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日本と世界をつなぐ!ヌーラボが実践するエンジニアのコラボレーションに迫る

「なぜやるべきなのか」を併せて伝えることが大事

マスクド:ヌーラボでは外国人社員も多いですが、一緒に働く中で苦労する点はありますか。

馬場:一番大変なのは時差ですね。経営会議など海外拠点の役員が参加するものは、お互いに歩み寄って日本時間で朝の9時などに行っています。英語によるコミュニケーションも文字によるチャットなら理解するために翻訳ツールなどを使う時間もありますが、会話では発音もあるので苦労します。それでも海外のメンバーも日本のメンバーの言うことを理解しようと努力してくれるおかげで、何とかコミュニケーションが成立しています。

マスクド:組織におけるリーダーの役割についてお話を伺います。ヌーラボではリーダーを任命せず、自発的に立候補する形を取っています。こうした自主性に依存すると、統制が取りにくい場面もあるのではないでしょうか。

馬場:組織の統制だけを考えれば、ピラミッド型の組織で良いでしょう。しかし、リーダーシップというのはメンバーそれぞれが備えるべきもので、部長やマネージャーといった役職で示すものではありません。ヌーラボではメンバー各自がチームの一員であるという意識を持ちながら、自発的に助け合っていく文化を目指しており、人助けが嫌いな人や、自分の仕事だけやれば良いと考える人も居ないと考えています。

 前述のインセプションデッキを通して、目標を達成するために個々のメンバーがリーダーシップを発揮したりしながら、役職にとらわれずお互いを助け合っていく体制になっています。

 そもそもヌーラボはツールとしても会社としてもコラボレーションを大事にしています。「リーダーが責任を取れ」ばかりでは上手くいきませんし、仕事も楽しめません。我々もユーザーも楽しく仕事をするには、むやみに失敗に対するプレッシャーをかけるべきでないと考えています。

 株式上場後においても、メンバーが「この会社やチームで仕事ができて良かった」と思ってもらえることが大事だと考えており、社長自身もこの点を強く意識していますね。

マスクド:ヌーラボには「偏愛あふれる一匹狼」なエンジニアが集まっているそうですが、どんな人がいるのでしょう。

馬場:例えば、Go言語が好きで、当初は社内でも使う場面がなかったもののイチから仕事を作って開発にこぎつけたエンジニアがいますね。また、セキュリティー担当のエンジニアの中には、セキュリティーキーが大好きで、ひたすらセキュリティーキーを紹介するブログ記事を執筆してくれたメンバーもいます。

マスクド:ブログやイベントなどで情報発信するエンジニアが多いですが、どんな取り組みを行っているのでしょう。

馬場:ヌーラボではエンジニアに対して、誰かの指示を受けずに自分で開拓してほしいと期待します。例えばエンジニアはさまざまなテーマで社内勉強会を開催しており、最近ではUXライティングなどにも取り組んでいました。さらに職種の異なるエンジニア以外の社員とも特定テーマについても意見交換をするなど、横のつながりが強いですね。しかし会社としてエンジニアに何か指示することはありませんし、むしろ仕事中に勉強会の準備をしても何も言わないほどです。

 情報発信を活発化させるなら、必要性を感じる人を増やしたり、重要性を説いていくしか無いと思います。そこで「エンジニアとしても自分で情報発信したり人に教えることで自身の理解も深まる」「ブログの執筆やイベント登壇によってエンジニアとしてのスキルも向上する」など、「なぜやるべきなのか」を併せて伝えることが大事だと考えます。ヌーラボではエンジニアが自然とブログリレーなど行ってくれるので、人事評価制度に反映したいと思うほどです。

マスクド:評価においてエンジニアは数字による査定は難しいですが、納得感のある人事評価についてどのような施策を取られていますか。

馬場:毎年悩んで改善を繰り返してます。以前は所属部門の部長が査定しましたが、人数が増えると細かい評価などが難しくなります。そこでエンジニアから自己申告できる部分を入れたり、部長だけでなく現場に近い人の評価を反映するなど工夫しています。社内人事のグレードに応じた職能要件定義はありますが、エンジニアにおいては使用する技術なども異なるので技術力を測るための一定の基準を設けることは難しいですね。評価体制については、まだ道半ばで反省と改善の繰り返しです。

マスクド:最後にヌーラボのエンジニアチームをどのような組織にしていきたいですか。

馬場:自律したチームが一番魅力的だと考えています。自分達で決めたことを自分達で実行しながら、メンバーがやりがいや成長を実感できる組織になってほしいですね。

取材を終えて

 ヌーラボではお互いに情報などをオープンにすることで、離れた場所でも活発なコミュニケーションを生み出している。そしてコラボレーションを実現するツールを開発しながら、社内でもエンジニアが使い込みながら実践することで磨きをかけている印象を受けた。こうした取り組みの繰り返しが、自主性のあるエンジニアを集めて、積極的な情報発信にもつながっていると感じた。今後も続くであろうリモートワークや、注目度が高まる外国人エンジニアとの協業において、ヌーラボから学べることは大きいだろう。

マスクド・アナライズ

空前のAIブームに熱狂するIT業界に、突如現れた謎のマスクマン。
現場目線による辛辣かつ鋭い語り口は「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれ、独特すぎる地位を確立する。
"自称"AIベンチャーを退職(クビ)後、ネットとリアルにおいてAI・データサイエンスの啓蒙活動を行う。
将来の夢はIT業界の東京スポーツ。
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