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現場力の限界という社会課題を解決

IoTによる経験や勘の見える化から新サービスを開始した住友ゴム工業

2022年08月03日 09時00分更新

 7月6日~7日に開催されたソラコムの年次イベント「SORACOM Discovery 2022 ONLINE」のキーノートとして、住友ゴム工業 タイヤ国内リプレイス営業本部ソリューション営業部の寺本雅紀氏が登壇。「アイデアを事業に~ダンロップ『タイヤ空気圧・温度管理サービス』への取り組み」と題した特別講演が行なわれた。

限界に近づきつつある現場力

 住友ゴム工業は、ダンロップブランドによるタイヤ事業を展開。その中で、タイヤ空気圧や温度をリモートで監視する乗用車向けの「タイヤ空気圧・温度管理サービス」を提供している。

 寺本氏は、「タイヤ産業は、数億円単位の製造設備を整え、タイヤ販売、メンテナンスを含めて、重厚長大な産業である。その一方で、中国や韓国から格安タイヤが輸入されており、勝負が難しい産業のひとつでもある。だが、ダンロップは、日本でのシェアは落としていない。その背景にあるのは圧倒的な現場力の強さである。住友ゴム工業が持つ製造、販売、メンテナンス、サービス体制による現場力と、ドライバーやメンテナンス工場、修繕作業者、購買担当者などとのしっかりとした信頼関係を築いている点が強みである。現場力は地道であるが、何よりも大切なことである」と切り出した。

製造~メンテナンスまで、サービス体制による現場力によって日本のシェアは落ちていない

 だが、その一方で、住友ゴム工業が得意としてきた「現場力」は、「限界に近づきつつある」とも指摘する。「これは、人の能力不足の課題ではなく、社会課題の問題である。少子高齢化や3K職場の敬遠、IT化による業務内容の高度化などが背景にある。今後は、人頼りにせず、現場力を向上させることが必要になってくる」という。

現場力の限界を指摘する住友ゴム工業 タイヤ国内リプレイス営業本部ソリューション営業部 寺本雅紀氏

 住友ゴム工業では、こうした課題を解決するために、数年前に社内公募を行ない、新規ビジネスの創出に取り組んできた。

 新規ビジネス企画チームには、5人の社員が集結。営業部門から2人、製造部門から1人、設計部門から1人、システム部門から1人が参加し、お互いが持つ専門性を活かす環境が整っていたのが特徴だという。

 寺本氏は、製造部門からの参加だ。「チームメンバー全員が、現場を体験しており、現場力を向上させたいという意識を持ち、課題解決に向けたモチベーションが高かった。チーム全体の目的を、現場力の向上に定め、現場にある課題の解決にフォーカスした」と語る。

新規事業にあたって解決したい課題

 社内公募で集まった意識の高いメンバーは、現場が毎日やってきた仕事を代替できないかと考え、経験や勘を見える化することに取り組みはじめた。その成果としてたどり着いたのが、メンテナンス管理者が毎日実施しているタイヤの空気圧点検をデジタル化することだった。

 自動車に装着したTPMSと呼ぶ空気圧センサーを通じて、空気圧や温度のデータ、位置情報などを、車載通信機を通じて、住友ゴムクラウドに収集。メンテナンス管理者は、タブレットやPC、スマホの画面で確認できるようにしたのだ。

現場が毎日やってきた仕事を代替するため、経験や勘を見える化することに取り組む

 同サービスを通じて、「事故防止」、「タイヤライフ向上」、「点検時間短縮」、「燃料費削減」という4つの効果が生まれたという。

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