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B DASH CAMP Sapporo City コラボレーションピッチ

「気球で宇宙遊覧旅行」の岩谷技研 北海道期待のスタートアップ5社

2022年06月20日 07時00分更新

 インターネットをはじめとするテクノロジー業界で活躍中の経営者や投資家を集めた日本最大級の招待制カンファレンス「B DASH CAMP 2022 Summer in Sapporo」が2022年6月1日から3日にかけて北海道札幌市で開催された。

 開催地である札幌市では北海道から世界を変えるスタートアップの事業成長を支援するというミッションで各種施策に取り組んでいる。その一環として、B DASH CAMPと札幌市の協賛で、北海道出身のスタートアップ5社を集めたコラボレーションピッチ「B DASH CAMP Sapporo City コラボレーションピッチ」を今回初めて開催した。

 審査員は株式会社アカツキ 執行役員 Akatsuki Ventures 代表取締役社長の石倉 壱彦氏(以下、石倉氏)、KDDI株式会社経営戦略本部 副本部長 兼 地方創生推進部長の江幡 智広氏(以下、江幡氏)、B DASH Ventures ディレクターの山崎 良平氏(以下、山崎氏)に司会進行役のB DASH Ventures ディレクター 寺田 真二氏(以下、寺田氏)が加わった4名となっている。

北の大地札幌で繰り広げられた熱いピッチイベントの模様をご紹介しよう。

優勝した「気球で宇宙遊覧旅行」の岩谷技研

株式会社エアシェア:小型飛行機のマッチングサービスで日本全国を空でつなぐ

 最初の登壇者は株式会社エアシェアの代表取締役CEO 進藤 寛也氏だ。同社はセスナやヘリコプターなどの小型機を有効利用するため、その運行の空き時間にパイロットとユーザーをマッチングするサービス「エアシェア」を展開している。

株式会社エアシェア 代表取締役CEO 進藤 寛也氏

 空飛ぶクルマなど、近い将来空の有効活用が進むとされているが、現在はまだ国内に700機あるとされている小型機も実際に運用できているのは250機、さらに日常的にフル活用されているのは30機程度と見られている。また、パイロットのライセンスを持ちながら事業会社に所属していない有資格者、例えば自衛隊を引退したベテランパイロットなど、も国内に数多く存在している。

 そして世界的に見ても鉄道網の発達している日本ではあるが、山陰-山陽間や北海道、四国、九州など公共交通インフラが十分整備されていない地域も少なくない。そこでセスナやヘリコプターなどの遊休小型航空機を活用し、自由な移動手段を空に求めたい消費者と、休日に自分でフライトする以外ほとんど使っていないオーナーと、フライトの経験は十分あるものの事業会社に就職していないパイロットの3者をマッチングするサービスがエアシェアだ。

(エアシェア社HPから)

 既存の交通手段と比較した場合でも、鉄道の2倍程度の金額で移動時間を50%程度短縮することが可能となっている。エアラインの飛んでいない区間でもフライトが可能になるし、500km程度の距離であれば現実的な価格で最も自由な移動手段として活用することができる。サービスローンチから1年が過ぎ、今年のGW期間中にもサバイバルゲームにヘリを使ったアクティビティなどで150名以上の方が利用していると紹介した。

 エアシェアは日本発の航空シェアサービスとして、初めて法的安全性と運行に対する安全対策が認められている。ビジネスモデル特許も取得済みで、後続が出てきにくい環境を構築しており、航空シェアサービスにおける唯一性と優位性が担保されている。経産省が2030年に1万機の空飛ぶクルマの普及を目標としているが、その実現のためにもエアシェアのようなサービスが広く認知されることが求められている。

「ビジネスの拡大に向けて、何が課題となっているか」(江幡氏)

「機体を増やすことも重要だが、そもそもこの市場はどこにもなかったものなので、小型機をこのくらいの金額で利用できるんだということをユーザーに広く認知してもらうことが課題と考えている」(進藤氏)

「ターゲットユーザーはどんな人たちに設定しているか」(石倉氏)

「エアシェアの目標は誰にでも使ってもらえるというところだが、ボトムラインとしては新卒2年目くらいの人がお盆休みにアクティビティとして遊覧で使えるくらいの金額と考えている」(進藤氏)

株式会社Fant:飲食店とハンターをつなぐジビエ(野生鳥獣肉)サプライチェーンを運営

 株式会社Fantはジビエのサプライチェーンを整備し、ハンターに収入源を提供するとともに、レストランに安定的なジビエの供給を行う「ギルド肉project」を運営している。

株式会社Fant 代表取締役 高野 沙月氏

 シカやイノシシなど狩猟によって得た野生動物を精肉したジビエは、フランス料理などのレストランで目玉商品として認知が高まってきている。一方でレストランにとっては国内産ジビエを安定的に入手することが難しく、野生のカモやウサギの肉はそのほとんどを輸入に頼っているのが現状だ。

 従来のサプライチェーンではシカやイノシシを仕留めたハンターが近場にある食肉処理施設に搬入し、それを食肉処理施設が買い取って、精肉した後に飲食店や卸業者に販売している。これだとハンターにとっては直接飲食店から注文を受けることができず、近場の食肉処理施設に売り先が限定されてしまう。零細企業の多い食肉処理施設にとっては突発的な業務となるジビエの処理は負担となっている。飲食店にとっては欲しいものを安定的に入手することが難しいなど様々な課題があった。

 ギルド肉projectでは、まず飲食店からのリクエストをprojectが受ける。それをハンターに依頼し、ハンターは獲物を確保してprojectと提携した食肉処理施設に搬入する。食肉処理施設は搬入された野生動物の精肉を発注した飲食店に発送する。ハンターと食肉処理施設にはprojectからそれぞれ報酬と解体費用が振り込まれる。ギルド肉projectこれらすべてをオンラインで実施できるようにし、狩猟・ジビエ業界のDX化を目指している。

 このシステムにより、ハンターはあらかじめ報酬が分かったうえで狩猟に出ることができ、安定した収入につなげることができる。食肉処理施設も解体したジビエの売り先を事前に確保することができるというメリットがある。

 2019年時点で年間約2000トンが利用されているジビエだが、捕獲された野生動物全体と比べると、その利用率は約7%とその多くは廃棄されてしまっている。農林水産省ではこれを2025年までに倍増させることを目指している。ジビエはペットフードなどにも利用されており、鳥獣害に悩む農業従事者だけでなく、都会の多くの消費者にとってもメリットの大きい事業となることが期待できる。

「ハンターは全国にいると思うが、どのようにして事業を拡大していく予定か」(江幡氏)

「この事業でもっとも協力が必要なのは食肉処理施設。Fantが持っている食肉処理施設をモデルケースとして、同じシステムを適用することによって食肉処理施設がきちんと儲かるということを示し、全国展開することが大事だと思っている」(高野氏)

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