松屋、ガスト、吉野家、すき家、くら寿司、オリジン
ノミネートされている段階でレベルが高い
ナベコ:今回調査されているのは、松屋、吉野家、ガスト、すき家、くら寿司、オリジンキッチンの6社。これはあらかじめ狙いを絞って評価しているのですか?
中西:はい、そうです。全国的に「手に入りやすいもの」というのが選定基準のひとつです。また、土用丑の日までにランキングを掲載したいので、調査期間に販売されているものに限って評価しています。そういったことから、土用丑の日前後で限定的にうな丼を販売している松屋さんは、調査対象に入れておりません。
ナベコ:すぐ食べられるうな丼がいいですもんね。こちらのランキングには入っていないけれども、考慮した商品やメーカーは、ほかにもあるのですか?
中西:ジョイフルさんをご存知ですか? 九州を拠点にしたチェーン店ですね。実は、去年からジョイフルさんもうなぎを提供し始めているんです。ただ、東京ではジョイフルの店舗がほとんどないんですよね。
ナベコ:むむむ、なるほど。なか卯さんは?
中西:なか卯はゼンショーグループなので、すき家と一緒ですよね。基本的には、同じグループ会社のウナギに関しては、品質に変化はないはずです。そのため、同じうなぎを評価しても仕方ないという意味で、ここには入れておりません。ジョナサンさんを入れていないのも、同じ理由からです。グループのガストと同じうなぎだと考えていますから。
ナベコ:なるほど〜。
中西:それに、あまり多すぎても評価が難しいので、5、6社ぐらいを基準にしています。店の選択は私が考えているんですが、事前に食べてみてあまり高評価にならないだろうと思っているチェーンは最初から外していますね。一定のレベルで評価を出さないといけませんから。
ナベコ:では、ここでノミネートされている段階で、一定のクオリティが担保されているということですか?
中西:そう考えてもらって構いません。
うなぎのプロ中のプロが審査
率直な感想は「思ったより食べられる」
ナベコ:実際に、どのように評価を行なっているんでしょう。
中西:その道20年以上の経験を持つ、プロフェッショナル3名が評価します。私は評価員ではなく、その運営側として参加しています。
ナベコ:具体的には、どういった方々なんでしょう?
中西:審査員には、蒲焼きの貿易をしていた方や、ウナギの輸入販売に携わっている方、また飲食店の料理長など、異なる立場の人を選んでいます。キャリアでいうと最も長い方で、活鰻の輸入に40年携わっています。3名のうち2名は、今年から初参加となります。
ナベコ:うなぎのプロ中のプロの方なんですね! そういった方ってチェーン店のうな丼も食べたりするんですか。
中西:食べないです(きっぱり)
ナベコ:へ~!
中西:彼らは普段、最高のうなぎを食べていますから、外食チェーンにわざわざ行って食べようとは思わないですよね? 調査員の中には、今回、生まれて初めて外食チェーンのうなぎを食べた人もいます。
ナベコ:実際、食べてどうだったんでしょう?
中西:「思ったより食べられる」って驚かれてましたよ。
ナベコ:素直!
中西:「この価格でウナギを提供できるなんて頑張っているな〜」と感心していました。生のうなぎを仕入れて、捌いて、お店で出すと、何をどうしたってこの価格では提供できませんからね。
蒲焼の良しあしだけじゃない
丼としての完成度のたかさが大事
ナベコ:評価にあたってのそれぞれの指標について興味津々なのですが、それぞれどうやって採点しているんですか?
中西:指標1の「外観評価」では、見た目の美味しさ、焼き具合、切り身の取り方です。指標2の「蒲焼き評価」では、鰻の食感、香り、味付け(甘辛さ)、美味しさ、満足感です。指標3の「ご飯とタレ」では、ご飯の美味しさ、タレの味付け、蒲焼とタレとの相性、薬味(山椒)の美味しさ、で評価項目を設けています。
ナベコ:評価が細か~い! チェーンによって、そんなに違うものなんですか?
