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Raptor LakeやArc A770が続々登場!インテルの“変化”を感じた「Intel Innovation 2022」レポート

2022年09月28日 10時50分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

Core i9-13900Kのパッケージを掲げるCEO

 2022年9月28日1時(日本時間)、インテルは北米サンノゼで自社イベント「Intel Innovation」を開催。基調講演をライブストリームで配信した。

 すでにインテルは“Raptor Lake”こと第13世代インテルCoreプロセッサー(以下、第13世代Core)の詳細やラインアップを発表済みだ。本稿ではその内容を補強しつつ、Intel Innovationの内容で気になったポイントをまとめてみる。

壇上のパット・ゲルシンガーCEOが着ていたTシャツにある0と1の並びを1行ずつASCIIコードとして解釈すると「GEEK」と読める。つまり自己紹介している訳だ

最大6GHzモデルの投入も示唆された第13世代Core

 インテルは既に“Raptor Lake”こと第13世代Coreを発表している。ラインアップを含めた概要は既報の通りだが、押さえておきたいポイントがいくつかある。

最大24コア構成、シングルスレッド性能は最大15%向上、マルチスレッド性能は最大41%向上が第13世代Coreの特徴

第13世代CoreはPCI Express 5.0やThunderbolt 4、Wi-Fi 6E等を引き続きサポート。注目したいのはDDR5-5600と5200を並列で記していること。既に発表されているK付きモデルはDDR5-5600対応なので、もしかすると下位モデルはDDR5-5200までのサポートという意味なのかもしれない

1) Eコアを全モデルで増量し、最大24コアに
 消費電力は高いがシングルスレッド性能に秀でたPコアと、省電力かつ並列性に優れたEコアを組み合わせるハイブリッド・デザインを初採用したのが第12世代インテルCoreプロセッサー(Alder Lake)。第13世代Coreではさらにこれを推し進め、Eコアのクラスターをさらに2つ増やす方向に進化した。フラッグシップの「Core i9-13900K」では8基のPコアに16基のEコアを合わせ、24コア/32スレッドとなるほか、「Core i5-13600K」でも14コア/20スレッド仕様となる。

第13世代Coreのラインアップ。Core i5でもEコアが8基搭載される。メモリーは定格でDDR5-5600のほか、DDR4-3200も引き続きサポートされる

 以下は基調講演では触れられていないが、インテルのプレス向け資料から注目すべきポイントをまとめたものだ。

インテルの資料より抜粋。第13世代CoreのL3キャッシュは前世代よりも4〜6MB増量されているが、キャッシュのアルゴリズムをインクルーシブにするかノンインクルーシブにするかは機械学習の学習モデルを利用して動的に決定され、より効率を優先した設計になっている

Eコアは従来と同じ“Gracemont”がベースだが、Eコア倍増が第13世代Core最大のトピックだ。さらにEコアのL2キャッシュ(クラスター内で共有)も2倍の4MBに増量。高クロック化やプリフェッチのアルゴリズムを最適化するなど、かなりの性能向上が期待できる

Pコアは“Golden Cove”から“Raptor Cove”へ変更。プロセスはインテル7のままだが、トランジスタの設計を改良することで微細なプロセスでもより電流の流れやすい(チャネル移動度の高い)設計に移行。これにより同電圧ならGolden時代よりも200MHz高く、同クロックなら50mV以上低いコア電圧で稼働する。結果としてブーストクロックを600MHz引き上げることに成功している。さらにL2キャッシュも増量し、機械学習によるプリフェッチのアルゴリズムも搭載した

2) 「Intel Thread Director(ITD)」の強化
 PコアとEコアの振り分けはITDがWindows 11と協調し、個々のコアの処理内容に応じて適切なコアを選択する点は従来と同じ。しかし、第13世代Coreでは処理内容を判断する基準を機械学習で強化するとともに、Windows 11 22H2ではバックグランドの処理に関しても、最初からバックグラウンドの処理とユーザーがバックグラウンドに回した処理とで扱いを変えることで、メガタスクな状況でのQoSを向上させるというものもある。

ITDがスレッドをコアに割り当てるアルゴリズムも改良されたほか、Windows 11 22H2では複数のアプリを切り替えて使うシチュエーションでより良いユーザー体験ができるようになっている

3) MTPは最大253Wへ増加したが、MTP65Wでも前世代の241Wと同じパフォーマンス
 Core i9-13900KではMTP(Maximum Turbo Power)は12900Kの241Wから253Wにさらに引き上げられた。前述のようにRaptor Coveは同じクロックならより低電圧で動くようになっているが、その余力をクロック上昇につぎ込んだ結果だ。

