Powenetics App)を利用して電力を計測する。Powenetics v2は1秒間に1000回のデータを取得できるというのが最大の強みだ。冒頭で述べたRS-WFWATTCH1は1秒に1回、HWiNFOによるデータ取得は秒間4回が限度(250msが最少。これはWindowsの制限)と比べると、Powenetics v2はより粒度の高いデータを取得できる。
ただ、筆者が試した限りは最速設定ではログのサイズが巨大になるだけでなく、ミリ秒単位のタイムスタンプが被る問題もあるので、計測間隔は秒間10回程度(PCATと同じ)が良いようだ。タイムスタンプの処理ついては筆者の推測だが、Powenetics v2からのデータを1つ1つ処理するわけではなく、一定間隔で集まったデータを一気に転送し時刻データはWindows側で付与しているためだと考えられる。
このように、Powenetics Appだけで消費電力測定からCPU/GPUクロックなどの情報取得、ゲームのフレームレート計測までできるという優れモノだが、ゲームのフレームレートを計測するならCapFrameXのほうが使い勝手は上だ。
前述の通りPowenetics AppにはCapFrameXのサブセットが含まれており、かつPowenetics Appを経由せずに直接Powenetics v2からデータを取得できるからだ。フレームレートを計測する裏でPowenetics v2からもCPUやGPU(x16スロット含む)の実消費電力(平均値)を計測してくれるのは筆者にとっては大助かりだ。
ベンチマーク中にCPU Package Powerを取得するというのはこれまでのCPU検証でも実施済みだし、ビデオカード検証ならPCAT、使えなかった時でもGPU Powerを利用してワットパフォーマンスを比較してきた。なので特別目新しいわけではないのだが、Powenetics v2の導入によりCPUとGPUの消費電力を同じ方法で計測しつつ、GPUの性能検証に使えるようになった点は非常に大きい。
何よりPowenetics v2を利用するメリットは、消費電力データが実測値であるという点だ。APIで取得できる電力もCPUやGPU内部の電力計測回路からの値であるため実測値と言えなくもないが、APIで取得する電力系データは粒度が粗い(OSが取得できる最少のスナップショットは250ms単位。この記事も参照)。実測値とAPI経由の値は状況次第で大きく乖離することもあるのだ。
例えば次の図は「Cyberpunk 2077」のフレームレートを計測した際のGPU/CPUの消費電力の推移だ。青が実測値、紫が平均値(移動平均)、オレンジがAPIを通じて得られた値。GPUはPowenetics v2の平均よりAPI経由の値のほうがやや高く(5W差)、逆にCPUはAPI経由の値のほうが低い(8W差)。オレンジの線において山と谷の出方が徐々に遅れていくのは、データの丸め方と、データ取得時間の誤差が蓄積していくからではないかと思われる。
CapFrameXの場合、フレームレート算出に必要なフレームタイムの取得とPowenetics v2からの実測値取得はほぼバッチリ合うようになっていると思われるため、この点においてもPowenetics v2のほうがより正確なワットパフォーマンスを算出できそうだ。
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