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堺市「中百舌鳥イノベーション 地域社会未来創出プロジェクト」がキックオフ!

共感力が永続ビジネスに 地域社会の課題を解決するヒント

2022年08月17日 11時00分更新

 3人目は夢見る株式会社の代表取締役、重見彰則氏が登壇。同社は子供向けのプログラミング教室「ロボ団」を運営しており、現在はエディオングループの一員として全国展開している。

夢見る株式会社 代表取締役 重見彰則氏

「創業時は学童保育事業を行なっていたが、まったくうまくいかない中で子供向けプログラミング教室の運営を始めた。これは学校教育で求められる優等生と、当たり前のことをやるだけでは評価されない実社会で求められる能力の間にギャップを感じていたため。イノベーティブなことをやれる人材を育てることが必要だと思っていた」

「しかし当時はプログラミング教育の必修前でスケールせず、事業ドメインでの1位を目指すために大企業と一緒になることを考え、エディオングループに入った。その際、エディオン以外からも声がかかっていたが、プログラミングやロボットの教育事業をやっていない企業は、弊社の事業を実績ベース、定量的にしか評価できなかった。エディオンはすでに教育事業に取り組んでおり、実際の教室運営やカリキュラムの中身を評価してくれた。そこがエディオンを選んだ理由になった」

「ロボコンで上位に入り、大阪の子供が日本代表としてハンガリーの世界大会に行った。小学4年生が考案した手洗いアシストロボがもうすぐ製品化されることになった。自分の好きなことでチャンスをつかんで自分の人生を切り拓いていく姿を見ることができたのは非常にうれしかった。事業をやる上で共感力は非常に重要だと思っている。そこでは自分だけでなくみんなで共有できる大義名分、志(こころざし)が大事になってくる。そうでないと永続的なビジネスにならない」

 パネルディスカッションに登壇した企業は、いずれも創業時の事業から気づきを得て、社会課題を解決する新規事業をスタートしている。プロジェクト参加者や、次に続く企業には参考になるのではないだろうか。

社会の課題に解決から、経済的インパクトある事業創出まで

「中百舌鳥イノベーション 地域社会未来創出プロジェクト」の概要は下に示すプログラムを通じて、市内外のスタートアップ企業や市内の第2創業企業と大学や各種支援機関との連携を実現し、堺市もしくは日本の抱える社会課題の解決や、社会的経済的インパクトを持つ新たな価値創造をもたらすイノベーティブな事業の創出を目指したものとなっている。

 イノベーションの創出は日本全体の喫緊の課題として挙げられており、さまざまな自治体が工夫を凝らしたプログラムを提供している。その中でも「中百舌鳥イノベーション 地域社会未来創出プロジェクト」の特徴は、自治体や地域住民との非常に強力な連携するものとなっている。

 例えば2022年9月下旬に予定されているマッチング会では、堺市が抱える地域の「本質的課題」を市の担当課職員がプロジェクト参加企業にプレゼンテーションを実施し、その解決に向けてプログラム参加企業が解決策を提案する。地域に顕在化しつつある課題と、各企業の「できること」の組み合わせにより、社会的価値と経済的価値を両立したイノベーティブな新規事業の早期立ち上げを実現しようとするものとなっている。

 また、新規事業に取り組むスタートアップ企業や第2創業企業は、その立ち上げに向けて従来の自社の強みとは異なる側面からの取組が必要となることも多い。本プロジェクトではセミナー形式や個別面談形式のワークショップを2022年10月以降7回にわたって実施し、物心両面から参加企業を支援する。

 加えて、2023年2月のマッチング会では地域住民から提案される地域課題解決型プランの提示を受け、それに対して参加企業から何ができるかを逆提案する。これにより、自治体担当者すら気が付かないような「地域住民が本当に困っていること」の具体的な解決策の実現を目指す。

キックオフイベントの主催者として「中百舌鳥イノベーションシンポジウム」を紹介した堺市 産業振興局 産業戦略部 イノベーション投資促進室 中百舌鳥イノベーション創出拠点担当 課長 西浦伸雄氏

 このように本プロジェクトは、テクノロジーだけに偏ったシーズ重視のイノベーションではない。「行政のやりたいこと」と「住民の困っていること」に「企業のできること」を掛け合わせることで、社会的な意義や経済的なインパクトの大きさと実現性の高さとを両立するところに本質的なイノベーション性を見出している、そこに本プロジェクトの最大のユニークネスがある。

 また、プロジェクトには参加できないが、興味を持った方には、2022年8月22日に開催されるイベント「中百舌鳥イノベーションシンポジウム」に注目して欲しい。これは中百舌鳥エリアをイノベーション創出の起点とするべく大学から民間事業者、産業支援機構、行政機関などにより設立された「NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム」が主催するもので、さかい新事業創造センター(S-Cube)での参加のほか、オンラインでも視聴可能だ。

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