2023年3月3日11時(日本時間)、AMDはZen 4世代かつ3D V-Cache搭載のCPU「Ryzen 9 7950X3D」および「Ryzen 9 7900X3D」の国内販売を解禁する。気になる国内価格はRyzen 9 7950X3Dが税込11万1800円、Ryzen 9 7900X3Dが9万5800円と、昨年9月時点におけるRyzen 9 7950X/7900Xの販売価格とほぼ同じだが、現時点での実売価格は2万円(以上)上に設定されている。また、「Ryzen 7 7800X3D」の販売は4月6日とやや遅いことが確定しているが、こちらは北米予想価格449ドルとアナウンスされた。
| 製品名 | 国内予想/初出価格(税込) | 実売価格 | 北米予想価格 |
|---|---|---|---|
| Ryzen 9 7950X3D | 11万1800円 | -- | USD699 |
| Ryzen 9 7950X | 11万7800円 | 9万円前後 | -- |
| Ryzen 9 7900X3D | 9万5800円 | -- | USD599 |
| Ryzen 9 7950X | 9万2500円 | 7万2000円前後 | -- |
3D V-Cache、平たくいえば巨大なL3キャッシュを備えたRyzenといえば、昨年4月に発売された「Ryzen 7 5800X3D」がデビュー作だ。3D V-Cacheは動画エンコードや写真編集などの作業には通常版(Ryzen 7 5800X)に対し、ほとんどアドバンテージがない一方で、ゲームに関しては通常版どころか、第12世代Coreプロセッサーの最上位(Core i9-12900K)をも圧倒する性能を発揮する「こともあった」。
この辺の検証は概要編(https://ascii.jp/elem/000/004/089/4089321/)、ゲーム&Radeon編(https://ascii.jp/elem/000/004/097/4097394/)、ゲーム&GeForce編(https://ascii.jp/elem/000/004/098/4098516/)で解説しているのでご覧頂きたい。
Ryzen 7 5800X3DはSocket AM4プラットフォームにおける最強のゲーミングCPUだが、CPUコア数が8基しかないという点は、メガタスクな状況(ゲーム+OBS+Discord等)でゲームを楽しみたいエンスージアストにはやや物足らない点は否定できない。いくら巨大なL3キャッシュを備えていても、8コアCPUでは並列度に限界がある。
さらにAM4プラットフォームは最新ではなくなったため、8コア以上の上位モデルはもう出てこない。ゲームだけを遊ぶなら良いが、プラスαで動画編集などを快適にしたいという人にはやや辛いCPUだ。
そこでAMDは、Ryzen 7000シリーズの3D V-Cache搭載版を出すにあたり、8コアの「Ryzen 7 7800X3D」のみならず、12コアの「Ryzen 9 7900X3D」、さらに16コアの「Ryzen 9 7950X3D」を投入したという訳だ。
今回筆者は幸運にもRyzen 9 7950X3Dをテストする機会に恵まれた。テスト可能な時間が1週間ないというシビアな状況であったが、既存の「Ryzen 9 7950X」や、ライバルである「Core i9-13900K」と比べて、どのようなパフォーマンスを発揮するのか、さまざまな確度から検証を試みる。今回の前編はRyzen 9 7950X3Dの技術的な解説を中心に、定番かつクリエイティブ系アプリでの検証とし、ゲーム編は後編としたい。
“Gコア&Pコア”な構成を採用
今回発売となったRyzen 9 7950X3D/7900X3Dは、通常版のTDPが170Wだったところを120Wに絞り、さらにベースクロックも300〜400MHz下げている。既存のRyzen 9 7950X/7900Xと同じ物理16コアないし12コア構成になったことで、Ryzen 7 5800X3Dでは難しかった並列度の高い処理(動画エンコードやCGレンダリングなど)にもより高い適性を獲得した。
一番大事な3D V-Cacheについてだが、AMDが昨年発表した際の解説(https://ascii.jp/elem/000/004/119/4119543/)通り、3D V-Cacheは2基あるCCD(CPU Compute Die:CPUコアを格納するダイ)のうちの片方にしか搭載されない。Ryzen 79500X3D/7900X3DではCCD0とCCD1があるが、常にCCD0が3D V-Cacheを搭載したCCDとなる。
