ケータイ戦国時代
ソニーが生き残りを起死回生の秘策
1990年からのケータイ電話黎明期では、ソニーは「クルクルピッピ」のジョグタイヤルを武器にファンを獲得したものの、それ以降は似たようなモデルのマイナーチェンジばかりというありさまでした。
いかにAV機器で圧倒的な存在感を示そうとも、それはあくまでもソニーファンによる支持によるものであって、巨大な経済圏を形成する携帯電話業界では、ソニーは後発メーカーなこともあってシェアは低かったのです。このままではこの先生き残れないと判断したソニーは、ヨーロッパ、スウェーデンにある大手通信機器メーカーであるエリクソンとの合弁事業として「ソニー・エリクソン」を設立します。2001年のことでした。
この時点でソニー・エリクソンは、グローバルでノキアやサムスン電子、LG電子、モトローラに次いだシェアを持つ携帯電話の端末メーカーとなりました。
さて、群雄割拠の熾烈な争いを繰り広げた2000年代、今回は「ソニー×KDDI」から登場したケータイに焦点を当ててみたいと思います。
ソニー・エリクソンとなって
さらに個性的なケータイが増えた
ソニー・エリクソンとして初の携帯電話となったのは、au「C1002S」です。「C406S」の後継モデルで、ケータイ上面のパネルを交換できる「着せ替えケータイ」として登場、本体を買うと最初から3パターンの着せ替えパネルが付属していました。
また、従来のTNT液晶から、6万5536色のTFT液晶にグレードアップしたことで、色鮮やかかつ高精細さもあってとても見やすいディスプレーでした。折りたたみ中央のヒンジ部分に24色に光るLEDを内蔵、お家芸ともいえるジョグダイヤルを備えるほか、待受画面や着信アニメーション、スクリーンセーバーなどにソニー製ロボットの象徴とも言うべき「aibo」(ラッテとマカロン)を採用するなど、ソニーの色をより濃く打ち出しました。
カラバリも定番のホワイトやブラックのほかに、オレンジが斬新で、今までの野暮ったいデザインから抜け出したオシャレなケータイといった雰囲気です。22種類ものたくさんのきせかえパネルが用意されていたので、自分だけスタイルを作れるというのがウリでした。
翌年の2002年、ソニー・エリクソン製端末としては2世代目となる「A3014S」が発売されます。折りたたみデザインやジョグダイヤルといった基本ベースは特に変わっていませんが、技術的には最大で144kbpsの高速データ通信が可能なCDMA2000 1xに対応したり、EZweb@mailに対応したり、GPSを搭載といった当時のケータイユーザーとしては欲しい機能を搭載してくれたので、こっちのほうが本命です。
加えて、メール着信や時間がわかるサブディスプレーが付いたことでかなり便利になりました。本体を開いたときやメールの問い合わせの時に鳴るサウンドやメニューまでも着せ替えられたりと、カスタマイズ性もアップしました。そしてなんといってもアズールブルーのかっこよさが際立っていて、これほどまで見た目でカッコイイと思ったのは当時久々でした。着せ替えのパネルも進化して、立体成型されたワニ革風の「クロコダイル」が極めてクールで存在感もひときわでした。
そういえばこの頃のソニー製ケータイには、あのXperiaにも採用されていた予測変換システム「POBox」が採用されていました。「POBox」というのは、文字を入力していくと自動的に単語の候補を表示してくれるというもので、これが「ジョグダイヤル」との相性が抜群で、テンキーを押してくるくると回していくだけでどんどん文章を作っていけるのが快感だったのです。メールが異常に早く打ててしまうので、もうコレに慣れてしまうとほかのケータイでの文字入力が苦痛に感じてしまうほどでした。
2003年に登場した「A1301S」には、折りたたみのヒンジ部分に回転式のカメラを搭載します。その名も「MOTION EYE」。「VAIOノート C1(PCG-C1)」に備わっていたカメラ「MOTION EYE」のネーミングを採用しているあたりからその気合の入れっぷりがわかるというもの。
性能は31万画素CMOSセンサーで、VGAサイズの撮影が可能。カメラレンズの両サイドLEDが埋めこまれて、フォトライトとしても利用できます。従来の96×80ドットだけにとどまらず、128×96ドットという大きいサイズでムービーを録画できるうえに、画像処理専用チップも搭載されており、カメラの起動や撮影した際のプレビューやデータ保存も高速でした。
また、おなじみの着せ替えについても、背面と底面の2ヵ所のパネルを変えられる「デュアル着せかえパネル」となってオシャレ度がさらにアップしています。ただし、auのモデルカテゴリーとしては、GPSやezplusを利用できないスタンダードモデルということもあって、ソニー端末のハイエンドモデルを要望する声は絶えませんでした。
ファン待望のハイエンドケータイをリリース!
そこに満を持して登場したのが、EZweb端末「A5404S」です。当時の携帯電話としては最高ともいえる130万画素のCCDカメラを搭載して、保存はメモリースティックDuoに対応。最大でSXGAサイズ(1280×960ドット)の静止画や、170x144ドットや320x240ドットの動画撮影もできたのです。
メインディスプレーには、26万色相当となる QVGA対応2.3型の低温ポリシリコンTFT液晶を、背面にも1.1型のサブディスプレーを搭載。これだけでも今までのモデルから圧倒的に進化したことはわかるのですが、メモリースティックDuoを採用したことにとどまらず、メモリースティック録画に対応したソニーのテレビ「WEGA」やビデオレコーダ「PEGA-VR100K」などで録画したテレビ番組を、ケータイ本体で再生できるという連携機能が加わりました。
再生時の解像度は176×144ドット、フレームレート15fps。正直なところ、かなり厳しい画質ではあるのですが、自宅で録画したテレビ番組を外に持ち出してケータイで見られることがまさに画期的であり、革命的なできごとでした。また、その逆に「A5404S」で撮影した動画をメモリースティックDuoに対応したソニーのテレビ「WEGA」で視聴するなんてことも可能だったのです。
ようやく僕たちユーザーが求めていた、「ソニーのケータイ」が登場した瞬間でした。デザインは定番の折りたたみのようで、ヒンジからディスプレー側が折れ曲がったカタチをして、カメラ撮影のしやすいペングリップスタイルや、動画視聴しやすいデスクトップスタイルと言った特殊なもので、特にブラック&シルバーのカラバリは、その後登場する「VAIO Z」のデザインと非常に似ていたこともあって、かっこよさが突き抜けていました。
じゃあ筆者はどれを買ったのか? というと当時はドコモユーザーという事もあって、ソニーとauのコラボした端末は指を加えてみているだけ。まだ携帯電話のナンバーポータビリティが始まる前、しかも電話番号が仕事や友人たちとの連絡手段の命綱だっただけに他キャリアへの移行は難しい時代でした。
そういえば最初はソニーのケータイを機種変更し続けていたのに、折りたたみケータイの先駆けになった「N206i」あたりからNシリーズに心移りしていた時期もありました。
そこから数年を経て、またソニーのケータイ「SOシリーズ」に引き戻されるきっかけとなった端末の話はまた別記事でお話しましょう。
筆者紹介───君国泰将
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