週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

“箱から出したら6GHz動作”の特別モデル

第13世代Core最強!? 数量限定の「Core i9-13900KS」の実力を試す

2023年01月12日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

新旧KSとの比較にも注目

 では今回の検証環境を紹介しよう。Core i9-13900KSの比較対象として、Core i9-13900Kと1世代前のスペシャルエディションであるCore i9-12900KSを準備した。環境のセットアップやテスト時期は、先日掲載された「Core i9-13900」「Core i7-13700」レビューと同一である。

 すべてWindows 11 22H2で環境を構築し、Resizable BARやコア分離(VBS)、Secure BootやHDRはすべて有効化している。CPUのパワーリミットはマザーボードのデフォルト(無制限)としている。

検証環境
CPU インテル「Core i9-13900KS」
(24コア/32スレッド、最大6GHz)
インテル「Core i9-13900K」
(24コア/32スレッド、最大5.8GHz)、
インテル「Core i9-12900KS」
(16コア/24スレッド、最大5.5GHz)、
CPUクーラー ASUS「ROG RYUJIN II 360」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「ROG MAXIMUS Z790 HERO」
(インテルZ790、BIOS 0703)
メモリー G.Skill「F5-6000J3636F16GX2-TZ5NR」
(16GB×2、DDR5-5600/4800動作)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 3080 Founders Edition」
ストレージ Corsair「CSSD-F1000GBMP600」
(1TB M.2 SSD、PCIe 4.0、システムドライブ)、
Silicon Power「SP002TBP34A80M28」
(2TB M.2 SSD、PCIe 3.0、ゲーム用ドライブ)
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2)

素の状態だと性能差は3%程度だが、逆に下がることも

 まずは「CINEBENCH R23」から攻めていこう。テストはシングルスレッドとマルチスレッドの2つあるが、どちらも10分間運転してからスコアーを出す(デフォルト)設定で計測している。

CINEBENCH R23:スコアー

 先にも示した通り、Core i9-13900KSの6GHz動作というのは限られたコアにしか出現せず、マルチスレッドテストでは見ることはできない。Core i9-13900Kに対して13900KSのスコアーは高いが、マルチスレッドは誤差程度、シングルスレッドスコアーでようやく4%弱伸びたにすぎない。Core i9-12900KSから見ると相当な伸びだが、これはAlder Lake→Raptor Lakeの技術的進歩によるものが大きく、「KSだから」という要素を見いだすのは厳しい。

 続いては「Blender Benchmark」だ。演算ユニットはCPUを指定している。

Blender Benchmark:Blenderのバージョンはv3.4.0を指定

 CINEBENCHはシングルスレッド性能も計測してくれるが、Blender BenchmarkはCPUを指定した場合はマルチスレッド性能しか計測しない。よってCore i9-13900Kと13900KSの差は非常に小さい。それどころかわずかにCore i9-13900KSのほうがスコアーが低いケースもある。6GHz動作の恩恵を得られるシチュエーションは限られているのだ。

 では、総合性能をみる「CrossMark」だとどうなるだろうか? 写真や動画編集、文書やメール作成等、マルチタスク状況下での反応等をスコアー化するベンチマークだが、全般的にCPU負荷が低く、シングルスレッド性能頼みの側面がある。

CrossMark:スコアー

 負荷が軽めのProductivityやCreativityテストでは、Core i9-13900KSが13900Kよりも3〜5%程度高い評価を得ている。最大ブーストクロックの違い(6GHz対5.8GHz)も3%強であることから、ほぼクロックが伸びたぶんだけスコアーが出ているという感じになる。

 しかし、マルチタスクな処理が含まれるResponsivenessでは、Core i9-13900KSの6GHz動作があまり発揮できずに終わり、結果としてスコアーの伸びは2%未満となる。単にクロックを伸ばしただけではこんなものだろう。

クリエイティブ系アプリでのパフォーマンス

 次に試す「UL Procyon」の“Photo Editing Benchmark”は、実際に「Photoshop」「Lightroom Classic」を動かした際のパフォーマンスをスコアー化するものだ。これらの処理は並列度が低いものが多い(=CPU負荷が低い)ため、Core i9-13900KSの6GHz動作が輝く可能性が高い。

