週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

集英社も取り下げた「AIグラビア」の問題点

2023年06月26日 07時00分更新

「AI画像で安価に稼げる」としてAIグラビアが氾濫

 こうした動きとともに問題になってきたのが、AIグラビア写真集の氾濫です。

 実写系モデルが注目を受けた後、収益化の手段として、特にアダルト向けのAIグラビア写真集を次々に作成して収益を上げるという手段が確立されていくようになりました。「AI画像で安価に稼げる」などと情報商材を販売する人々もあらわれました。実際のところ、画像生成AIで手軽に画像が作れるようになったとはいえ大半の人にとってはまだ簡単ではなく、安価にグラビアを見たいというニーズは確実に存在するからです。

 たとえば現在、AmazonではAIグラビア写真集が大量に販売されています。品質はめちゃくちゃですが、とにかく数が多く、既に3000〜4000冊という勢いで出品されています。ほぼすべてが定額読み放題の「Kindle Unlimited」対象書籍となっているので「登録者が偶然見てくれればお金になる」という狙いでしょう。数十秒から数分程度で生成した画像をほぼ自動的にまとめて売っているだけなのでしょうから、増えるのも当然です。

AmazonでAIグラビアと検索を入れた結果出てくる「おすすめ」一覧

 しかし、わずか数ヵ月でここまでの冊数にまで増加したため、超供給過多の状態にあり、完全に市場として破綻しているようにも見えます。大半が無星でレビューがない状態なので、実際には全く見られていないのがほとんどでしょう。それでも発売直後は「おすすめ」として表示されるため、それを狙って次々にアップされる状態になっています。

 ユーザーにデジタル画像やデジタル同人誌を販売する仕組みを提供していたpixivのFANBOXやアダルトコンテンツのFANZAや、DLSiteなどの販売サイトが「当面の間、AI生成コンテンツの受け入れを中止する」と5月に発表しましたが、これはこの異様なAIグラビア本の増加に対処するためであったとみられています。

 一方、Amazonは現在のところ何も方針を出しておらず、日本では数少ない「売り場」となっていて、すさまじい勢いでAIグラビア写真集が発売され続けています。「AIグラビア写真を作って販売する」行為そのものは違法ではないため、プラットフォームがどこまで認めるかどうかという判断になってきます。

 ただし、自分のAIグラビア写真集を差別化して目立たせるために、有名な実在する人物のLoRAを使うケースが出てくる可能性は高いと思います。LoRAを使い、似ているけど、そっくりでないといった法的にきわどい画像を作ることは難しくないためです。

 なお、国内での販売サイト縮小を受けて、海外に販路を移す動きも起きています。海外ではアダルト画像を専門に生成する有料のコミュニティもできています。「Patreon」というクリエイターが自由に月額課金方式のサービスを展開できるサイトにはAIグラビアを見られるコミュニティがいくつも登場していて、たとえば「AI -Idols Studio」というサービスは、月額14.99ドルで展開されています。同様のコミュニティも次々と誕生しているようです。

 今後「日本が無理なら海外に」という形で、より状況が複雑化していくことはほぼ間違いないでしょう。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事