中西:食べ比べてみるとわかるんですが、全然違うんですよ。細かい話ですけど、焼き方も違います。チェーンのうなぎは、当然セントラルキッチンの工場で焼いたり蒸したりするんですが、焼き過ぎてしまうのは絶対NGなんですね。焦げると苦みが出てしまいます。ですので、焼きを“あまく”する方が許容されます。しかし、あまり焼きがあまいと煮魚のようになってしまう。例えば、今年1位の松屋さんは、通常3度焼きのところ、4度焼きなんですね。低温で細かく焼くなど、うまいことやっているのでしょう。中はふっくらしているのに、外はこんがりとした香ばしさも出しています。
ナベコ:おお~、焼き方ひとつとっても工夫がうかがえるんですね。
中西:見た目も違いますよ。本来、うなぎは長い形状をしていますね。それをそのまま横に切っている場合もあれば、縦に切ってから合わせて切る場合もあります。また、斜めに切ることで、見栄えをよくする効果もあります。それが「切り身の取り方」ですね。チェーン店の性質上、同じ重さにするために細かく切ってあわせていくほうがロスを抑えられますが、見栄えとしては落ちてしまう。
ナベコ:なるほど、確かに。
中西:このランキングは「うな丼」として評価しているので、蒲焼のおいしさだけをとっているわけじゃないというのがポイントです。ご飯に合う「タレ」はもちろん、「ご飯自体のおいしさ」や「山椒」も評価しています。実は、蒲焼だけでみると各社点数の差はそこまでないんです。
ナベコ:ほんとだ! 点数に差が出てくるのは、外観と、ご飯とタレの指標なんですね。
中西:やはりタレの味に関しては違いが顕著ですね。各社の指向が出る部分なので、よかったらナベコさんもいっぺんに食べ比べしてみてください。うなぎのタレっておもしろくて、うなぎの骨が含まれていることが多いんですよね。
ナベコ:え! タレのほうにですか?
中西:老舗のお店の蒲焼は、つぼに入ったタレにうなぎを入れるので、少〜しずつエキスが移っていくわけなんです。やはりタレを焼いた時の香ばしさは、うなぎの成分の特有なんですよね。チェーンの場合、それができないから、骨やアタマを使用してエキスを加えているのだと思います。実際に、今回の「うな丼チェック2023」で評価したもので、別添えのタレの成分表に“うなぎの骨”と書かれているものがありました。
吉野家のがんばりがスゴイ!
蒲焼重量が倍に増えている
ナベコ:そういえば、吉野家のうなぎって、昔は小さくて見た目がイマイチだったような。実はアスキーグルメでも2016年に各社のうなぎをチェックしてはいるんですが、当時は吉野家が微妙だったのを覚えています。参考記事→[丑の日は格安うなぎ!吉野家vsすき家vsなか卯 徹底比較(2016)]
中西:うな丼チェックをされていたんですね(笑)。確かに、私たちが調査を開始した2020年でも、吉野家のうな重の蒲焼は、重量が68gとずいぶん小ぶりでした。 もちろん、その分価格は854円と安価に抑えていて、それが戦略だったのでしょうけど、その後、「これではダメ」となったのかもしれません。我々の調査結果も見てくれているはずなので。
ナベコ:そこからどんな変化が?
中西:2022年の変化が著しかったですね。2021年には63gだった蒲焼が、2022年には112gに。なんとおよそ倍の重量です。
ナベコ:えー、2倍に!?
中西:価格は1000円を超えてきましたが、それでも蒲焼の重量の比率で計算すると、お得度はずっと上がっているんです。今年のうな丼チェックでは、総合評価でも、昨年まで常に抜かれていたすき家をしのぐ3位評価となり、さらにお得度ランキングでもくら寿司さんに次いで2位です。お得度でいうと、くら寿司さんは690円で圧倒的に強いですからね。
ナベコ:ほお~。各社さん、こんなに厳密に評価されて低かったら悔しいですからね。研鑽されているんですかね?
中西:ふふふ。「うな丼のブラインドチェック」で検索してもらえると、我々のサイトが当然、上位に表示されますからね。ただ、私たちはあまり「1位がどこだ」っていうことを自ら主張してはいないんですよ。私たちの目指すところは、うな丼を食べたい消費者さんのメリット。あとは、うなぎ業界全体が盛り上がってくれればということなので。
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