 ただ、インテルはCore i9-13900KをMTP241W設定で動かした時でも12900Kより37%高速、さらに65Wで動かしてもCore i9-12900Kと同等の性能で動くという。AMDもRyzen 7000シリーズで同じような主張をしていたが、インテルもまったく同じ主張をしているのが何とも興味深い。

Core i9-13900KをMTP 65Wで動かしたとしても、Core i9-12900Kと同等の性能で動かせると主張する。ただ、このグラフはSPECintの結果から推測した値であり、実アプリでは違った結果になる可能性が高い。これを信じるのはまだ速い

最大6GHz動作の数量限定モデルが来年投入

 基調講演における第13世代Coreの発表は体感1分程度で終わってしまったが、最後に「6.0GHz Out of the Box」、即ち工場出荷状態で最大6GHz動作を可能にした「数量限定」モデルを「2023年の早い段階で」投入すると予告した。Core i9-12900KSは特に数量を制限しないレギュラー品の最上位という扱いだったが、Core i9-13900KS(型番は筆者の推測)に相当するモデルは真の希少品となるだろう。

最大ブーストクロック6GHzを誇る数量限定モデルが、2023年の早い段階で投入される予定。凄まじい争奪戦が予想されるので欲しい方はこれから貯金しておきたい

「Arc A770」の予価は329ドル、10月12日発売

 また、パット・ゲルシンガーCEOはビデオカードの価格が上がり続けていると発表。明らかに10月に出るGeForce RTX 4090等を揶揄している内容だが、10月12日にインテル Arc Aシリーズのフラッグシップであるインテル Arc A770 グラフィックス(以下、Arc A770)を329ドル(予価)で販売開始すると発表した。海外のテック系サイトなどではGeForce RTX 3070に比肩する性能とされており、もしこれが本当ならゲーマーにとっては非常に魅力的な選択肢になるだろう。

 インテル Arc Aシリーズの売りのひとつであるアップスケーリング技術「XeSS」のSDKもGitHub上で公開され、これからゲームへの適用も進んでいくと思われる。

ビデオカードの価格がどんどん上昇している、という内容のグラフ

Arc A770のLimited Edition。GeForceにおけるFounders Edition的な存在だ。日本国内での取扱いについては一切不明

Arc A770の北米予想価格は329ドル、発売日は10月12日。(ちなみに原稿執筆時点でレビュー機材などの案内はない)

XeSSのSDKがついにGitHub上で公開。これでゲームメーカーがXeSSをゲームに組み込みやすくなりそうだ

インテルの空気が大きく変わっている?

 今回の基調講演は全体の雰囲気がかなりソフトになったと感じたのは筆者だけではあるまい。前回もパット・ゲルシンガーCEOが出ていたが、いわゆる業界の人と膝突き合わせて対談したり、ムービーを見せてプレゼンといった堅めの演出だった。

 しかし、今回は謎のクイズ番組的な演出が入ったり、パット・ゲルシンガーCEOの過去の映像を流して本人を笑わせる、さらにCEO本人も時折“お茶目”な言動を見せるなど、これまでのインテルらしからぬ砕けたスタイルである。さらにハーバード大学を飛び級で卒業し、2021年からインテルのAI ethics lead architectに就任したリア・チェルブー(Ria Cheruvu)氏を壇上に上げ、彼女と共同でプレゼンを行うなど、これまでにないスタイルが目立った。

中央にいるのがリア・チェルブー氏。AI関連の発表は彼女が主役で、パット・ゲルシンガーCEOはむしろ聞き手だった

その他の発表としては、インテルのデータセンター向けGPU「Flex 170」などもある。TensorFlow等のAI処理に特化しAV1エンコーダーも備えている

第4世代Xeonスケーラブルプロセッサーもお披露目

 現CEOはなんとかしてインテルの古くささを払拭し、新しい時代に合ったインテルに生まれ変わらせようとしていることは伝わった。今後のインテルがどう変わり、どうイノベーションを起こすか期待したい。

シリコン・フォトニクス関連の発表で突然挿入された若かりし頃のパット・ゲルシンガー氏。反応を見るかぎりサプライズ演出なのだろう

ゲストとしてLinuxの生みの親リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏も登場

最後にリーナス氏にIntel Innovation Awardのトロフィーを贈呈して終了した

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