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メタ「Quest Pro」一般人にはおすすめできないが、可能性は感じる

2022年11月03日 16時00分更新

一般人向けではないが面白い。今後の成熟に期待

 結論として、これで仕事するというのは今日の段階では無理があるなという印象です。特にソフト面の不足が顕著に感じられました。ARやMRを中心に、新しい機能が入ってるんだけど、機能を使うための要素を揃える前にリリース日を迎えてしまったのかなという印象を受けました。

 今はそういう不足を含めて楽しめるような覚悟がある人じゃないと買えないなという感じです。同じような20万前後の価格帯の仕事用のマシンとしてMacBook Airとどっちを買いますかと言われたら、そりゃMacBook Airだよなあと。

 メタにとって難しいのは、これまでウェブサービスしかやってこなかった企業だということですよね。Office 365やGoogle Suiteのようなビジネスツールを作ってきたわけではないので、仕事に使おうとするとそこがネックになる。文書を作ろうとしてGoogleドキュメントを開いたら「これは標準ドライバーではありません」とアラートが出てしまい、グーグルとちゃんと話し合いがなされているわけでもないんだなと思えました。

 今後はマイクロソフトが「Office 365」のQuest対応をすることが基調講演で明らかにされましたが、そのあたりが整ってこないとまだまだ本格的に仕事に使えるとは言えないようにも思えます。

基調講演で発表されたOffice 365のVRでの使用イメージ

 一方、値段さえ目をつむれば、ハードとして非常に魅力的なんですよ。ソフトウェアの成熟によってはまだまだ伸びしろがあるなと思います。

 特にARは可能性がありそうなんですよね。すでにQuest ProのAR機能を使い、キャラクターが野外でコンサートをしているようなデモを試している人もいました。こうした例を見ると非常にカラーパススルーの魅力を感じますし、こうしたテクノロジーを追いたい人にとってはとてもいいハードだと思います。今後も継続的に使われていろんな人がいろんなものを作り始めると思うので、そこの成熟は追っていきたいですね。現段階ではまだ普及とまではいかず、普及するのは早くとも来年発表とされる「Quest 3」以降になるかと思いますが、現状でメタのビジョンが最もよくわかるハードではないかなと思います。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。「バーチャルマーケット(Vket)」で知られる株式会社HIKKY所属。デジタルハリウッド大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRゲーム開発会社のよむネコ(現Thirdverse)を設立。VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。著書に8月に出た『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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