消費電力と熱もチェック
検証のラストステージは消費電力や熱といった要素の検証だ。まずはシステム全体の消費電力をラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を利用して検証しよう。
システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、Handbrakeエンコード(設定については前述のベンチと共通)時の“高負荷時(最大)”と、処理中盤以降に出現する“高負荷時(安定)”の値をそれぞれ計測した。また、このテストでは発熱やクロックの推移を見るため、Handbrakeでのエンコードは同じエンコードを3回繰り返している。
Core i9-13900Kの消費電力が大きい点は既知の通りだが、MTP無制限で運用するCore i9-13900の消費電力もそれなりに大きい。ただ、Core i9-13900KほどCPUの温度限界を攻めるような挙動にはなっていないため、Core i7-13700Kに近い消費電力に収まっている。
一方、Core i7-13700の消費電力はなぜかCore i7-13700Kよりも大幅に上回った。これは前述のゲーム中のCPU Package Powerでも観測されたことと根は同じだが、個体差なのか、BIOSのせいなのか、はたまた仕様なのかはまだ断言できる材料はない。
そしてMTPを219Wに絞ると、最大値こそ大きくなるが安定値は165〜167Wあたりに収束する。エンコード性能などは下がるが、そのぶん消費電力も下がっているので、全体的にはワットパフォーマンスは向上しているといえる(後ほど再検証しよう)。
続いてはこのエンコード処理中のCPUクロックやCPUパッケージ温度、そしてEPS12Vコネクターに流れる電力(以降CPU Power)を追跡してみよう。クロックと温度の追跡は「HWiNFO Pro」を、EPS12Vの電力計測にはElmorlabs「PMD」を使用している。全部のデータを1枚のグラフに収めると視認性が悪いので、Core i9とCore i7+i5というように分割している。
CPUのクロックは全コアの平均値で比較した。同じCore i9やCore i7同士であればK付きモデルが最も高く、やや下にMTP無制限で運用したK無しモデルと続き、MTP 219W運用にしたK無しモデルはずっと下のクロックになる。
これだけクロックが下がるのだから、MTP 219W設定時のパフォーマンスは1ランク下のCPUに負ける事があるのは当然といえる。ただ、CPU負荷のそれほど高くない処理では問題になりにくいことも思い出していただきたい。すべてはCPUにさせたい処理と、CPUの使われ方次第なのだ。
次はCPUパッケージ温度。Core i9-13900KのCPUパッケージ温度は速攻で100℃に到達しサーマルスロットリングに入ってしまうが、Core i9-13900(MTP無制限)は90℃前後で踏みとどまる。ただ、上限90℃でもサーマルスロットリングのフラグは立つため、サーマルスロットリング前提の運用が嫌ならMTPにリミットをかけるのがオススメだ。
今回、Core i7-13700の温度はCore i7-13700Kよりも高くなるという結果が得られた。やはり個体差の問題やBIOSの問題などが考えられるが、消費電力が大きい結果と連動している。
上の2つのグラフはCPU Powerの推移だ。Core i9-13900Kは最初は非常に消費電力が大きいものの、1回目のエンコード処理が終わったあたりでCore i9-13900と同等レベルに収束するのが興味深い。そしてCore i7-13700のCPU Powerは13700Kよりも50W高かった。出荷されるCore i7-13700のすべてにおいてこうであると断言はできないが、K無しであるからといってK付きよりも無条件で消費電力が下がるわけではないということだ。
前述のHandbrakeエンコード検証で得られた「エンコードのフレームレート」を、ここで観測されたCPU Powerの平均値で割り、それを100倍するとCPU Power 100Wあたりのフレームレートが算出できる。最後にこれを比較してワットパフォーマンス比較としたい。
MTPを無制限で運用する限りでは、Core i9-13900とCore i7-13700のワットパフォーマンスは、各CPUのK付きモデルと大差ない(13700は消費電力が大きいため悪化しているが……)。だがMTP 219W設定時はワットパフォーマンスが大幅に改善する、ということが読み取れる。ただ、エンコード時間はMTPを219Wに絞ると大幅に長くなるので、エンコード前提ならばワットパフォーマンス度外視の設定にした方が良いということになる。
まとめ:上位モデルは値下げ待ちか
以上でK無し第13世代Coreのうち、Core i7-13700とCore i9-13900のレビューは終了だ。MTPを無制限に引き出すような環境であれば、順当なパフォーマンスを引き出すことは可能だが、上位モデルは値段的な魅力に乏しい。
特に2022年末に9万円前後までに落ちたCore i9-13900Kに、10万円オーバーのCore i9-13900が太刀打ちできるとは考えにくい。CPUクーラーが同梱されているのは評価したいが、それでも割高感がある。Core i7-13700についても同様だ。値段が十分に下がらない限りは、既存のK付きモデルを適切にチューニングして使ったほうが色々な意味で得策だ。
次回は原稿執筆時間の問題で触れることのできなかった下位モデル、即ちCore i5-13400とCore i3-13100の検証を試みる。
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