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信号機やエレベーターとロボットが連携。ビル内外での佐川急便×ソフトバンクの配送実験

屋外用と屋内用2台のロボットで
信号がある交差点の横断と館内配送を検証

 2021年4月の実証実験は、最大時速5.4キロの屋外用と、最大時速1.8キロの屋内用のロボット2台を使用し、東京ポートシティ竹芝オフィスタワーとその周辺地域で4つのルートで実施。

 屋外ルートは、①オフィスタワーの敷地内を出て歩道を走行し、敷地内の別の場所へ配送するルートと、②横断歩道を渡り、カフェ(タリーズ)店舗前へ配送するルート。屋内ルートは、③オフィスタワー29階の集荷場からフロア内を移動して、同一フロア内の別の場所に配送するルートと、④エレベータに乗り、27階や30階に配送するルートのそれぞれ2つ。

 クール便の配達やカフェからのデリバリーを想定し、屋外用の実証機には荷物ボックスを兼ねた冷蔵庫を搭載し、温度変化や振動による商品品質の保持についても検証が行われた。

 交通量の多いエリアなので、比較的人通りの少ない午後の時間帯を選択し、実際のサービスは遠隔監視を想定しているが、実験ではスタッフが随行する近接監視にて実施。検証後には、技術や安全性能の評価に加えて、検証した際に現場にいた一般の歩行者へのアンケートで社会実装に向けた評価が調査された。

信号ごとの点灯間隔の違いによる調整、効率的な運用に課題

 実証実験では、信号がある交差点の横断は成功。ただし、1カ所の信号しか試しておらず、場所によって信号機の点灯時間が異なるため、ほかの場所でも信号が赤になる前に渡り切れるのかは不明だ。

 サービスを開始するためには、事前にルートとなりうる横断歩道の信号の点灯間隔を調査して、時間内に渡り切れない交差点は避けてルートを作成することも必要になってくる。また冷蔵庫の搭載については、想定以上にバッテリーを消費することが判明。1割以上早く減るという結果が出たため、ロボットとは別に冷蔵庫用のバッテリーを積むことも検討が必要だ。

 さらに、ロボット1台で運べる荷物の個数も課題となってくる。人が配達する際には100個前後の荷物を一度にトラックで配達する。ロボットでは多くても1回の配達に10個程度となり、すべてをロボットに置き換えると時間内に配達先を回りきれない。

 特に現在の屋内ロボットは最大時速1.8キロと低速(人が歩く速度は約4キロ)なため、人よりも配達に時間がかかってしまう。すべてをロボットに置き換えるのではなく、人にとって非効率となる荷物をロボットが配達するなど、効率的な配送手段としての利用を検討する必要がある。

 加えて、入退室管理システムとの連携にも課題がある。オフィス内への入館は、配送ロボットとセキュリティードアを自動連携する仕組みが考えられるが、連携システムの開発・運用コストが大きければ、警備や受付のスタッフなどが手動でドアを開閉する手もあり得る。マンションへの配達も、共用のエントランスを通過して玄関先まで届けられる仕組みを作るか、住人がエントランスまで取りに行くのかでコストは変わってくる。

 サービスとして成り立たせるためには、ロボットのコストも重要となる。安全に走行するために多数のセンサーが搭載されているため、導入に必要なコストは高額となることが想定される。早期サービスインを目指すには、どこまでのスペックをロボットに要求するのか。人による配達と合わせて効率的な活用方法を考えて運用することが必要になってくるだろう。

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