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スタートアップ向けセミナー~スタートアップ企業に必要な知財人材と体制~ by IP BASE

スタートアップにおける知財担当採用の重要ポイントとは

2022年02月25日 09時00分更新

1人目の知財担当を採用しようと思った時の状況は?

 2019年の3月の採用で、2017年の9月に上場したので、上場後の採用です。従業員数300人くらいで初めて採用しました。できれば上場前、従業員250人の頃に採用しておけばよかった、という思いはあります。

橋本 弊社は2021年の夏から1人目の採用に動き始めました。従業員は100名強。サービスの開発目線では、会社の軸になる製品が立ち上がり、それに付随する別の製品が生まれそうになっているタイミングで1人目を採用するべきではないかと考えています。

中村 弊社も今年の夏から採用活動を始めました。社員数は約80名、累計調達額は76億円。きっかけは、これまで人工衛星は宇宙空間に上がるとリバースエンジニアリングできないので、特許は取らないほうがいいという考えだったのですが、量産化することになり、外部のパートナーと提携するため、特許化しオープンにする戦略に変わったことです。

市川 知財は攻めだと考えているので、製品を出すときは知財担当が必須です。1つ目の特許はとても大事で、私は基礎的な特許に携われなかったのが残念でした。できれば、最初のフェーズから知財担当者がいたほうがいいと思います。

木本 安高さんは支援者側として、いろいろなスタートアップと関わっていらっしゃいますが、人材周りの困りごとや、最近のトレンドはどうですか。

安高 100名前後から知財専属が入るケースが多いですね。もっと早いタイミングで入るメリットは大きいけれど、資金、人材などの事情から、なかなか意思決定ができないのが実情。現実的には、採用前の段階として、外部の専門家といかにうまく付き合うことが重要だと思います。最近は、会社に専門家がいない前提でコンサルから入ってくれる事務所や、大企業の知財部員が副業の形でサポートしてくれるなど、外部の環境も変わってきています。

株式会社アクセルスペースホールディングス 経営管理グループ法務担当弁護士 中村 泰彦氏

1人目の採用プロセスの課題と打ち手は?

木本 知財専門家はエンジニアなどとは違って特殊な採用チャンネルなので、JDや待遇についての情報が少なく、採用する側には選考基準を決めるのも難しいですよね。

 1人目の採用では、どういう人が知財担当者として優秀なのか、評価の仕方がわからなくて、たまたま紹介で当社に見学にきた方がすごく良かったので、そのまま採用しました。2人目や3人目の採用では、その方に専門的なことを見てもらっていますが、1人目は、カルチャーフィットとコミュニケーション能力だけで決めました。

橋本 とにかくJDを提示しないことには募集できないので、この夏に人事部門と相談してオープンにしました。今は月に何件かの応募がくるようになりましたが、どのような人を採用すべきなのかは社内の誰もがわからない状況なので、選考には苦戦をしています。選考基準としては、知財のバックグラウンドや経歴は僕が判断し、実際に働く部署の担当者がカルチャーマッチングを見る、という2つの観点を考えています。

中村 弊社では公式サイトの求人欄と人材紹介会社で募集をかけました。大企業の知財部で経験を積んだ方は、どうしても年齢が高くなってしまい、ほかのポジションの平均像と比べますとギャップがありました。また、従業員の3分の1が外国人なので英語でのコミュニケーション能力も大事です。条件的には厳しかったのですが、幸い、採用開始から内定まで1ヵ月で決まったので、運がよかったですね。

安高 スタートアップの企業知財の経験者が望ましいのか、大企業の企業知財しか経験がなくてもやる気があればかまわないのか。こだわりはありますか?

橋本 ベストなのは、スタートアップの知財経験者が望ましいです。なぜかというと、大企業の知財部の方は、発掘だけ、対外対応だけ、とか役割が分かれていることが多いですが、スタートアップの知財は、知財以外のこともやらなければならないケースがたくさんあります。大企業出身でもそういうマインドを持っていらっしゃる方であれば。

安高 難しいところですね。でも現実としてスタートアップの知財経験者は少ないので、未経験であっても、まだスタートアップの文化に理解のある方であれば可能性はでてくる感じですね。

木本 大企業知財部経験者の市川さんとしては、そのあたりのギャップはありましたか?

市川 自分自身、すごく悩んだところです。大企業は訴訟や交渉もたくさんありましたし、大きな法改正に関わるようなレアな体験ができるのが利点です。確かに、自分ができる範囲は狭いですが、そのぶんスタートアップにはない深さがあります。スタートアップはやれることが無限に広いので、それが楽しめるかどうかですね。こうした気持ちに共感できる人が増えてくれば、採用もしやすくなってくるのかな、と思います。

IPTech特許業務法人 代表弁理士公認会計士 安高 史朗氏

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