「Coreinfo」でRyzen 9 7950X3Dのキャッシュおよびコアの構成を確認すると、96MBのL3キャッシュ(赤カコミ部分)に8基のコアが、さらに32MBのL3コア(緑カコミ部分)にもう8基のコアがぶら下がっていることが分かる。これがそれぞれCCD0とCCD1というわけだ
なぜ両方に3D V-Cacheを載せなかったのかという理由だが、AMDは“ゲームでも非ゲームでも最高の性能を発揮できる”ようにしたためと説明している。AMD曰くCCD0とCCD1を両方3D V-Cache搭載にしても、CCDをまたぐような処理になると動作クロックが犠牲になるためパフォーマンスも低下する。
さらに値段上昇も避けられない。3D V-CacheをCCD0だけに限定し、ゲームの処理はCCD0に集中させ、その一方で動作クロックの必要な処理はCCD1(3D V-Cacheを持たないCCD)に担当させることで、どちらの処理でも最高の性能を発揮できるというものだ。CCD0のコアは“ゲーミングコア(Gコア)”、CCD1のコアは“パフォーマンスコア(Pコア)”と考えるとよいだろう。
また、OC(オーバークロック)に関しては若干注意が必要だ。Ryzen 7000X3Dシリーズは倍率を弄るなどで特定のクロックで動かすようなチューニングはできない。一方で、Curve OptimizerやPBO2(Precision Boost Overdrive 2)によるOCによって、より高い性能を引き出すことはできる。また、メモリーのOCに関しては通常版Ryzenと同様に対応している。
コアの使い分けは“ゲームか否か”
2種類の特性の異なるコアを備えるインテルの第12世代・第13世代コアの場合、PコアとEコアの使い分けはCPU内に搭載された「ITD(Intel Thread Director)」とOSのスケジューラー(Windows 11が最適だが、Linuxでも対応が進んでいる)の連携で実装されている。
各CPUコアの負荷や電力効率がOSのタスクスケジューラーに随時フィードバックされ、処理の内容(命令の種類、フォアグラウンドかバックグラウンドか、など)を加味した上で適切なコアに処理が振り分けられる。
一方AMDはITDのようなハードウェア的な仕組みではなく、ソフトウェア的なアプローチを選択した。チップセットドライバー(5.01.0.3.005以降)に搭載された「AMD 3D V-Cache Performance Optimizer Driver」とAGESA 1.0.0.5c以降のBIOSの組み合わせが振り分け技術の核心部分だ。
この3D V-Cache Performance Optimizer Driverが“どのコアに処理を振り分けるべきか”を決める。専門的な言い方をすればPreferred Coreが処理の内容により変更される。Preferred Coreの最上位はクロックの高いCCD1側のコアであり、通常の処理ではこれが選ばれる。しかし、ゲームの処理ではPreferred Coreが変更されL3キャッシュの多いCCD0側のコアに処理が割り当てられる。正確なところはもう少し複雑(キー入力のフォーカス等も勘案する)なのだが、概要はこんなところだ。
「HWiNFO Pro」を使えば、Ryzen 9 7950X3Dのコアにどんな優先順位が付けられているかを知ることができる。CPPC上の優先順位である「perf #x」の値が若いほど優先度が高い(非ゲームの場合)ことを示すが、1位から7位まで全てCCD1側のコアである
3D V-Cache搭載Ryzenを組み込む際は、マザーのBIOSをAGESA 1.0.0.5c以降のBIOSにアップデートしておこう。古くても起動はするが、3D V-Cacheの実力は引き出せない。図はASRock「X670E Taichi」のBIOSリスト。1.18 AS03より対応が始まっている
Ryzen 9 7950X3D/ 7900X3Dのセットアップを済ませたら、「AMD 3D V-Cache Performance Optimizer Driver Service」がサービス一覧に登録され、動作していることを確認したい
では3D V-Cache Performance Optimizer Driverは「何をもって」ゲームか否かを判断しているのだろうか? それは「Windowsのゲームモードか、Mixed Realityモードが発動すればゲームと判断」している。つまりCPU側で「こういう命令ならばゲームである/ない」かという判断をせずに、ゲームか否かの判断はWindows側に丸投げしているのだ。よってRyzen 9 7950X3D/7900X3D利用時はWindows側のゲームモードを有効にする必要がある。
