週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

第46回NEDOピッチ「スマートシティ ver.」レポート

スマートシティ関連のテクノロジーは生活者の課題を解決できるのか

2022年03月28日 11時00分更新

政府のスマートシティ推進施策

 5社のスタートアップからのビッチの後、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 上席政策調査員 渡辺 昌彦氏から、政府のスマートシティ推進施策の紹介がなされた。

 政府は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会をSociety 5.0と名付けて我が国が目指すべき未来社会の姿として定義した。そこではフィジカル空間のセンサーからの膨大な情報がサイバー空間に集積され、サイバー空間ではこのビッグデータを人工知能(AI)が解析し、その解析結果がフィジカル空間の人間に様々な形でフィードバックされる。これにより、今まで出来なかった新たな価値が産業や社会にもたらされることを目指している。

内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 重要課題(スマートシティ)担当 上席政策調査員 渡辺 昌彦氏

 スマートシティはそのSociety 5.0の先行的な実現の場であり、都市や地域の抱える諸問題の解決を行い、新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域であるとした。2021年3月時点で33のスマートシティが技術実装されており、2025年にはこれを100とすることが目標になっている。

 これを官だけで実現するのは難しいので、まず2019年にスマートシティ官民連携プラットフォームを設立し、2020年にはスマートシティ・リファレンスアーキテクチャ(https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20200318siparchitecture.html)」を作成した。これはスマートシティを実装する際に決めるべき/考慮すべき事項をリスト化したもので、スマートシティが目指すべき姿をイメージする際の基盤資料となっている。

 さらに2021年にはスマートシティ・ガイドブック(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/index.html)が公開された。これはスマートシティの定義・意義・必要性、導入効果およびその進め方について記したガイドブックとなっている。先行事例が多数掲載されているので、是非参考にして欲しい。

 政府は既に地域実装/モデル事業や共通基盤の構築・標準化など、様々な分野に対して予算手当てを行い、スマートシティの実現に向けた支援を進めている。特に令和3年度には内閣府と総務省、経済産業省、国土交通省が合同でスマートシティ関連事業の公募・審査を行った。これは各省庁が個別に進めてしまうと分野間のデータ連携がしづらいということで、各事業を束ねて審査をしたとのことだ。

 例えば内閣府の地方創生推進事務局で実施している未来技術社会実装事業は、資金面のバックアップではなくて、ハンズオン支援を行っている。地域の方々と一緒になって課題を解決していくために、どういった体制を作ったらいいか。どういったシーズ・技術を採用したらよいか、そういったことを一緒にやっていく事業となっている。

 総務省の地域課題解決のためのスマートシティ推進事業は、都市OSやデータ連携基盤を実装するということを前提条件として、その2分の1の資金を補助するといった事業となっている。どういった課題を解決するためにデータ連携基盤を導入するのかとかいったことをきちんと提案していただくことが補助事業の要件になっている。また、事業開始後は実証で終わらせずに必ず社会実装することも要件の1つとなっている。

 経済産業省の地域新MaaS創出推進事業は、令和3年度のMaaS実証実験の結果を踏まえ、MaaSの更なる高度化に取り組み全国に横展開していくモデルとなる先進事例の創出を目指し、より高度な実証実験を実施するものとなっている。

 国土交通省のポストコロナの移動需要を取り込むための公共交通等の高度化の推進事業では、ポストコロナを課題に利用者のニーズの変化に公共交通を高度化でどう対応するかといったことに関して支援をしていく。

 本年度は、合同審査という形にするかどうかは各省庁と協議中ながら、3月末から4月にかけて公募を始めて6月には審査をしたいとのことだ。最短でそれくらいに公募が始まる事業もあるので、ぜひアンテナを高く持ってほしいと渡辺氏は話している。

 スマートシティは実証から実装の段階に入っていると政府は考えている。2025年以降を見据えた中長期のロードマップの策提を進めながら、スマートシティ官民連携プラットフォームなどでの活動をさらに展開していくとしている。また、国・地方のデジタル化を進めているが、スマートシティのアーキテクチャもさらに進化している。共通要件の具体化や実装水準の評価などを通じてアーキテクチャの改定を進めていく予定としている。

 人口減少や少子高齢化と併せ、都市のスマート化はもはや必然の進化と言える情勢になってきている。一方で地方都市には東京からは見えない課題も多く、理想的なスピード感でその波に乗るというわけにもいかない現実もある。国の支援と、スタートアップの熱意とで新しい生活空間、より良いビジネス環境が世界に遅れることなく生まれることを願っている。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この特集の記事