車重は重いが走行性能はスポイルされない
まず乗り出して思うのは、250kgという車体重量からくる功罪。高速道路などではすこぶる安定しているのですが、入庫などでは「意外とシンドイなぁ」とも。もっともバックギアがあるので、めちゃくちゃ大変というわけではないのですが、バイクを垂直にする、もしくは腰をバイクに密着させないと、疲れた時や力の弱い方などはバイクを支えるのは難しいかなと思った次第です。
鈍重なバイクかと思いきやそうではなく、加速はかなり鋭い印象。2気筒エンジンらしいパルス感のともなった排気音と振動を感じながら車速が乗る感覚は快感そのものです。変速時のショックはなく、停止時にクラッチを切らないという点ではスクーターに似ているのですが、スクーターと違うのは走りの楽しさ。力強さが段違いなのです。とはいえ、ガンガン回して……というバイクではないので、のんびりと走るのがいいのかなと。
視野が高いのも美質。感覚的にはSUVと同じか、それ以上という印象でしょうか。だから遠くが見通せますし、ATモードと相まって「意外と街乗りに適しているかも」と思いました。それにしても左足にペダルがないのは不思議な気分。
ですが真骨頂は高速道路とワインディング。今回は秩父の方へ足をのばして、荒れた道で知られる正丸峠を走ってみました。高速道路はクルーズコントロールで快適そのもの。できれば前走車と追従するアダプティブ対応だとさらにいいのですが、高望みというものでしょう。
取材時、中央道は激しい渋滞だったのですが、ATということもあって、走りは相当ラク。ただ右手の人差し指と薬指を常にブレーキレバーに置くハンドルの握り方をすると、エンジンの振動ゆえか、次第に小指がしびれてきます。4本指でしっかりグリップすると、そのような痺れは回避できるようで、これが乗りこなしのポイントといえるかも。
さて、正丸峠をアタック。道は相当荒れているうえに、昼間でも薄暗く滑りやすいという中々の場所。ですが、アフリカツインで走ると、これが面白くて仕方ないのです。めっぽう安定していますし、ぐんぐん登坂するのはもちろん、下りもラクラク。何より冒険者の気分が味わえるのです。乗りながら「アフリカツインに乗って、酷道・険道めぐりとかしてみたい」と気持ちになること間違いなしで、実際できそうな雰囲気。気づけばアドベンチャーバイクの魅力にとりつかれていたのでした。
嘘偽りなく「これ欲しい」と思ったのは正直なところ。なのですが「コレ1台でアガリ」かというと、それもまた違うかなとも。何かバイクがあって、さらに1台というのが許されるなら、アフリカツインは最有力候補。「結局のところ、アガリの1台は難しい話なのかな」と欲深い不肖は改めて思ったのでした。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう