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and SORACOM

第11回

高齢者を見守るまったく新しい視点のサービスはどう生まれたのか?

IoT電球を起点にしたヤマト運輸の見守りサービスとSORACOM

2023年03月09日 09時00分更新

SORACOMがなければハローライトはできなかった

 ハローライトは、創業者でハローライト代表取締役の鳥居暁氏が介護分野での見守りサービスを模索する中、「自然な見守り」を実現するためのデバイスとして行き着いた、通信機能を持つIoT電球。鳥居氏は、「ソケットから給電するので、電気工事や電源の手配が必要ないのが、唯一無二の特徴です」とアピールする。

ハローライト代表取締役 鳥居暁氏

 ハローライトの原型が生まれたのは2015年にさかのぼる。当初作っていたIoT電球はBluetooth経由でスマートフォンをゲートウェイとしてインターネットに接続していた。デバイスが2つ必要で、通信料も高かったため、ベストなソリューションではなかったが、介護事業者との実証実験では「シンプルでわかりやすい」という評価が得られたという。「部屋の風景も変わらないし、電球がついているときに誰かが見守ってくれているということを、お年寄りが理解してもらいやすかった」と鳥居氏は振り返る。

 一方で、大変だったのが通信の部分だ。スマホを使ったり、ゲートウェイデバイスを使ったり、さまざまな試行錯誤を重ねてきたが、通信料が高いという課題は解消できなかった。しかし、安価なIoT向け通信サービスであるSORACOMと出会ったことで、その悩みが解消する。「ボタンを押せば注文ができるというSORACOM IoT Buttonを見たとき、これはハローライトに使えるのでは?と直感しました」と鳥居氏は振り返る。

 クラウドファウンディングによって、2019年5月にSORACOMを組み込んだハローライトが正式リリース。電源のオンオフを検知して、通知するという非常にシンプルな仕組みだ。鳥居氏は、「SORACOMがなければハローライトはできなかった。ソラコムにはいつも感謝しています」と語る。

外見だけ見ると通常の電球とまったく変わらないハローライト

 製品のリリースにあわせて法人化も実現し、不動産会社などの見守りサービスでもハローライトが利用されるようになったという。「SORACOMはWeb画面も、APIも非常に使いやすい。開発側もSORACOM以外は使いたくないという雰囲気があります」と鳥居氏は高く評価する。

コロナ禍で拡大する見守りサービス その追い風に乗る

 ハローライトをリリースしてから約半年後の2019年12月、Webサイトからの問い合わせを受けた鳥居氏は、ヤマト運輸の川野氏と初めてミーティングを持った。見守りサービスの構想を聞いた鳥居氏は、「いつも荷物を運んできてくれる顔見知りのヤマト運輸の社員であれば、住民の方も受け入れやすいと思いました」と振り返る。

 一方、川野氏は「シンプルで理解しやすく、電球を取り付けるだけなのですぐに導入でき、生活に溶け込みやすい。そんなハローライトに、当社の物流ネットワークを組み合わせれば、良いサービスが作れるのではと思いました」と振り返る。

 こうして生まれた「クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン」。当初は電球をお届けするだけでいいのでは?という声があったが、電球の取り付けもヤマト運輸で行なうことになった。「高齢者が自分で高い位置の電球を取り換えるという行為は危険が伴います。またご家族に電球を送ったとしても、なかなか設置に行けない場合もあります。当社の社員がお届けし、設置まで行うことでより安心していただけるのではと考えました」(川野氏)。

電球の取り付けまでヤマト運輸のスタッフが行なう

 翌2020年6月に多摩市で実証実験を開始。「サービスの全国拡大を視野に入れて、無理なくオペレーションできるのか、そもそもお客さまに受け入れてもらえるのかを検証しました」(川野氏)。また、可能な限り現場に負荷のないオペレーションを目指し、社内理解も得られるようにした。

 実証実験では、お客さまの反応も良好。サービスへのニーズも実証できたので、2021年2月からサービスの対象地域を全国に拡大。川野氏は、「見守りサービスの市場は以前からありましたが、コロナ禍で親元に行きづらくなり、改めて注目が集まりました。サービスをリリースするタイミングとしてもよかったと思います」と振り返る。

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