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自動配送ロボットのサービス実装に向けた協調、共助、官民連携のあり方とは

2022年04月27日 11時00分更新

サービス実装に向けた企業間協調、共助、官民連携のあり方とは

 後半のパネルディスカッションには、経済産業省中野剛志氏、楽天グループ株式会社の牛嶋裕之氏、パナソニック株式会社安藤 健氏、つくば市の森 祐介氏、玉野市の甫喜山 昇平氏と、モデレーターとして日本総研の東 博暢氏が参加。自動配送ロボット・サービスの本格展開、社会実装に向けた実現方法をテーマに議論した(以下、敬称略)。

:実証実験から脱して次のステージに進むためのポイントは何でしょう?

牛嶋:サービスとして成立するのかは、数カ月間使ってもらってようやく見えてくるもの。長期間継続的にサービスを提供して事業として成り立つまでトライアンドエラーをしていくことが大事だと考えています。

:確かに、どんなニーズがあるのかは住民を巻き込まないとわからない。実際に4台運行しているパナソニックさんはいかがですか?

安藤:事業化の見通しという意味ではまだまだ手探りです。あまり技術の完成度にこだわり過ぎることなく、まずは今の技術でもできるサービス検証を愚直にやっていくことですね。やりながらデータや運用ノウハウを蓄積していくことが将来的なスケールアップにつながると思います。

:地方自治体としては、サービス実装にどのような苦労がありますか?

甫喜山:玉野市としては何十台も購入することはできないので、コスト的に見合うのかが課題です。現在の乗り合いタクシーも採算は取れておらず、国や玉野市が補助してなんとかやっている状況。いかに費用をかけずにやるかが悩ましいところです。

:先端都市のつくば市から脱・PoCへのアドバイスはありますか?

:つくば市では数えきれないほどの実証実験をやっており、今動いているものだけでも数十。しかし、PoCのための取組ばかりやっていても市民の役立つサービスにならないのでは、という懸念があります。また、リソースが限定的なスタートアップはPoC疲れになっています。制度の所管官庁には、こういう条件をクリアすれば規制が緩和され、次の実装の段階に進める、というマイルストーンをあらかじめ設定することを期待します。

:政府の立場では、実証実験についてどのようにお考えですか。

中野:法整備までが政府の役割。実証から実装への段階では、自治体や事業者がアイデアを出す番です。自動車は最初からそのニーズがあったわけではなく、自動車が出たことでイノベーションが起きた。配送ロボットも最初は買い物弱者対策、ラストワンマイル配送のニーズだけれど、一度世の中に出すことで、思いもよらないニーズが生まれる可能性があります。配送ロボットはこういうもの、という先入観を捨てて、思い切って違う形をやってみたら突破できるかもしれません。もっと自由にやってみて、知恵を編み出していただければ。

:こういう使い方があったのか! と実証から得られた発見はありますか?

:持続可能なサービスに持っていくにはコストが重要。同じロボットを地域によって別の使い方ができないか、例えばゴミの回収など、ほかのニーズと組み合わせて実用化することも検討しています。

牛嶋:現時点で想像できるクリーニングや、ゴミの回収などのほかにも、いろいろな用途がありそうです。とはいえ、そういう用途まで拡げないと採算性がないのかというと、そうではない。デリバリー需要が拡大する一方で、すでに配送の担い手は不足しているため、ロボットによる配送の必要性は自明とも言えます。あとは無人化・省人化によってコストを下げていくことですね。

:子どもたちの世代にはまったく新しい使われ方になってるかもしれませんね。玉野市さんは今後、官民連携でどのように進めていくお考えですか?

甫喜山:実装には地域のニーズを的確に把握する必要があると考えています。例えば、この地区では比較的若い団地だから買い物に、高齢者が多ければ処方薬の配送、といったエリアマーケティングをしながらやっていければ。地域の実情、何を一番欲しているかをわかっているのかは自治体なので、自治体と企業が連携してサービスを実装していくことが大事だと思います。

:パナソニックは藤沢市と長年連携されていますが、民間側からの官民連携のポイントをお話いただけますか。

安藤:配送ロボットのスケールアップには共助が大事。人とロボットの助け合い、官民の共助、企業間で地図や規格の統一など、トータルの利益とコストをどのようにシェアリングさせていくかが、官民連携ではすごく大事になっていくと思います。

:共助と協調の設計とガバナンスが今後の課題ですね。

:共通のインフラと1つの企業に特化していく部分はしっかり戦略的に作っていく必要があります。官民連携については、スタートアップのPoCが成功したら自治体がきちんと購入すればスタートアップが育ち、サービスの継続性も担保できます。しかし、今の自治体の調達ルールでは難しいので制度改正も必要になってくる。

牛嶋:ロボット配送についてはスタートアップのような気持ちで取り組んでいます。具体的には、ロボット・ドローン配送のための専用アプリを作り、既存のプラットフォームでは試せないようなことも積極的に行っています。自治体や政府との関係は、ロボットデリバリー協会において、安全基準の策定や認証の仕組みづくりといった産業界としての責務を果たしていきたいです。

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