となると必然的にWindows側のデータベースの不備でゲームモードが発動しないゲームが出てくる可能性も考えなければならない。その場合は慌てず騒がず「Xbox Game Bar」を起動し、「これをゲームとして記憶する」にチェックを入れればよい。
ITDのようなハードウェアありき、かつ汎用性を強く志向した仕組みだとコア仕分けのルール変更はそう簡単ではない(アプリ側の更新、根本ルールを変えるならマイクロコードレベルの更新も必要)が、AMDのやり方なら即時更新が期待できないゲームでも対処できる。
また、Windowsのゲームモードは実行ファイルのファイル名で判断しているため、ファイル名を既知のゲームのファイル名と同じにするというかなり古典的な方法も使える。ITDよりも“先端技術の結晶”感は乏しく、OSの特定の機能に強く依存する一方で、人間の手による介在の余地を大きく残しているのが面白い。
「CINEBENCH R23」のシングルスレッドテストを実行させると、負荷はCCD1(下側16マス)のコアだけに偏る。CINEBENCH R23はゲームではないため、処理をするのは高クロックで動作するCCD1側のコアが自動的に選ばれる
Win+Gキーを押してXbox Game Barを起動し、ギアアイコンの「設定」内にある「これをゲームとして記憶する」にチェックを入れる(矢印部分)。この瞬間からCINEBENCH R23はゲームとして認識される
CCD0/ CCD1のどちらを優先するのかはBIOS設定で固定することも可能だ。Ryzen 7000X3Dシリーズ対応BIOSでは、「SMU Common Options」内に「CPPC Dynamic Preferred Cores」なる設定が出現し、「Auto」「Driver」「Cache」「Frequency」の4択から挙動を選択できる。
「Cache」を選んだ場合は処理の内容に関係なく常にCCD0のコアが優先、「Frequency」ならCCD1が優先、デフォルトの「Auto」あるいは「Driver」であれば3D V-Cache Performance Optimizer Driverに任せるということになる。
X670E TaichiのBIOS設画面における設定例。CCD0優先なら「Cache」、CCD1優先なら「Frequency」を選ぶ。特別な理由がないなら自動判別である「Driver」、あるいは同じ設定になる「Auto」設定で良い
AMDチップセットドライバーと共に導入される「AMD PPM Provisioning File Driver」も、3D V-Cacheを有効活用するための大きなカギだ(このドライバーは従来のチップセットドライバーにも含まれている)。
このドライバーはWindowsのゲーム/Mixed Realityモード下において、性能の順位の低いコアの動作を止める(コアパーキング)ことでキャッシュヒット率を高める役割を持つ。CPU全体の占有率が一定レベルより高くなった場合はコアパーキングは解除され、手空きのCCDにも仕事が割り振られるため、コア数が不当に制限される訳ではない。
以上のことを踏まえて、実際のゲームにおける挙動を確認してみよう。ここでは「Tiny Tina's Wonderlands」を使用した。解像度フルHD、画質“最低”状態で立ち止まった時のクロックを観察してみる。まずはCPPC Dynamic Preferred Cores設定がAuto(=Driver)、次にFrequency、最後はAuto設定だがWindowsゲームモードをオフにした時のものだ。
CPPC Dynamic Preferred Cores設定をAuto設定における各コアの負荷およびクロック(「CapFrameX」と「RTSS」を使用)。負荷は全て前半、即ちCCD0上のコアに集中。クロックは変動するが5.175GHzと出ている。下半分のコア(CCD1)も一瞬負荷がかかる時もあるが、上がっても10%止まりだ
CPPC Dynamic Preferred Cores設定をFrequency設定における各コアの負荷及びクロック。今度は後半、即ちCCD1上にあるコアのみが使われる。動作クロックも最大5.625GHzとCCD0に寄せた時よりも高いが、フレームレート(一番上の行)はAuto設定時よりも大きく下がっている点も見逃せない
