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“箱から出したら6GHz動作”の特別モデル

第13世代Core最強!? 数量限定の「Core i9-13900KS」の実力を試す

2023年01月12日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

新旧KSとの比較にも注目

 では今回の検証環境を紹介しよう。Core i9-13900KSの比較対象として、Core i9-13900Kと1世代前のスペシャルエディションであるCore i9-12900KSを準備した。環境のセットアップやテスト時期は、先日掲載された「Core i9-13900」「Core i7-13700」レビューと同一である。

 すべてWindows 11 22H2で環境を構築し、Resizable BARやコア分離(VBS)、Secure BootやHDRはすべて有効化している。CPUのパワーリミットはマザーボードのデフォルト(無制限)としている。

検証環境
CPU インテル「Core i9-13900KS」
(24コア/32スレッド、最大6GHz)
インテル「Core i9-13900K」
(24コア/32スレッド、最大5.8GHz)、
インテル「Core i9-12900KS」
(16コア/24スレッド、最大5.5GHz)、
CPUクーラー ASUS「ROG RYUJIN II 360」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「ROG MAXIMUS Z790 HERO」
(インテルZ790、BIOS 0703)
メモリー G.Skill「F5-6000J3636F16GX2-TZ5NR」
(16GB×2、DDR5-5600/4800動作)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 3080 Founders Edition」
ストレージ Corsair「CSSD-F1000GBMP600」
(1TB M.2 SSD、PCIe 4.0、システムドライブ)、
Silicon Power「SP002TBP34A80M28」
(2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、ゲーム用ドライブ)
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2)

素の状態だと性能差は3%程度だが、逆に下がることも

 まずは「CINEBENCH R23」から攻めていこう。テストはシングルスレッドとマルチスレッドの2つあるが、どちらも10分間運転してからスコアーを出す(デフォルト)設定で計測している。

CINEBENCH R23:スコアー

 先にも示した通り、Core i9-13900KSの6GHz動作というのは限られたコアにしか出現せず、マルチスレッドテストでは見ることはできない。Core i9-13900Kに対して13900KSのスコアーは高いが、マルチスレッドは誤差程度、シングルスレッドスコアーでようやく4%弱伸びたにすぎない。Core i9-12900KSから見ると相当な伸びだが、これはAlder Lake→Raptor Lakeの技術的進歩によるものが大きく、「KSだから」という要素を見いだすのは厳しい。

 続いては「Blender Benchmark」だ。演算ユニットはCPUを指定している。

Blender Benchmark:Blenderのバージョンはv3.4.0を指定

 CINEBENCHはシングルスレッド性能も計測してくれるが、Blender BenchmarkはCPUを指定した場合はマルチスレッド性能しか計測しない。よってCore i9-13900Kと13900KSの差は非常に小さい。それどころかわずかにCore i9-13900KSのほうがスコアーが低いケースもある。6GHz動作の恩恵を得られるシチュエーションは限られているのだ。

 では、総合性能をみる「CrossMark」だとどうなるだろうか? 写真や動画編集、文書やメール作成等、マルチタスク状況下での反応等をスコアー化するベンチマークだが、全般的にCPU負荷が低く、シングルスレッド性能頼みの側面がある。

CrossMark:スコアー

 負荷が軽めのProductivityやCreativityテストでは、Core i9-13900KSが13900Kよりも3〜5%程度高い評価を得ている。最大ブーストクロックの違い(6GHz対5.8GHz)も3%強であることから、ほぼクロックが伸びたぶんだけスコアーが出ているという感じになる。

 しかし、マルチタスクな処理が含まれるResponsivenessでは、Core i9-13900KSの6GHz動作があまり発揮できずに終わり、結果としてスコアーの伸びは2%未満となる。単にクロックを伸ばしただけではこんなものだろう。

クリエイティブ系アプリでのパフォーマンス

 次に試す「UL Procyon」の“Photo Editing Benchmark”は、実際に「Photoshop」「Lightroom Classic」を動かした際のパフォーマンスをスコアー化するものだ。これらの処理は並列度が低いものが多い(=CPU負荷が低い)ため、Core i9-13900KSの6GHz動作が輝く可能性が高い。

