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撮影罪で処罰される行為とは

「撮影罪」はじまる、同意のない撮影は禁止 飛行機内の撮影にも注意を

2023年07月13日 08時00分更新

文● 中山智 編集●ASCII

 本日7月13日から「撮影罪」が施行される。これにより性的姿勢等のひそかな撮影(盗撮)、それらを第三者に提供する行為、インターネットや動画配信などで公開する行為、保管する行為がすべて処罰対象となり、盗撮に対して最大3年の拘禁または最高300万円の罰金が、不特定多数への提供行為に対してはさらに重い最大5年の拘禁、または最高500万円の罰金が科されることとなる。

 法律改正のきっかけとなった事例のひとつに、飛行機内での客室乗務員の盗撮行為がある。高速で飛行する航空機の特性が都道府県ごとの法制度の抜け穴を生み、特定できない場所での盗撮行為を処罰できず、客室添乗員の盗撮が法の抜け穴となってしまうといった実態があった。

 ANAは「撮影罪」についてのポスターを羽田空港に掲示し、空港の利用客に向けて撮影罪の法制化、無断撮影禁止についての周知を始めている。

撮影罪を周知するため、定期旅客航空協会が作成したポスターを、羽田空港にて7月12日に掲示開始

「撮影罪」とは何か?

「撮影罪」は正式名称を「性的な姿勢を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿勢の撮影に係わる電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿勢撮影等処罰法)」としており、基本的には性的な盗撮を禁じる法律。6月16日成立し、6月23日に公布している。

 もともとこういった性的な盗撮は、各都道府県の迷惑条例が適用されていたが、先にも述べた通り、航空機は高速で移動するため発生場所の特定が難しく、条例を適用させるにはハードルが高かった。それが7月13日からは全国一律で「撮影罪」が適用され、処罰の対象となる。また、撮影データについても没収(消去/破棄)が可能だ。ちなみに日本の航空機内で発生した場合は、国内外問わず処罰の対象となり、外国の航空機内で発生した場合は、日本の領域内かつ日本国民の場合に処罰の対象となる。

 自身も客室乗務員を担当していたANA 取締役 執行役員 客室センター長 西嶋直子氏は、「これまで業務中に盗撮されたかもしれない、業務中の姿を無断で撮影されたかもしれない、という複数の報告がございます。今回の撮影罪施行によりまして、機内における盗撮行為からお客様、また客室乗務員を守ることが可能となります。撮影罪の法制化について関係省庁に要望してきた経緯もあるため、今回の実現は大変ありがたいと思っております」と話した。

ANA 取締役 執行役員 客室センター長 西嶋直子氏。今回の撮影罪の施行は「航空業界において大変ありがたく受け止めている」と語る

 また今回のポスターには、性的な盗撮だけではなく、いわゆるプライバシーの侵害などに係わる無断撮影についてもアナウンスが記載された。具体的にはポスターの上半分でスカートの中を撮影するイラストが掲載され、「撮影罪」に関係する禁止行為を案内し、ポスターの下段では乗務員や他乗客の承諾なく機内で人物の無断撮影をしないようにと促している。

盗撮罪

当然ながらスカートの中を映すような撮影は犯罪行為として罰せられる

盗撮罪

業務中の客室乗務員から承諾なく撮影するのは、撮影罪の対象ではないものの、プライバシーの侵害などでNG

 下段の案内に関して言えば、SNSの普及で本人の承諾なくネット上に写真や動画がアップされてしまうことを、航空業界では苦慮しているという。たとえば、出発時にドアクローズ作業をしている様子を本人の承諾なくSNSやYouTubeなどにアップしているケースだ。

 客室乗務員などとの記念撮影やSNSへのアップについても、ANA広報から「我々からのお願いとしましては、撮影を一緒にというお声掛けをいただき、本人の了解を得ていただければ、トラブルに発展するケースはなくなるのかなと考えております」と説明があった。

 もちろん、これまで通り特に制限の案内がなければ、機内から外の風景を撮影したり、機内食を撮影したりするのは問題ない。航空業界全体としても、旅の楽しいひとときを写真や動画に収めるのを禁止したいのではなく、航空事業に携わる人たちと、利用客が、お互いにイヤな思いをせず旅をして欲しいというのが狙いといったところだろう。

性犯罪関係の法改正等について

法務省のHPには性犯罪関係の法改正等 Q&Aが掲載されている

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