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K付きモデルとどこが違う?気になる消費電力は?

第13世代Core“K無し”速報レビュー!Core i9-13900/Core i7-13700編

2023年01月03日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

クリエイティブ系アプリでのパフォーマンス

 続いて、クリエイティブ系アプリでのパフォーマンスを検証するが、まずは「UL Procyon」の“Photo Editing Benchmark”を使い「Photoshop」「Lightroom Classic」を実際に運用した際のパフォーマンスをスコアー化する。

UL Procyon:Photo Editing Benchmarkのスコアー

 まず総合スコアー(青色)はコア数とクロックの高い順に並んでいる。つまり、PhotoshopやLightroom Classicの総合的なパフォーマンスでは、Core i9-13900をMTP定格で運用しても、Core i7-13700Kよりもやや上のパフォーマンスが得られるということだ。

 結果をブレークダウンしてみると、MTPを絞った時のハンデが大きいのがImage Retouching(Photoshopメインの作業)で、逆にハンデがないのがBatch Processing(Lightroom Classicの作業)となる。Batch ProcessingのCore i9-13900とCore i9-13900 (MTP 219W)で微妙な逆転が見られる部分はあるが、全体としては序列通りのキレイなグラフに収まったといえる。

 ここで、Lightroom Classicについて別の角度からの検証もしてみたい。ここでは61メガピクセルのDNG画像100枚を用意し、最高画質のJPEGに書き出す時間を比較する。書き出し時にシャープネス(スクリーン用、標準)を付与しているため、CPU負荷はUL Procyonのテストよりもずっと高い。

Lightroom Classic:DNG100枚→JPEG書き出し時間

 CPU負荷が高いといってもコアの利用率は激しく上下動するため、Core i9-13900KとCore i7-13700Kの差が極めて小さい。このテストではCore i9-13900とCore i7-13700の差はあって無いようなものだが、MTP無制限で回せばCore i5-13600Kよりは高速だ。しかし、MTPを219Wに絞った場合は、Core i9-13900もCore i7-13700もCore i5-13600Kより遅くなる。CINEBENCHなどで見られたようなパターンとはまた異なる傾向となった。

 続いては動画エンコードで検証しよう。ここでは「Media Encoder 2023」と「Handbrake」を利用する。

 まずMedia Encoder 2023では、再生時間約3分の4K動画を「Premiere Pro 2023」上で用意し、これをMedia Encoder 2023上で1本の4K動画に書き出す時間を測定した。ビットレートはVBR 50Mbps、1パスのソフトウェア(CPU)エンコードとし、コーデックはH.265とした。

Media Encoder 2023:H.265による4K動画のエンコード時間

 MTP無制限運用であれば、K付きとK無しの差は小さく、今回の検証でも差は10秒程度に収まった。しかしMTPを定格運用にすると処理時間が一気に延び、Core i9-13900であっても処理時間はCore i5-13600Kよりも長くなる。

 続いてHandbrakeでは、再生時間約3分の4K@60fps動画をプリセットの“Super HQ 1080p Surround”でフルHDのMP4に書き出す時間を計測した。なぜMedia Encoder 2023でH.265を使ったのにHandbrakeではH.264かといえば、この後検証する消費電力を測定するのにH.265よりもH.264の方がCPU負荷が高く、消費電力もより大きくなるためである。

Handbrake:Super HQ 1080p Surroundを利用したエンコード時間

 ここでもMedia Encoder 2023と全く同じ傾向が見られた。CINEBENCHやBlenderではMTP 219WのCore i9-13900やCore i7-13700はMTP無制限のCore i5-13600Kより速いのに、Media Encoder 2023やHandbrakeではコア数の少ないCore i5-13600Kに負けてしまう理由は、CPU負荷のかかり方の違いである。

 全コアがほぼ全力で回るCINEBENCHやBlenderではコア数がスコアーアップの重要な要素になるが、今のCore i7やi9程度にコアが多いCPUでの動画エンコード処理ではコアの負荷が完全に上がりきらず、ブーストのかかり方のほうが重要になるためである。

 よって、CPUエンコード目的でK無しの第13世代Coreを買う場合は、高性能なクーラーを使い、MTPを無制限まで言わずとも定格よりも引き上げて使うべきである。

 クリエイティブ系アプリでもCPUの差があまり付かない場合も当然ある。その例としてTopazlabのAI系アプリ「Topaz Video Enhance AI」と「Topaz DeNoise AI」を使用して検証する。

 まずTopaz Video Enhance AIでは、20年ほど前に撮影した480i(720×480ドット)のAV1動画(約1分)を、インターレース解除しつつフルHD@60fpsの動画にアップスケール(Deinterlace footage and upscale to HD)する処理時間を計測した。学習モデルはデフォルト設定のままとし、出力コーデックは「Pro Res422 HQ」とした。AIプロセッサーはGPU(GeForce RTX 3080)を指定している。

Topaz Video Enhance AI:480p動画をフルHDへアップスケール処理する時間

 このアプリでは負荷の大半がGPU側へ行くような処理であるせいか、CPUパワーはほぼオマケのようなもの。Core i9-13900KよりもCore i5-13600Kのほうが微妙に時間が短いが、Core i9-13900のMTP 219W設定と大差ないあたり、その時々のブレの範囲で結構変わってしまうことを示唆している。CPUレビューにはあまり向かないベンチマークであることは間違いないが、こういう結果も出るということで紹介した。

 Topaz DeNoise AIでは、30枚のJPEG画像(24メガピクセル)を用意し、学習モデル“Severe Noise”を利用してノイズ除去処理をする時間を計測する。

Topaz DeNoise AI:JPEG30枚のノイズ除去処理時間

 なんとなくコア数と動作クロック順に並んでいるように見えるが、最速と最下位の差はわずか7秒と、CPUの性能差を論じるにはあまりにも差がない。こういったGPUに軸足の載ったアプリであれば、無理にK付きモデルと高性能クーラーでなくても良い、ということを覚えておきたい。

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