マウスコンピューターが販売する「MousePro-NB430H」は、持ち運びを重視したビジネス向けの14型ノートパソコンだ。前回の記事では、MousePro-NB430Hの薄型軽量ながら堅牢性の高い筐体が、持ち運びにとても適しているといった、特徴やオススメポイントを中心に紹介した。
今回はMousePro-NB430Hの持つパフォーマンスについて紹介していく。インテルの最新第12世代モバイルプロセッサー「Core i5-1235U」が、Officeアプリの実行といった際にどれくらいのパフォーマンスを発揮してくれるのか、ベンチマークの結果を交えつつ検証していこう。
MousePro-NB430H 試用機の主なスペック | |
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CPU | Core i5-1235U(1.3GHz~最大4.4GHz)、10コア/12スレッド |
グラフィックス | インテル UHD グラフィックス |
メモリー | 8GB |
ストレージ | 256GB SSD(M.2接続/NVMe対応) |
ディスプレー | 14型(1920×1080ドット)、ノングレア |
内蔵ドライブ | ー |
通信規格 | 無線LAN(IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n)、Bluetooth 5.0 |
インターフェース | USB 3.1 Gen2、USB 3.0、Thunderbolt 4、HDMI出力、4極ヘッドセット出力、microSDカードリーダー |
内蔵カメラ | 100万画素Webカメラ(Windows Hello対応) |
バッテリー駆動時間 | 約23.5時間(JEITA測定法 Ver.2.0) |
サイズ/重量 | およそ幅322×奥行216.8×高さ16.9mm/約1.08kg |
OS | Windows 10 Pro(64bit)、Windows 11 Proのダウングレード権を利用 |
ビジネスノートらしく、Officeアプリやオンライン会議などは軽々とこなせる性能を発揮
MousePro-NB430Hの心臓部となっているCore i5-1235Uは、インテルの第12世代Coreプロセッサーの特徴でもあるハイブリッド・アーキテクチャを採用するCPUだ。高性能CPUコアの「Pコア」と、高効率CPUコアの「Eコア」という性格の異なる2種類のCPUコアを混在させることで、パフォーマンスと省電力を両立させている。Core i5-1235Uは2基のPコアと8基のEコアを搭載する10コア/12スレッドのCPUで、最大ブースト動作クロックは4.4GHzに達する。
Core i5-1235UはメインとなるPコアを2基しか搭載していないため、クリエイティブ系アプリなどのマルチスレッド重視の作業はあまり得意とはいえないが、一方で主にバックグラウンド処理を担当するEコアが8基も搭載されているので、裏でウィルススキャンなどの作業が行なわれても、メイン作業へ影響が及び難くなっているというのが特徴だ。
グラフィックスを処理するGPUはCPU内蔵の「インテル UHD グラフィックス」が用いられている。ゲーミング性能はあまり期待できないものの、動画再生支援に秀でており、Youtubeの8K動画などもスムーズに再生可能だ。
システムメモリーは標準構成で8GB(DDR4-3200)を搭載。今回の試用機も8GBモデルだ。現在のWindowsはメモリーのやり繰りが上手で、さらに仮想メモリーの保存先に高速なSSDストレージを使えるようになっていることから、メモリーが8GBもあればWindowsは十分快適に動作させられるといわれている。MousePro-NB430Hの主用途と考えられるOfficeアプリの実行にも、8GBあれば過不足のない容量といえるだろう。
もし、もっと多くのメモリー容量を要する用途で使いたい場合は、注文時のカスタマイズで最大40GBまで増設することも可能だ。ちなみにメモリー増設を行なうとGPUの動作も「インテル UHD グラフィックス」から「インテル Iris Xe グラフィックス」へとモードチェンジし、少し高性能化するようだ。
なお、MousePro-NB430Hは付属ユーティリティーの「Control Center 3.0」から動作モードを変更できるようになっている。「バランスモード」と「静音モード」の2つの動作モードが用意されているが、今回のレビューではバランスモードにて各種ベンチマークを実行している。MousePro-NB430Hの冷却ファンの音はそれほど大きい音ではないものの、薄型筐体のために熱がこもりやすいのか、冷却ファンが回る頻度は少し多めな気もする。図書館など本当に静寂なスペースで作業を行なうときは、静音モードに切り替えるといいだろう。
では早速、各種ベンチマークを実施し、MousePro-NB430Hのパフォーマンスを確認していこう。
最初のベンチマークは、CPUのマルチスレッド性能とシングルスレッド性能を3DCGのレンダリング速度で測る定番ベンチマーク「CINEBENCH R23」だ。
結果はマルチコアが4143pts、シングルコアが1325ptsというものに。モバイルプロセッサーは消費電力の上限が低いうえにCore i5-1235UはEコア偏重のCPUなので、マルチ性能がシングル性能の約3倍程度に抑えられているのは致し方ない点。やはり、3DCG製作や動画編集などマルチ性能が重要な作業には向かないと思った方がいいだろう。