CPPC Dynamic Preferred Cores設定はAutoだが、Windowsゲームモードをオフにした際の各コアの負荷およびクロック。CCD1側のコアの占有率が高く、かつCCD0側のコアにも低めの負荷が常時かかり続ける。フレームレートはFrequency設定時よりもさらに低い点に注目
1枚目のスクリーンショットから分かるように、ゲームとそれに関連する処理がCCD0に集められ、パフォーマンス(フレームレート)も大きく向上する。3枚目のようにコア全体に負荷を散らしてしまうと、逆にCCDをまたぐ処理が多くなり、結果的にパフォーマンスが上がりきらない。
そしてゲームモードをオフにすると、3D V-Cache Performance Optimizer DriverやProvisioning File Driverが判断できなくなり、処理がCPU全体に分散してしまうことが分かる。
3D V-Cache Performance Optimizer Driver等が働いている状況下では、ゲームから見るとRyzen 9 7950X3Dは実質8コアCPU、Ryzen 9 7900X3Dは実質6コアCPUのように見えると考えることもできる。もちろんアクティブコア数や処理の並列度が一定の閾値を上回れば、即時にコアパーキングは解除されるので単なる6コア/ 8コアCPUと同じではない。必要に応じスケールするCPUと言うべきだろうか。何とも面白い挙動をするCPUに仕上がっている。
ここまで読んで頂いた読者の皆様はもう分かったと思うが、3D V-Cache Performance Optimizer Driverは複数のCCDを持つRyzen特有の挙動(欠点)をねじ伏せるためのドライバーである。つまり1CCDしか持たないRyzen 7 7800X3Dでは、BIOS設定も3D V-Cache Performance Optimizer Driverも必要ないと考えることができる。
正しく運用するためのセットアップ手順
これからRyzen 9 7950X3DやRyzen 9 7900X3Dを使おうという人のために、パフォーマンスを最大減に引き出すためのガイドを紹介ししよう。これはRyzen 9 7950X3Dのレビュアーズガイドに書かれていた内容をベースにしている。レビュアー向けとあってかなり手動操作に頼った部分があるが、将来的にはもう少しエレガントになることを期待したい。
【Ryzen 9 7950X3D/ 7900X3Dセットアップ手順】
① AGESA 1.0.0.5c(以降)のBIOSに更新したマザーにRyzen 9 7950X3D/7900X3Dを組み込む
② Windows 10 1903以降、もしくはWindows 11 21H2以降を導入後、必要なドライバーもセットアップ
③ コア分離(VBS)を有効化(Windows 11のみ)
「Windowsセキュリティー」を起動、「デバイスセキュリティー」→「コア分離の詳細」で「メモリ整合性」をオンにする。インテル環境だとデフォルトでオンだが、Ryzen環境ではオフになっている。この設定がオフでも普通に動作するが、セキュリティーが強化されるので入れておきたい
コア分離について、AMD様の回答を追記(2023年3月1日16:10)
コア分離(メモリ整合性)をオンにしなくてもRyzen 9 7950X3DのCCD振り分けは機能する点について、AMDに問い合わせたところ、次のような回答を得た。
・Hyper-V(コア分離を使うための前提機能)はなくてもCCD振り分けは正しく機能する
・コア分離に関してはインテルとの比較を対等にするためのものである
・Windows 10環境でHyper-Vが有効になっていると、L3キャッシュの情報が正しく拾えないが、これも動作には問題ない
ということなので、この手順③は「必須」ではない。ただ初出時に記述した通り、メモリ整合性はセキュリティーを強固にするため入れておきたい。だがゲームのアンチチートツール等が不具合を起こすなどの理由があるなら話は別だ。
④ Windowsゲームモードが有効か確認
⑤ MicrosoftストアでXbox Game Barを最新版にアップデート
⑥ AMDのチップセットドライバー5.01.03.005以降)をインストールして再起動
デバイスマネージャーの「システムデバイス」を展開し、赤線で示した2つのデバイスがあるかを確認。タスクマネージャーやサービスで3D V-Cache Performance Optimizer DriverやProvisioning File Driver(前述)が存在しているかも確認しておこう
