週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

自動配送ロボットのサービス実装に向けた協調、共助、官民連携のあり方とは

2022年04月27日 11時00分更新

 続いて、茨城県つくば市と岡山県玉野市における自動走行ロボット実証の取り組みと、令和2年度補正NEDO事業「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」での楽天グループ株式会社 とパナソニック株式会社の実証事例が紹介された。

次々とサービス化を実現する、つくば市の取り組み

 つくば市では、未来構想の4つのビジョンのうちの1つとして「市民のために科学技術をいかすまち」を掲げ、科学技術を活用した地域課題の解決の取り組みを推進している。これまでにも数多くの実証が行なわれており、社会実装された例も多い。例えば、筑波大学医学部発ベンチャーの株式会社リーバーとつくば市が共同で開発した医療相談アプリ「LEBER」、モビリティロボット実験特区として実現したセグウェイツアーなどが有名だ。

 自動走行に関しては、自律走行ロボットのコンテスト「つくばチャレンジ」でロボットコンテストを2007年から開催。このほか、人を乗せた自動運転車いすや、人の後ろを追従するロボットなどは、警察庁と協議のもと、現行法のままで歩行者扱いとして公道走行を実現している。

 NEDOの事業では、2021年に筑波大学のキャンパス内で楽天グループ株式会社と本田技術研究所による配送サービスの実証実験が実施された。

 将来的につくば市は、つくば駅周辺で荷物搬送ロボットによる365日24時間配送、周辺地区での移動スーパーからの自動配送の実現を目指している。

 こうした新しい技術を社会実装するには住民の理解が重要だ。つくば市は2020年に「つくばスマートシティ倫理原則」を策定。セキュリティの確保や安全性、透明性、公平性などを定めている。

つくば市 政策イノベーション部長 森 祐介氏

小さな自治体こそ自動配送ロボットの早期実装が必要

 玉野市 公共施設交通政策課 主査 甫喜山 昇平氏は、玉野市の抱える公共交通の課題と、三菱商事・三菱地所・東京海上日動が玉野市で実施した自動配送ロボットの実証実験を紹介。

 岡山県玉野市では、市内の路線バスを補完するコミュニティバス「シーバス」、予約制の乗合デマンドタクシー「シータク」の2つを運行しているが、ドライバーの高齢化で今後も事業を続けられるかは不安があるうえ、山間部ではタクシーが運行できない地域もある。

 こうした背景から自動配送ロボットの早期実現を目指し、2020年12月に三菱商事・三菱地所・東京海上日動による自動配送ロボットの公道走行実験に協力。ロボットは株式会社ティアフォーの「LogieeS」と、株式会社オプティマインドのルート最適化サービス「Loogia」を採用し、1台のロボットが複数の個所で荷物をピックアップし、複数個所へ荷物配送を行う実験が実施された。

 玉野市は専門部署がないため、実験自体は複数事業者の協力のもとに実施され、市の役割は、フィールドの提供と市民説明会などイベントの開催、地元警察署との調整が中心。コロナ禍で通常の集会が難しかったため、地域の体操教室などに出向いて協力の呼びかけを来ない、荷物の受け渡し体験に参加してもらったという。

 また、子供向け保育園でのロボットとのふれあいイベント、高校3校を対象としたウェビナー会議などを実施したことで、実用を期待する声が広がっているそうだ。

 自動配送ロボットは、高齢化や人手不足の深刻化している地域にこそ必要。サービスを実装するには地域に認められることが不可欠であり、玉野市の取り組みは、専門部署のない小さな自治体の参考になりそうだ。

玉野市 公共施設交通政策課 主査 甫喜山 昇平氏

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この特集の記事