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40年の歴史を持つ日本最大規模のソフトウェア団体でリーダー交代

デジタル前提の社会に作り替えていく ソフトウェア協会(SAJ)の田中邦裕新会長が語る

2022年06月02日 10時00分更新

政策提言や教育分野でのDX支援、他団体との連携強化などなど重点活動を披露

 重点的に取り組む活動として、デジタル化を促進するための政策提言や、教育分野でのDX支援に向けた発信の強化、他団体との連携強化、会員同士のコミュニケーションの強化、地域デジタル推進室を通じた地方都市における活動強化などをあげた。

 「教育現場にはデバイスが導入されたが、次は教育現場のDXを行う必要がある。この活動は継続的に行っていく。また、起業家が多く集っているのもSAJの特徴であり、同時にデジタルを使わないスタートアップ企業はない。スタートアップ企業を支えていく活動も継続したい。また、新たな業界団体も増えているが、それを支援したり、事務局としての役割を果たしたりといったように、SAJが関与する団体を増やし、日本IT団体連盟を通じて、新たな団体でも影響力を発揮できるようにしたい。会員会社の若手社員がコミュニケーションを行なう場も増やしたい。デジタル前提の社会を作るために取り組みをさまざまな形で推進したい」と述べた。

 また、SAJの会員拡大の取り組みを続けるが、サイレント会員が多いという課題もあるという。これに関しては、「コンテンツをしっかり用意して、サービスを提供し、多くの会員にアクティブになってもらう。サブスクリプション時代においては、サイレント会員が、将来のリスクになると認識されている。会員各社には、SAJの活動に参加することに価値があると思ってもらうことが大切である。また、ユーザー企業のエンジニアにも参加してもらいたいと思っている。それも、日本のIT化を促進することにつなげられるだろう」とした。

 なお、筆頭副会長には、サイボウズの青野慶久社長、ピーエスシーの鈴木正之代表取締役が就任する予定であるほか、副会長には、コーエーテクモホールディングスの襟川芽衣取締役、弥生の岡本浩一郎社長、コスモ・コンピューティングシステムの杉本淳一代表取締役、ネクストウェアの豊田崇克社長、紀尾井町戦略研究所の別所直哉社長、バーズ情報科学研究所の村瀬正典社長が就く予定だ。

意見がブレない。自社のことは言わず、我田引水しない

 一方、2014年から8年間に渡り会長を務め、このほど名誉会長に就くことになる豆蔵K2TOPホールディングスの荻原紀男氏は、「2年前から会長退任の意向を伝え、選定委員会を設置し、箱根で合宿を行い、議論を進めてきた。そのなかで、次の会長には、私よりも20歳も若い44歳でありながらも、意見がブレない田中社長しかいないと考えた。発言の際にも、自社のことは言わず、我田引水をしない。そこを尊敬している。技術的な裏づけも高いレベルのものである」とアピール。「クラウドの評価は、そこに集うソフトウェアにかかっている。SAJも、田中社長をトップにして、そこにさまざまなソフトウェアの会社が集うことが、ソフトウェア業界の発展につながる。年齢的にも、あと20年間、会長をやってもらえる」などとした。

ソフトウェア協会 前会長の荻原紀男氏(豆蔵K2TOPホールディングス 代表取締役社長)

 また、「日本には100以上のIT関連団体があるため、提言などを受けとる経産省や総務省にとっては迷惑な話であり、意見がまとまらず、日本が発展していかないとも考えた。そこで、会長在任期間中に、日本IT団体連盟を設立した。また、これを活かすには政治力も必要だと考えてデジタル社会推進政治連盟を発足した。さまざまなことが進んだと考えている」とコメント。

 また、「中小企業のDX化を進めるためのIT導入補助金は、2016年にスタートしたときには100億円の予算規模であったが、現在は3000億円規模となっており、日本のDXにも貢献している。GIGAスクール構想についても、人材育成のためには小中学生の時点からPCやソフトウェアに触れなくてはならないという観点から提言をしてきた。デジタル化が進めば、子供一人ひとりにあわせた個別教育も可能になる。デジタル庁についても、縦割り行政では日本のプラットフォームができないという話をしながら、運動をしてきた」などと活動について振り返り、「ソフトウェア業界の強化だけでなく、業界外に対する活動を強化してきた8年間でもあった」と振り返った。

 さらに、「会長在任中に、東京オリンピックのセキュリティにボランティアを活用したいと発言して炎上したことがあったが、結果として、サイバーディフェンスリーグで対応するなど、そういうことが必要な時代になっている。日本IT団体連盟の設立の際にも叩かれた。だが、私は先が読めるから、そういうことを言ってきた。叩かれても結果としてはよかった。ぜひ理解して欲しい」などと語った。
 

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