⑦ システムのメンテナンスタスクを実行させる。アイドル状態で15分程度放置するか、管理者権限で起動したコマンドプロンプトもしくはターミナルを開き、以下のコマンドを実行する
コマンドプロンプトまたはターミナルは管理者権限で実行したら、そのまま何も操作せず放置しよう。特に何のメッセージも出ないが、10〜15分程度放置すれば終わる。次のステップを通過するための儀式のようなものだ
⑧ Xbox Game Barを起動、ギアアイコン→「フィードバック」→「その他の診断情報を表示」で「KGL Version Loaded」と「KGL Service Version」の数値が揃っていることを確認
手順⑦のコマンド入力が一番手強そうに見えるかもしれないが、アイドル状態で15分程度放置するという手段でも通過できる。前述のコマンドは内容的にはシステムを強制的にアイドル状態に遷移させ、Windowsのアイドル時にのみ実行されるメンテナンスタスクを促し、ゲームモードのコアになるファイルを更新する、という儀式にすぎない。
この儀式を行えば何が起こっていてもシステムは即座にアイドル状態となり、確実にメンテナンスタスクが実行される。確実性を重視する人にオススメしたい。また、この手順はOSセットアップ後に1回実行すれば済む。
検証環境は?
今回の検証は、Ryzen 9 7950X3DとRyzen 9 7950Xの対決を主軸に、ライバルであるCore i9-13900K、さらにRyzen 7 5800X3Dとの比較を試みる。Ryzen 9 7950X3Dと7950Xはコア数は同じだが、TDPやクロックの違いからRyzen 9 7950X3Dは7950Xよりも一般的なベンチマークでのパフォーマンスは劣るはずである。
しかしその一方で、3D V-Cacheの効くゲームでは7950Xを上回ることが予想される。そしてRyzen 7 5800X3Dに対してはコア数がより多く、アーキテクチャーでアドバンテージのあるRyzen 9 7950X3Dは常に優勢であることも十分想像がつく。
また今回の検証環境でも、コア分離(VBS)やSecure Boot、Resizable BAR、HDR(Windows HD Color)といった設定は全て有効としている。メモリークロックは各CPUにおける定格最大値とした。AM5マザーのBIOSとチップセットドライバーはレビュー用に配布されたもの、GPUドライバーはRadeon Softwareの23.2.1を使用している。CPUのパワーリミット系設定はデフォルト(インテル系はMTP無制限)とした。
| 【検証環境:AM5】 | |
|---|---|
| CPU | AMD「Ryzen 9 7950X3D」 (16コア/32スレッド、最大5.7GHz) |
| CPUクーラー | ASUS「ROG RYUJIN II 360」 (AIO水冷、360mmラジエーター) |
| マザーボード | ASRock「X670E Taichi」 (AMD X670E、ATX、BIOS 1.15) |
| メモリー | G.Skill「F5-6000J3636F16GX2-TZ5NR」 (16GB×2、DDR5-5200運用) |
| ビデオカード | AMD「Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード」(24GB GDDR6) |
| ストレージ | Corsair「CSSD-F1000GBMP600」 (1TB M.2 SSD、PCIe 4.0、システムドライブ) +Silicon Power「SP002TBP34A80M28」 (2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、データドライブ) |
| 電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」 (1000W、80PLUS Platinum) |
| OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2) |
| 【検証環境:AM4】 | |
|---|---|
| CPU | AMD「Ryzen 7 5800X3D」 (8コア/16スレッド、最大4.5GHz) |
| CPUクーラー | ASUS「ROG RYUJIN II 360」 (AIO水冷、360mmラジエーター) |
| マザーボード | ASRock「X570 Taichi Razer Edition」 (AMD X570、ATX、BIOS 1.90) |