UL Procyon:Photo Editing Benchmarkのスコアー

 ここでCore i9-13900KSがほかに比べて一番伸びたのは、Photoshopをメインに使うImage Retouching。Core i9-13900Kに対して約4.5%上昇した。PhotoshopのCPU利用率の低さを考えると、Image Retouchingで差が大きく付いたのは計算通りといえる。Lightroom ClassicメインのBatch Processingのスコアーはほとんど伸びておらず、結果として総合スコアーはCore i9-13900Kに対して2%程度上回った。こちらもCrossMark同様の着地点となった。

 Batch Processingテストがほとんど伸びなかったので、Lightroom Classicについて、筆者がいつも使っている手法でも検証してみよう。61メガピクセルのDNG画像100枚に対し、書き出し時にシャープネス(スクリーン用、標準)を付与しつつ最高画質のJPEGに書き出す時間を比較する。シャープネス処理のおかげでCPU負荷はUL Procyonのテストよりもずっと高い。

Lightroom Classic:DNG100枚→JPEG書き出し時間

 このテストでは3回試行後、平均を求めてグラフ化しているが、結果としてはCore i9-13900KSの速さを確認することができなかったばかりか、Core i9-13900Kにハナ差で敗北。発熱量が増えブーストがかかりにくくなった結果と考えられるが、ポン付けでCore i9-13900Kより高速な環境が必ず手に入るとは考えないほうが良いようだ。

 続いては動画エンコーダー「Media Encoder 2023」での検証だ。再生時間約3分の4K動画を「Premiere Pro 2023」上で用意し、これをMedia Encoder 2023上で1本の4K動画に書き出す時間を測定した。ビットレートはVBR 50Mbps、1パスのソフトウェア(CPU)エンコードとし、コーデックはH.265とした。

Media Encoder 2023:H.265による4K動画のエンコード時間

 ここでもLightroom Classicと同様にCore i9-13900Kのほうが短時間で処理を終えた。6秒差は誤差のようなものだが、今回の検証環境ではCore i9-13900KSの性能を引き出しきれなかった結果と言える。本格水冷+冷却水の冷却装置(チラー)を使えば逆転するかもしれない。

 「Handbrake」では、再生時間約3分の4K@60fps動画をプリセットの“Super HQ 1080p Surround”でフルHDのMP4に書き出す時間を計測した。このテストは後述する消費電力やCPU温度の検証でも使用するため、同じソースを3回連続でエンコードさせている。

Handbrake:Super HQ 1080p Surroundを利用したエンコード時間。一番短時間で終わったランの結果で比較

 Media Encoder 2023のようにCore i9-13900Kに負けるとまでは行かなかったものの、Core i9-13900KSとCore i9-13900Kはまったく差がない。360mmラジエーターのAIO水冷程度(LGA1700の“反り防止Mod”は使用していない)ではCore i9-13900KSをそのまま運用しても意味がないことを示している。

 AIを使って動画や写真を高画質化する「Topaz Video Enhance AI」「Topaz DeNoise AI」はGPUへの依存度が高いアプリだが、CPUの負荷がないわけではない。そのような状況ではCore i9-13900KSはどう働くのだろうか?

 まずTopaz Video Enhance AIでは、480i(インターレース、720×480ドット)のAVI動画(約1分)を、インターレース解除しつつフルHD@60fpsの動画にアップスケール(Deinterlace footage and upscale to HD)する処理時間を計測。学習モデルはデフォルト設定のままとし、出力コーデックは「Pro Res422 HQ」とした。AIプロセッサーはGPU(GeForce RTX 3080)を指定した。

Topaz Video Enhance AI:480p動画をフルHDへアップスケール処理する時間

 このアプリは処理時間にブレが出るほうだが、Core i9-13900KSは明確にCore i9-13900Kよりも短時間で処理を終えている。Core i7-13700検証記事を見るとCore i5-13600Kのほうがコストパフォーマンスの良い結果を出している(4分29秒)ので、Core i9-13900KSのメリットがあるとは言えないものの、高クロックモデルならではの結果が観測できた、といえる。

 Topaz DeNoise AIでは、30枚のJPEG画像(24メガピクセル)を用意し、学習モデル“Severe Noise”を利用してノイズ除去処理をする時間を計測した。

Topaz DeNoise AI:JPEG30枚のノイズ除去処理時間

 ここではCore i9-13900KSと13900Kの間に差は出ず、さらにCore i9-12900KSとの差も6秒と短い。アーキテクチャーの差か、クロックの差かまでは判別できないが、このテストでは差はほぼ実感できないと言える。

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