一方でシングル性能は高く、デスクトップパソコン向けの「Core i7-10700」クラスに並ぶスコアを叩き出している。一般的な普段使いのアプリの場合はシングル性能の高さが動作の快適性に繋がるとされており、このシングル性能の高さがMousePro-NB430Hの快適な動作に繋がっているのだろう。
続いて、実アプリケーションに近い負荷でパソコン全体の性能を測る「PCMark 10」(Ver.2.1.2563)のベンチマーク結果を見ていこう。
総合スコアは4321で、その内訳は、アプリ起動速度、ビデオ会議、Webブラウジングの性能を測る「Essentials」が8554。表計算や文書作成のOfficeソフト性能を測る「Productivity」が6220。写真編集や動画編集、3DCG製作などのクリエイティブ性能を測る「Digital Content Creation(DCC)」が4116という結果に。
GPUの性能がモノをいうDCCに関しては、内蔵GPUの限界から少々見劣りするスコアーが記録された。一方でEssentialsは高いスコアを記録していて、普段使いにおいて“モタついているなぁ”と感じることはほとんどないと思われる。また、Productivityもオフィスアプリを十分快適に実行できることを示すスコアだ。ビジネスマンが必要としている性能は十分満たしているといっていいだろう。
次に、実際のMicrosoft Office製品を用いて実アプリケーションのパフォーマンス計測を行なう「UL Procyon」(Ver.2.1.459)での計測結果をみていこう。「Microsoft 365」のパフォーマンス計測を行なう「オフィス生産性スコア」の結果は次のとおり。
統合スコアは4564で、その内訳は「Wordスコア」が5774、「Excelスコア」が4170、「PowerPointスコア」が5060、「Outlookスコア」が2781となった。
ちなみに現行トップクラスに近い性能を持つ「Core i7-12700」搭載デスクトップパソコンで以前計測した際の統合スコアーは約7300だった。さすがに薄型軽量ノートパソコンでは全然歯が立たないスコア差といった感じだが、各テスト項目の内容を細かく比較すると、0コンマ秒で完了するテスト項目はCore i7-12700搭載パソコンもMousePro-NB430Hもどちらも0秒台(0.2秒と0.4秒といった具合)で処理を完了している。
つまり人間の体感基準だと両者に差はほとんどなく、MousePro-NB430Hでもハイエンドデスクトップパソコン同様の快適性が得られることを示している。一方で変換エクスポートなどの重ためのテスト項目では相応の時間差が出てくるので、このような処理の実行時は、腰を据えて完了を待つ必要があるだろう。
最後のベンチマークは、内蔵ストレージの転送速度を計測する「Crysrtal Disk Mark 8.0.4」。テスト結果はシーケンシャルリードが2492MB/s、シーケンシャルライトが974MB/sというものだった。PCI Express Gen3接続のM.2 NVMe SSDとしてリード性能はミドルクラスだが、ライト速度は少々低めだろうか。ただ、低いといってもSATA接続のSSDよりは格段に高速なので、大容量ファイルのコピー時以外でライト速度が気にかかることはほとんどないだろう。
また256GBというSSD容量に関しては必要最低限といったところだが、Microsoft 365インストール後でも約180~190GBほどの空き容量が残っていた。写真や動画などの大容量データを大量に扱ったりしなければ、特に問題なくやり繰りしていけるはずだ。安心感がほしい場合は、注文時のカスタマイズで512GB以上に増量しておくのもオススメだ。
AV1コーデック対応で8K動画も軽々再生
ビジネス用途からは外れてしまうが、インテルの最新プロセッサーの大きな特徴の1つに、豊富な動画コーデックへの対応が挙げられる。とくに最新の「AV1コーデック」は圧縮率のとても高い動画コーデックとして、YoutubeやNetflixといった動画配信サイトで主に8K動画や4K動画など重い動画を中心に採用されはじめている。そんな重たい動画も、AV1コーデック対応のCore i5-1325Uを搭載するMousePro-NB430Hであれば軽々と再生可能だ。
いずれフルHDなどの低い解像度でもAV1コーデックが標準的に使用されるようになると目されているが、MousePro-NB430Hであれば変わらず快適な動画視聴を楽しみ続けられるだろう。
Officeアプリの快適な作業環境を、いつでもどこでも使いたいと考えているビジネスマンにオススメ
さて、今回はMousePro-NB430Hのパフォーマンス面の検証を行なってきたわけだが、MousePro-NB430HはOfficeアプリやテレビ会議など、ビジネスに必要な作業を十分快適にこなせるだけの実力を備えていることがわかった。このパフォーマンスに加えて最大23.5時間駆動可能な大容量バッテリーを備えているので、いつでもどこでも使えるOfficeアプリの作業環境を持ち歩いていたいビジネスマンにはうってつけの1台といえるだろう。
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