アドビ日本法人設立30周年を記念する特別コンテンツ。1本目は日本でのDTP革命とアドビについて見てきたが、2本目は営業現場から見たソフトウェア販売のリアルをお届けしよう。アドビの営業4人が見たパートナーとの関係、パッケージ販売の舞台裏、そして箱売りの永続版(パーペチュアル)からサブスクへの移行の苦労話などを聞いた。(以下、敬称略、インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)
シュリンクパック時代、戦場は家電量販店の店頭だった
大谷:まずは最古参の菅田 武さんから、自己紹介と当時の業務を教えてください。
菅田:私は2002年10月入社なので、今年で満20年になります。ただ、ジャパンの30周年という話だと、2/3しか知らないという立場です。
大谷:充分です(笑)
菅田:いわゆるチャネル畑を長らく担当してきて、入社当時は家電量販店の担当でした。製品はすべてディストリビューター経由での販売だったので、ディストリビューターの家電量販店の担当の方といっしょに回っていました。
まだまだシュリンクパック全盛期で、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Adobe Acrobatなどのソフトを単体で箱売りしていた時期です。メディアもCD-ROMで、1枚1枚にシリアルナンバーが付いていて、インストール時に入力するというものです。
大谷:懐かしいですね。私も昔、年賀状ムックの販促で家電量販店に立っていた経験があります。
菅田:主要な家電量販店では、目立つ「ゴールデンスポット」にパッケージを置くために、店頭什器を設置できるよう交渉したり、アドビ専用のディスプレイを作ったこともありました。
大谷:当時は法人でもパッケージ購入していましたね。どんな製品を扱っていたのですか?
菅田:アドビの製品はもともとプロ向けなので、企業内個人が仕事で使うのがメインです。ただ、これとは別にホビー向けの「Elements」というラインナップがあり、私が入ったときはPhotoshop Elements 2.0を拡販していこうというタイミングでした(関連記事:アドビ、画像編集ソフト『Adobe Photoshop Elements日本語版』発表)。だから、量販店さんのご協力をいただいて、店頭什器と呼ばれるPOPなどを設置してもらったのを覚えています。
大谷:なるほど。続いて岡上浩司さんお願いします。
岡上:私の入社は2007年12月。入った当初は菅田さんに教えていただき、家電量販店をはじめいろいろなパートナーのところに連れて行ってもらいました。
大谷:菅田さんの入社から5年ほど時間が経ってますが、当時はどんな感じだったんですか?
岡上:すごく印象に残っているのは、その年には「Adobe Creative Suite 3」が発売開始されたところでした。ちょうどマクロメディアを買収したあとで注目された新製品発表という感じだったのですが、私は入社当初だったのでよくわからず(笑)。「Dreamweaverすごい」とか、「これからは紙からWeb」みたいな話が飛び交っていたときで、節目の年だったの覚えています(関連記事:アドビ、全12製品で構成される4種の『Adobe Creative Suite CS3』日本語版を発表)。
欠品しても在庫はシンガポールに
大谷:営業として家電量販店を回っていて、大変だった思い出はありますか?
菅田:アドビの家電量販店担当はつねに1~2名で、主に本部交渉等を行なっていました。店舗までカバーすることがなかなか難しかったため、協力パートナーのラウンダーさんに定期的に店頭に回ってもらい、ポスターを貼り換えたり、陳列を整備してもらっていました。
岡上:私は欠品で家電量販店様からけっこう怒られました。「在庫がないのは機会損失だー」みたいな感じで。
大谷:在庫や欠品って、ソフトウェア=パッケージだった時代の最大の課題でしたよね。
岡上:お客さまから「お前とってこい!」と言われても、モノはシンガポールにあるという状態で、また怒られたりして。本当にご迷惑をおかけしました。
大谷:それはお互いに大変でしたね。
岡上:あと、大変だったのはアップグレードパスが非常にややこしかったこと。このライセンスのバージョンアップで、こうすると安く買えるとか、このアップグレードはできるけど、このアップグレードはダメとか、そういったパスを理解するのが大変でした。
菅田:PhotoshopやIllustratorといったクリエイティブ系製品って、下手したらわれわれよりも、お客さまの方が詳しい(笑)。きちんと理解するのは苦労しましたね。
岡上:小さな表記ミスとか、ライセンス証書のコメントのミスタイプとかけっこう気にされるお客さまもいらっしゃいました。パートナーからは直してくれと言われるけど、北米はなかなかおおらかで、直らなかったことも多かった。パートナーもお客さまとわれわれの間に挟まれて大変だったと思います。
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