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Silent-Master PRO Z790-Mini/D4をレビュー

ファンレスクーラーの極・静音PC、Core i9を静謐かつ高性能で運用する秘密はPL1=55W

2023年06月20日 11時00分更新

CPU温度は70度を超えたあたりで安定

 まずはべンチマークソフト「CINEBENCH R23」でチェックしていく。このソフトはCGレンダリング速度からCPUの性能を測ってくれるもの。結果は「pts」という独自スコアーで表示され、このスコアーが高ければ高いほど高性能なCPUとなる。

 テストはすべてのコアを使用する「Multi Core」、1つだけ使用する「Single Core」の2つ。テスト時間も設定できるが、今回はデフォルトの約10分間で試した。なお、Multi Coreテストの負荷はかなり高いため、CPUの温度や動作安定性のチェックに適している。

 動作中のCPU温度や消費電力は、センサーから各種数値を取得できる「HWiNFO64 Pro」を用い、ログ機能を使って数値を記録した。ということで、早速だがCINEBENCH R23の結果を見てみよう。

CINEBENCH R23の結果

 Multi Coreテストが19605ptsで、Single Coreテストが2089pts。手元のデータと比べてみると、「Core i9-13900」ではMulti Coreテストが23177ptsで、Single Coreテストが2211pts。「Core i9-13900K」ではMulti Coreテストが34389ptsで、Single Coreテストが2289ptsとなっていたので、性能的には見劣りしてしまう。

 しかし、PL1を比較してみると、Core i9-13900は65W、Core i9-13900Kは125Wと非常に高く、それだけ大きな電力を消費していることになる。Silent-Master PRO Z790-Mini/D4は独自チューニングで引き上げられているとはいえ、その値は55Wだ。

 このPL1の電力制限とスコアーの比率を計算してみると、Core i9-13900の65Wは、55Wから約18.2%消費電力が上で、スコアーもそのまま約18.2%上回っている。つまり、電力効率の面では無駄がなく、設定通りの性能が出せている計算になる。

 同様に、Core i9-13900Kでも計算してみよう。PL1は125Wなので55Wから約127.3%も消費電力が高いことになるが、スコアーは約75.4%アップにとどまっている。電力効率の面では、明らかにCore i9-13900Tに軍配が上がる結果だ。

 もう1つ注目してほしい点が、Multi Coreテストでは大きく差がついているものの、Single Coreテストではあまり違いがないこと。つまり、高負荷時には高い電力効率で24コア/32スレッドCPUのポテンシャルを発揮でき、使用スレッドが少ない一般的な用途では上位モデルに近しい性能で運用できる。というところが、PL1=55W設定のCore i9-13900Tのメリットだろう。

 ちなみに、そこまでマルチスレッド性能が必要なければ、標準構成で16コア/24スレッドのCore i7-13700Tも全然アリだ。Core i5-13500Tなら標準構成から3万2670円もお安くなるが、こちらも14コア/20スレッドなので決して性能が低いわけではない。

CPUはCore i9-13900Tだけではなく、下位モデルも選べる

 性能が妥当なところだとわかったところで、CPUの温度もチェックしていこう。高負荷が長時間続いた時のCPU温度変化を見るため、CINEBENCH R23のMulti Coreテスト(約10分間)を実行。この時の状態をHWiNFO64 Proで取得したデータから追ってみた。

 なお、グラフはCPUのパッケージ温度を示す「CPU Package」と、消費電力の「CPU Package Power」を入れている。

CINEBENCH R23 Multi Coreテスト中のCPU温度と消費電力

 CPU Package Powerの変化は期待通り。最初の短時間はPL2(106W)で動作し、その後きっちりPL1(55W)に推移していた。そして、その時の温度変化もそれに沿ったものになっていた。

 PL2で動作している時の最高温度でも71度で、十分余裕がある。それも60度くらいからジリジリと70度に上昇しており、テストが終わると(グラフの後半)一気に60度台前半まで下がって、またじんわりと50度台半ばまで落ちていった。

 クーラーはヒートシンクの体積が大きいほど熱を奪い、溜め込む力が強くなる。また、ヒートシンクは吹きつける風量によって発散する熱量が増えるが、Silent-Master PRO Z790-Mini/D4で採用しているNH-P1はファンレス仕様だ。ゆえに、PCケース内のエアフローのみで冷却するため、温度変化は緩やかになりがちだ。

 CPU温度の上昇グラフを見ると、まさにその通りの動きと言える。この温度変化は上昇時だけではなく、テストが終わった後の冷却時も同様だ。テスト終了直後こそがくんと下がって入るが、それはCPUの負荷が減って追加の発熱が小さくなったことによるもの。その後はヒートシンクに溜め込まれた熱がじんわりと発散されていくため、緩やかに下降しているのだろう。

 なお、PCケース内温度はだいぶ上昇していたようで、CINEBENCH R23実行中の天板は手で触れると熱く感じるほどになっていた。そこで、天板を開ければもっと冷えるのではないかと考えて試してみたが、結果はほぼ変わらず。PCケース内の熱は逃げやすくなるものの、今度はエアフローが悪化し、効率良くCPUクーラーから熱を奪えなくなったのかもしれない。

 このことからも、Silent-Master PRO Z790-Mini/D4はかなり完成度の高い静音PCになっていることがわかる。もちろん、天板は開けている時よりも閉めている時のほうが静音性が高い。すべてが絶妙なバランスで成り立っていることに、あらためて驚かされた。

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