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Mini LEDは必須ではない、なぜ今か? TVS REGZAに聞く

2022年最注目の量子ドット技術、その仕組みとメリットを解説

2022年08月31日 18時30分更新

レグザの広色域量子ドット採用液晶パネルの仕組み

 ここからは具体的に、レグザが採用した「広色域量子ドット採用液晶パネル」について紹介していこう。光源となるLEDバックライトに液晶パネルを重ねた構造は一般的な液晶テレビと同じだ。違いは、LEDバックライトの色が青(一般的なLEDバックライトは白色で、青色のLEDに黄色などの蛍光体を組み合わせて白色にしている)であること。そして、LEDバックライトと液晶パネルの間にシート状の量子ドットが挟まれていることだ。

量子ドット×REGZA

広色域量子ドット採用液晶パネルの構造(イメージ図)。基本的な構造は一般的な液晶テレビと大きく変わらない。

 シート状の量子ドットには、粒の大きさの異なる半導体微粒子が均一に混合されている。青色LEDの光は粒が大きめの量子ドットにぶつかると赤色に変換され、中くらいの粒の量子ドットに当たると緑色に変換される。量子ドットの隙間を透過したものはそのまま青色になる。このように量子ドットシートを挟むことで、青の光を青、緑、赤の光を取り出せる。そして、この3色が均等に交じり合うことで白い光が得られる。

 自分の目で見られるものではないのだが、説明会では量子ドットの粒を封入したビンにブラックライトを当てるデモを行ってくれた。ブラックライト(紫外線)の照射なので、そのまま量子ドット技術のデモではないようだが、量子ドットによる波長変換の仕組みそのものは同じだという。面白いことに、一見白色の物体が入ったふたつのビンが、ブラックライトを当てると片方は赤く、片方は緑に光るのだ。まるで手品でも見ているような不思議な現象だ。

量子ドット×REGZA

量子ドットによる液晶パネルによる波長変換の概念図

 白色LEDを使った従来のバックライトと、広色域量子ドットシートを採用した青色LEDバックライトの波形スペクトラム(色の波長の分布)を見てみよう。従来のものは青色に比べて、緑と赤の背が低く、緑と赤の谷間も大きい。白色LEDは青色をベースとしているため、青色の光が強く、緑と赤の光は弱い。緑と赤の中間の黄色の量も多いことがわかる。それに比べて、量子ドットを通した青色バックライトでは、青色に比べて、緑も赤もかなり背が高くなり、緑と赤の間の光も少ない。これはつまり、純度の高い三原色(赤・緑・青)が取り出せていることの証しだ。

量子ドット×レグザ

従来の液晶と量子ドット技術採用の液晶のスペクトラム比較

 これは、緑や赤の領域で再現できる範囲が増えることを意味する。同時にこれまで十分に活かせなかった青色の再現もよくなり、色再現の範囲が大きく拡大することになる。これが広色域で、これまでにない鮮やかな色を再現できるようになったというわけだ。

 ここで肝心なのは、量子ドット技術は必ずMini LEDと組みあわせる必要はなく、青色LEDであれば通常のサイズのLEDを使ったバックライトでも広色域化ができるという点だ。Mini LEDは搭載するLEDの総数が大きく増えるため、そのぶん高コストになる。市場を見ても、Mini LED搭載の液晶テレビは一般的な液晶テレビよりも価格が高く、有機ELテレビに近い値段となっている。

 手頃な価格が大きな魅力である液晶テレビなのに、有機ELテレビに近い値段になってしまうのではメーカーとしても悩ましい。そこでレグザのZ770L/Z670Lシリーズを発売した。Mini LEDを使用しない、通常の液晶バックライトでも量子ドット技術を盛り込めば、手頃な価格で豊かな色再現を実現できる。

 熱心なファンが多い歴代のZシリーズは、高画質と高機能を備えながら価格も手頃なことが人気の理由だった。TVS REGZAでは、Z770L/Z670Lこそが正統なZシリーズの系統とさえ言っている。決してミドルクラスやスタンダードモデルではない、正真正銘のZシリーズだと胸を張るのだ。

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