| メモリー | G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」 (16GB×2、DDR4-3200) |
| ビデオカード | AMD「Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード」(24GB GDDR6) |
| ストレージ | Corsair「CSSD-F1000GBMP600」 (1TB M.2 SSD、PCIe 4.0、システムドライブ) +Silicon Power「SP002TBP34A80M28」 (2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、データドライブ) |
| 電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」 (1000W、80PLUS Platinum) |
| OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2) |
| 【検証環境:インテル】 | |
|---|---|
| CPU | インテル「Core i9-13900K」 (24コア/32スレッド、最大5.7GHz) |
| CPUクーラー | ASUS「ROG RYUJIN II 360」 (AIO水冷、360mmラジエーター) |
| マザーボード | ASUS「ROG MAXIMUS Z790 HERO」 (Intel Z790、BIOS 0813) |
| メモリー | G.Skill「F5-6000J3636F16GX2-TZ5NR」 (16GB×2、DDR5-5200運用) |
| ビデオカード | AMD「Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード」(24GB GDDR6) |
| ストレージ | Corsair「CSSD-F1000GBMP600」 (1TB M.2 SSD、PCIe 4.0、システムドライブ) +Silicon Power「SP002TBP34A80M28」 (2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、データドライブ) |
| 電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」 (1000W、80PLUS Platinum) |
| OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2) |
非ゲームのパフォーマンスでは今ひとつ……
最初に定番ベンチやクリエイティブ系アプリにおける処理性能をチェックしよう。ここでは、Ryzen 9 7950X3DのBIOS設定を「Auto」「Frequency」「Cache」の3通りに設定し、どういった差が出るかチェックする。Provisioning File Driverがあるため全コアを使うような処理では大差は出ないが、シングルスレッド性能の寄与率の高い処理ではFrequency≒Auto>Cacheとなるはずである。
まずは定番「CINEBENCH R23」のスコアー比べから始める。
Ryzen 9 7950X3Dのマルチスレッドスコアーは、7950Xよりも低いがその差は5%程度と非常に小さい。FrequencyやCache設定でもマルチスレッドスコアーが変化しないのは、CPU負荷が高いためProvisioning File Driverが全コアを解放するためだ。
一方シングルスレッドスコアーを見るとAutoとFrequencyはRyzen 9 7950Xとほぼ同程度なのに対し、Cache設定では大幅に下がっている。AutoやFrequency設定だとクロックの高いCCD1で処理されるが、Cache設定にするとCCD0側で処理されてしまうからだ。そしてCINEBENCHの処理では3D V-Cacheのメリットは全くないことが分かる。
また、Ryzen 7 5800X3DやCore i9-13900Kとの差については、コア数やクロック、アーキテクチャーを考えれば順当な結果といえる。
「Blender Benchmark」はマルチスレッド性能だけを見るベンチだ。これでRyzen 9 7950X3Dの設定がスコアーにどう再現されるか検証してみよう。Blenderのバージョンは“v3.4.0”を使用する。
トップはRyzen 9 7950X。その後に続くRyzen 9 7950X3Dは3種類の設定がほぼダンゴになっている。ここではCore i9-13900KとRyzen 9 7950X3Dはほぼ同じようなパフォーマンスであると判断されている。
続いては「UL Procyon」での検証だ。まず「Photoshop」「Lightroom Classic」を実際に運用した際のパフォーマンスをスコアー化する「UL Procyon」の“Photo Editing Benchmark”で検証した。
このテストでもRyzen 9 7950X3Dのスコアーは7950Xよりも微妙に下になる。Auto/ Frequency/ Cache設定の間に大した差が見られないということは、Lightroom ClassicやPhotoshopの処理では巨大なL3キャッシュは全く効かないことを示している。それどころかImage RetouchingのスコアーはCache設定が一番下がっている点を考えると、クロックの低いCCD0に割り当てられる方のデメリットが原因であるとも推測できる。
同じUL Procyonのテストでも「Office 365」を動かす“Office Productivity Benchmark”も試してみよう。
全体傾向はPhoto Editing Benchmarkと同じ。Cache設定にしてもスコアーは向上しないことから、Office 365も3D V-CacheのあるCCD0で処理させてもメリットがないことが示されている。
続いては動画エンコーダーである「Media Encoder 2023」での検証だ。「Premiere Pro 2023」上で再生時間約3分の4K動画を準備し、これをMedia Encoder 2023上で1本の4K動画に書き出す時間を測定した。ビットレートはVBR 50Mbps、1パスのソフトウェア(CPU)エンコードとし、コーデックは「Apple ProRes MXF OP1a」、プリセット“4K ProRes 4444 XQ”とした。
Core i9-13900KとRyzen 9 7950Xでは13900Kが僅差で勝ったが、Ryzen 9 7950X3Dがさらに僅差でトップに輝いた。とはいえ4秒程度なら誤差の範囲なので、Ryzen 7 5800X3D以外はほぼ同じであると考えてよいだろう。
「HandBrake」では、再生時間約3分の4K@60fps動画をプリセットの“Super HQ 1080p Surround”でフルHDのMP4に書き出す時間を計測した。
ここでもRyzen 9 7950X3Dは7950Xより10秒程度遅い程度にとどまる。Ryzen 9 7950X3DはTDPやベースクロックを少々絞ってはいるものの、マルチスレッド性能は既存の7950Xと大差ないCPUであるといえるだろう。
ではこのエンコード処理(正確には連続3回実行)時のシステム全体の消費電力も比較しておこう。計測はラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を利用し、システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、処理開始序盤に出現するピーク値「高負荷時(最大)」と、処理中盤以降に出現する安定値「高負荷時(安定)」の値をそれぞれチェックした。
Core i9-13900Kの高負荷時消費電力が大きいのと、Ryzen 9 7950X3Dと7950Xのアイドル時消費電力が大きいのはいつも通り。そして、Ryzen 9 7950X3Dの高負荷時消費電力は、7950Xよりも最大100W程度低い。Frequency設定にすると序盤にふけ上がる際にピークが高くなるが、安定値はAutoやCache設定と変わらない。
ゲーム編は後編で!
以上でRyzen 9 7950X3Dの技術的な解説および基本的&クリエイティブ系アプリによる検証はひとまず終了としたい。
Ryzen 9 7950X3Dは7950Xよりもマルチスレッド性能は若干低いものの、せいぜい数%レベルの僅差であり、かつクリエイティブ系アプリでは3D V-Cacheのメリットが感じられるようなものはなかった。例えCPPC Dynamic Preferred Cores設定をCacheにしても、誤差程度のパフォーマンスしか出せていない。
では、本命のゲームではRyzen 9 7950X3Dはどんなパフォーマンスを見せてくれるのか? それは後編の記事を確認して欲しい。
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