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Rhizomatiks真鍋大度代表×Sonosジェフ・ダーダリアン氏

世界向けであって日本向けでもある「Sonos Ray」にかける想い

2022年09月17日 15時00分更新

競合は意識せず、自分たちが理想とするものを作る

 「競合は意識しない」という言葉はSonosの担当者がよく口にする言葉だ。重要なのは正しい価値を吟味して提供することである。多彩なフォーマットへの対応や適切なベースレスポンス、システムの拡張性などを通じ、プレミアムなサウンドとシンプルで簡単に使える操作性、美しいデザインというブランドの強みを最大化しようとしている。

 特に使いやすさの部分では、Beam(Gen 2)ではHDMIのみ、Rayでは光デジタル入力のみといった形で敢えて入力端子を絞り込む選択をしている。これは選択肢が増えることでユーザーが逆に混乱することを避けるためだという。

 一方で、光デジタル信号をHDMIに変換するアダプターをBeam(Gen 2)に同梱したり、光デジタル入力用のコネクタを独自形状にして、上下を意識せず、ケーブルのぬきっしができる仕組みをRayに取り入れたりと、細かいが配慮の行き届いた試みも取り入れている。

会場では写真のSonos ArcとSUBを2台使った構成で、真鍋氏が制作に携わったコンテンツの上映が行われた。

空間オーディオの制作環境は変化
「あとは面白いものを作るだけ」

 昨今では“空間オーディオ”という言葉がよく使われるようになり、音楽の分野でも立体的で実在感のある音の表現が注目されている。真鍋氏は以前からSonosの製品になじみがあり、スペックもよく知っていると話す。作品では、オーディオと映像の相互化に取り組み、Dolby Atmosのフォーマットに含まれるオブジェクトの位置情報と映像をリンクさせ、音の可視化や映像と音のインタラクションに取り組んでいる。音の空間情報を映像に同期するためにプログラミング作業も行ったという。

 この作業を通じて「改めて、いまの技術はどこまで進化しているのかを知る機会になった」と話す。イマーシブシアターなど再生できる環境も増え、360度映像と立体的な音響の組み合わせもしやすくなっているとする。制作には手ごたえもあったようで、インスタレーションなどへの展開にも意欲を見せていた。

「Feel More with Sonos」デジタルアートコンテンツの概要

作品名:Tokyo Mating Dance
著作権者:Rhizomatiks
作曲・編曲:ノサッジシング
歌詞:UA
作曲:イガキアキコ

 「マルチサラウンドエンジニアリングをやっていたから思うところもある」とする真鍋氏。より使いやすいソフトウェアやツールへの期待感を示すとともに、以前に比べクリエイターがコンテンツの制作に集中できる環境になっているともした。過去には64台ものスピーカーを配置したマルチサラウンドに取り組んだこともあるそうだが、その際はキャリブレーションをするだけでも大変だったという。しかし、今ではそれがすぐにできるようになっている。

 制作したコンテンツでは、本来はあり得ない場所から声が聞えるような演出も取り入れているが、この経験は「映像的に音の配置をして、ミックスした感じ」に近いという。音に空間方向のベクトルが加わることで、音楽表現の次元がひとつ高くなった実感があるとする。空間オーディオは劇場での歴史は長く、音楽での活用も始まっているが、音楽として試されていないことはまだまだ多く、そこに関心があるとした。「あとは面白いものを作るだけ」であり、「ここが20年前と違うところだ」というコメントもあった。

 また、スタジオの音をSonosでどのぐらい再現できるかは心配だったが、本当に音が定位して空間オーディオの音が再現できる。コンパクトなシステムで自宅でも楽しめる。誰もが入手できるのはすごいことだという感想も述べていた。

 今回の作品では、イントロ部で上述した音の空間情報の可視化、ダンスとしての音楽の表現に加えて、UAの歌詞に連携した映像を作るため、AIを使い歌詞に含まれるワードから連素される映像の自動生成などにも取り組んだ。最後に現れる渋谷の交差点の映像は、歌詞の情報をAIに渡して作られたものだという。

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