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and SORACOM

第9回

創業者と共鳴したパートナーが切り拓くパーソナルサウナの世界

サウナのある生活にIoTができること 「ONE SAUNA」とSORACOM

2022年12月23日 10時00分更新

 国産初のバレルサウナ「ONE SAUNA」を展開する宮崎のLibertyship(リバティシップ)は、SORACOMのIoTを用いた新しいサウナの世界を実現しようとしている。サウナを愛するがあまり、バレルサウナを新規事業として立ち上げてしまったLibertyship 代表取締役 揚松晴也氏と、彼の世界観に共感してプロジェクトに参加した地方発のプロフェッショナルたちに話を聞いた。

ユーザー自身が組み立てられる国産バレルサウナ

 バレルサウナはサウナ発祥の地フィンランドに古くから伝わる樽形のサウナのこと。今回取材した宮崎のLibertyshipは国産初のバレルサウナ「ONE SAUNA」を展開している。

 今から3年前、同社がONE SAUNAの開発に至ったのは、シンプルに代表の揚松晴也氏がサウナが好きだったことが大きい。もともとバレルサウナ自体は海外からの輸入品があったが、より安価で地産地消のものを作りたいというピュアな野心から生まれた。加えてコロナ禍で公衆浴場のサウナを気軽に楽しめない状況が生まれたことも大きかった。「今後は1人で入ったり、知り合いと楽しむようなパーソナルサウナの時代が来るだろうなと。建物としてサウナを構築するか、テントサウナで楽しむみたいな両極端しかなかったので、中間のニーズをバレルサウナでカバーできると考えました」と揚松氏は振り返る。

Libertyship代表取締役 揚松 晴也氏

 現状、建物としてサウナを建てると、コストがかかり、不動産としての登録も必要になるため敷居が高い。もちろん、海外からの輸入品もあるが、当然ながら高価だ。一方、テントサウナは手軽だが、毎回設営しなければならない手間があり、しかも薪ストーブしか選択肢がないため、安全性にも問題がある。バランスのとれた選択肢がなかったというのが、揚松氏の見立てだ。

 その点、ONE SAUNAは分解してユーザー自らが設営できるのが特徴となっている。「IKEAの家具のような感じで、キットが届いたら、DIYで組み立てることができます。構造的にも釘を使わないで、バンドで締めているだけ。慣れている人なら2時間で組み上げられます」(揚松氏)とのこと。実際、ONE SAUNAをチームで組み立てて、自ら作ったサウナに自ら入るというイベントが行なわれたこともあるという。

 製造方法自体は海外で作られているバレルサウナと大きく変わらないが、利用する木材を工夫することで、重さは海外製に比べても1/4で済むという。クギも使わず、シンプルなのが大きな特徴だ。また、ONE SAUNAでは設備だけでなく、水風呂やたき火まで含めた「ととのうための空間作り」も提供している。

「単にサウナを作るのではなく地産地消とコミュニティづくりをやりたい」

 ONE SAUNAは個人で購入できる組み立て可能なサウナというだけではなく、地産地消の木材を利用している点、サウナのあるコミュニティ醸成を目的としている点も特徴だ。

 地産地消に関しては、宮崎県が36年間出荷額トップという地元の杉を使いたいという目的があった。揚松氏は、「今でこそウッドショックで木材価格も上がってきていますが、海外の木材に押されて、国産の木材が使われないというのは大きな課題でした。国産木材が使われないと林業が成り立たないし、林業が成り立たないと森林が維持できない。これを解決するには、やはりニーズを増やすしかないと思っていました」と語る。

 ユニークなのは、この加工技術や製品仕様を全国の木材加工業者にオープンに提供していることだ。「結局、林業の課題は全国どこでも共通です。だから、今は北海道、宮城、鳥取、香川、宮崎の5ヶ所で同じバレルサウナを製造してもらっています」(揚松氏)。

ONE SAUNAでは地元の杉を利用し、他の加工事業者にもオープンにしている

 サウナの先にコミュニティ醸成があるのも面白い。たとえば、経営者たちがゴルフにはまるのは、スポーツとしての面白さに加え、コミュニケーションの場として有効だから。実際にサウナの発祥地である北欧でも、コミュニケーションの場としてサウナが重宝されているという事実がある。「ゴルフの場合、100切ってないのに、90の人と回るのはちょっと……とみたいなスキルの差がありますが、サウナは上手い下手がない。フィンランドのことわざでも、『人はみな産まれながらに平等だが、サウナ以上に平等な場所はない』という言葉があります。サウナをきっかけに人間関係を拡げたり、深めたりするコミュニティができたらと思っています」(揚松氏)

 プロジェクトはハミダシ学園というオンラインコミュニティの「サウナ部」のアイデアを元に2020年8月から始動。137万円〜という価格だが、発売して約2年で、販売個数は70台ほどに達している。全体の約4割は個人ユーザーで別荘や社宅に設置。残りはB2Bでホテル、旅館、公衆浴場、キャンプ場などが導入しているという。1面をガラス張りにしたバージョンも用意されており、風光明媚な場所に設置して、屋外感覚でととのえるようにしたヴィラもある。

ONE SAUNAだけではなくととのえる環境やコミュニティが重要だという

 また、現地で組み立てられるというモバイル性を活かし、ONE SAUNAは期間限定のイベントでも多用されている。「HTB(北海道テレビ放送)様では、サウナのまち札幌を体感してもらうべく、社屋の27階の屋上や大通公園の展望台に設置してもらいました」(揚松氏)とのこと。メルセデスとコラボして、羽田空港に置いたり、逗子の海辺にあるカフェに設置したこともある。最近では、バレルサウナ複数台を設置したサウナヤードも設計しており、会社からもほど近い青島ビーチビレッジにはサウナ施設がオープンする。

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