UL Procyon:Photo Editing Benchmarkのスコアー

 ここでCore i9-13900KSがほかに比べて一番伸びたのは、Photoshopをメインに使うImage Retouching。Core i9-13900Kに対して約4.5%上昇した。PhotoshopのCPU利用率の低さを考えると、Image Retouchingで差が大きく付いたのは計算通りといえる。Lightroom ClassicメインのBatch Processingのスコアーはほとんど伸びておらず、結果として総合スコアーはCore i9-13900Kに対して2%程度上回った。こちらもCrossMark同様の着地点となった。

 Batch Processingテストがほとんど伸びなかったので、Lightroom Classicについて、筆者がいつも使っている手法でも検証してみよう。61メガピクセルのDNG画像100枚に対し、書き出し時にシャープネス(スクリーン用、標準)を付与しつつ最高画質のJPEGに書き出す時間を比較する。シャープネス処理のおかげでCPU負荷はUL Procyonのテストよりもずっと高い。

Lightroom Classic:DNG100枚→JPEG書き出し時間

 このテストでは3回試行後、平均を求めてグラフ化しているが、結果としてはCore i9-13900KSの速さを確認することができなかったばかりか、Core i9-13900Kにハナ差で敗北。発熱量が増えブーストがかかりにくくなった結果と考えられるが、ポン付けでCore i9-13900Kより高速な環境が必ず手に入るとは考えないほうが良いようだ。

 続いては動画エンコーダー「Media Encoder 2023」での検証だ。再生時間約3分の4K動画を「Premiere Pro 2023」上で用意し、これをMedia Encoder 2023上で1本の4K動画に書き出す時間を測定した。ビットレートはVBR 50Mbps、1パスのソフトウェア(CPU)エンコードとし、コーデックはH.265とした。

Media Encoder 2023:H.265による4K動画のエンコード時間

 ここでもLightroom Classicと同様にCore i9-13900Kのほうが短時間で処理を終えた。6秒差は誤差のようなものだが、今回の検証環境ではCore i9-13900KSの性能を引き出しきれなかった結果と言える。本格水冷+冷却水の冷却装置(チラー)を使えば逆転するかもしれない。

 「Handbrake」では、再生時間約3分の4K@60fps動画をプリセットの“Super HQ 1080p Surround”でフルHDのMP4に書き出す時間を計測した。このテストは後述する消費電力やCPU温度の検証でも使用するため、同じソースを3回連続でエンコードさせている。

Handbrake:Super HQ 1080p Surroundを利用したエンコード時間。一番短時間で終わったランの結果で比較

 Media Encoder 2023のようにCore i9-13900Kに負けるとまでは行かなかったものの、Core i9-13900KSとCore i9-13900Kはまったく差がない。360mmラジエーターのAIO水冷程度(LGA1700の“反り防止Mod”は使用していない)ではCore i9-13900KSをそのまま運用しても意味がないことを示している。

 AIを使って動画や写真を高画質化する「Topaz Video Enhance AI」「Topaz DeNoise AI」はGPUへの依存度が高いアプリだが、CPUの負荷がないわけではない。そのような状況ではCore i9-13900KSはどう働くのだろうか?

 まずTopaz Video Enhance AIでは、480i(インターレース、720×480ドット)のAVI動画(約1分)を、インターレース解除しつつフルHD@60fpsの動画にアップスケール(Deinterlace footage and upscale to HD)する処理時間を計測。学習モデルはデフォルト設定のままとし、出力コーデックは「Pro Res422 HQ」とした。AIプロセッサーはGPU(GeForce RTX 3080)を指定した。

Topaz Video Enhance AI:480p動画をフルHDへアップスケール処理する時間

 このアプリは処理時間にブレが出るほうだが、Core i9-13900KSは明確にCore i9-13900Kよりも短時間で処理を終えている。Core i7-13700検証記事を見るとCore i5-13600Kのほうがコストパフォーマンスの良い結果を出している(4分29秒)ので、Core i9-13900KSのメリットがあるとは言えないものの、高クロックモデルならではの結果が観測できた、といえる。

 Topaz DeNoise AIでは、30枚のJPEG画像(24メガピクセル)を用意し、学習モデル“Severe Noise”を利用してノイズ除去処理をする時間を計測した。

Topaz DeNoise AI:JPEG30枚のノイズ除去処理時間

 ここではCore i9-13900KSと13900Kの間に差は出ず、さらにCore i9-12900KSとの差も6秒と短い。アーキテクチャーの差か、クロックの差かまでは判別できないが、このテストでは差はほぼ実感できないと言える。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事