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集英社も取り下げた「AIグラビア」の問題点

2023年06月26日 07時00分更新

 集英社のAIグラビア「さつきあい」写真集。びっくりしたと同時に、すぐ販売終了してしまったので「引っ込めるのか!」という感じもしましたよね。

 終了の理由については推測するしかありませんが、プレイボーイ誌の企画で、時代ごとのグラビア画像で学習したことを明らかにしていたので、特定人物が出やすいLoRAを作成していた可能性は考えられると思います(Low-Rank Adaptation、画像生成AIに追加学習をさせる簡単な手法)。

 LoRAをベースにすると、元の学習画像に使った人に、どうしても“似た人”の画像が生成されてしまいます。SNS上では、写真集発売後から「さつきあいは実在の人物に似ている」という指摘が複数上がり、集英社内で肖像権など権利上の侵害を引き起こすリスクがあらためて問題視された可能性はあると推測しています。

 やっかいなのは、さつきあいの画像は確かに指摘された人物の特徴があるようにも見えるのですが、完全に一致するわけでもありません。本当に権利侵害を起こしていたと言えるかは裁判で争われたわけでもないので、「わからない」という状態なのです。

「実写系モデル」「著名人LoRA」がブームを後押し

 実は、画像生成AIの世界では春ごろから実写的なグラビア画像が急増していました。

 以前まで画像生成AIといえばアニメ系イラスト中心だったのですが、2月に登場したStable Diffusion向けの「Chilloutmix」というアジア系の人物画像のデータを元に学習した、実写系モデルで作成したAI画像がSNSで爆発的にバズったことがきっかけです。リアル系の画像のほうが世界的に「いいね」がつきやすい傾向が出てきたんですよね。そこから似たような実写系モデルが次々に登場するようになってきました。

 実写モデルの台頭に合わせて、実在する人物の画像を使って学習したと思えるLoRAも次々に登場してきました。

 6月21日には、インスタグラムにアップロードされているあるアカウントの画像に対し、人気コスプレイヤーのえなこさんの画像を学習させたLoRAで画像が作られているのでは? という指摘もありました。確かにえなこさんの特徴をよく捉えている画像に見えます。えなこさんが「AIに食われすぎてもう骨くらいしか残っていない」とコメントを付けたことで、同様のケースが広がっていることがあらためて印象づけられました。

Twitterより

 LoRAは自分でも作れますが、それなりに性能の高いPCと技術的知識が求められるため、作成するのは手間がかかります。それでもLoRAが広がるのは、画像生成AI用のデータをやりとりする海外サイトで共有されているからです。サイト上には様々なLoRAデータが次々に上がっている状態。画像の描き込みを増やしたり、漫画風に変えたりといったツールとして使えるLoRAも共有されていますが、一方で、「中森明菜」「松田聖子」など、芸能人を再現することを目的としたモデルもアップされています。

芸能人の個人名を挙げているLoRAの例。一応、権利者が申し立てれば、削除には応じる仕組みは存在しているが、性的なコンテンツを除き、サイト側が対応するかどうかはケースバイケースのよう

誰から学習したのかを明らかにしないでアップしているケースも少なくない

 他にも有名なアイドルや俳優のLoRAモデルが次々に作られている状態で、これらはネット上の画像などを集めて作成されたLoRAではないかと考えられます。

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