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docomo Open House'22レポート

6Gの世界、デジタルのデータが私たちの筋肉を動かし始める未来

2022年01月24日 11時00分更新

メタバースに登場した操作者のアバター

メタバース内のエンターテインメント

 予約制の、体験型コンテンツも用意されていた。中でも面白かったのは、リアルタイムに配信したモーションデータを3Dモデルへ反映し、視聴可能にする技術だ。

 従来、モーションキャプチャーをトレースしてコンテンツを動かすには、3Dモデルとモーションを繋ぎ合わせるなど事前の準備が必要だった。当然、内容を急に変更することはできない。

 今回NTTドコモが開発した技術では、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)を活用して、リアルタイムに大容量のデータを伝送することで、モーションのリアルタイムでの3Dモデルへの適用を可能にしている。

 では、事前に準備されている映像を流すことと、リアルタイムで映像をトレースして配信することには、どのような差があるのだろうか。私が思うに、それは視聴者とのインタラクティブなコミュニケーションの可不可である。

 遊園地などのヒーローショーを思い浮かべてほしい。あれは、子どもが敵にさらわれたり、子供が「助けて!」と叫んだりすると、タイミングよくヒーローが現れ、敵をやっつけてくれるという形式をとっている。つまり、同一空間上、同一時間軸に存在している子ども、敵、ヒーローが、言語あるいは非言語によるコミュニケーションをとり、その結果が次の展開に結びついていることになる。

 今回のデモを応用すれば、メタバース上でそれが可能になる。映像配信に臨場感が足りない理由のひとつは、インタラクティブ感の欠如だ。ゲーム実況を眺めるのと、自分でゲームをプレイしているのとでは、臨場感が異なる。これまで“実況を見る”だけだった分野で、“プレイ”が可能になるのだ。

アクターの動きをそっくりトレースしている

 デモでは、専用のスーツを着用したアクターの映像を参照しながら、彼らの動きをトレースしたウルトラマンとゼットンの格闘を見ることができたが、トレースの度合いはとても正確で、レイテンシーも許容範囲内だった。

Perfumeの動きをスキャンして、360度映像で楽しめるようにしたコンテンツ

 コロナ禍以降、接触を控えたエンターテインメントにも注目が集まっているが、こうした技術が応用されることで、ヒーローショーやライブのハイブリッド開催など、これまでになかったライブ型コンテンツの楽しみ方が可能になるだろう。

人の“感覚”を拡張する6G時代の到来

 5G網はいよいよ普及しつつあるが、6Gの時代ではどんなことが可能になるのだろう。

 docomo Open House'22でNTTドコモが提案していたのは、「人の感覚の拡張」だ。

手首にセットした電極で、本人の意思とは無関係に筋肉の収縮運動が起こせる

 いきなりコンセプトを説明しても伝わりにくいと思うので、まずはデモの内容をお伝えしたい。デモでは、手首に電極を装着したスタッフ2名と、ロボットが用いられた。スタッフ2名の電極は入力側(Aとする)と出力側(Bとする)に分かれている。

 Aのスタッフが手を握ったり閉じたりすると、それとほぼ同時にロボットと、Bのスタッフが同じ動きをした。はじめ何が起きているのかよく分からなかったが、Bのスタッフは自らの意思で手を動かそうとしているのではない。Aのスタッフの電極から取得した筋肉の収縮・弛緩の情報が、ネットワークを通じてBのスタッフの電極に伝わり、“意思とは無関係に”動いていたのだ。

ロボットに動きをトレースすることも可能だ

 つまり、これが感覚の拡張ということである。デモでは、Aのスタッフの感覚がAのスタッフの身体という枠を飛び出して、Bのスタッフに伝わっていたことになる。私たちは、自分の身体を動かせるのは、自分自身だけだと思っている。ところが、実際にはそうではない。「体の動き」をデータにできれば、身体の外にあるものを動かしたり、反対に、体の外にあるものから動かしてもらったりすることが可能になる。次世代の6G網を使えば、こうした身体的な動作さえ伝送できるというのが、このブースのテーマだった。

ピアノの上部にセットされたセンサーでての動きを読み取っている

 応用例として、ピアノの講師側の手の動きをセンサーで取得し、電極で生徒側に動きを伝えるデモも披露された。

 楽器の弾き方で、よく「コツ」という表現が用いられるが、このデモでは“コツをデータ化”して生徒に伝送していることになる。視覚によるインプットよりも、直接、感覚にインプットしてしまう方が、より効率的な弾き方の習得が可能になるという提案である。

電極で、講師側の動きをトレースする

 ちなみに、自分の意思とは関係なく筋肉が動く感触は、「少しピリッとした電気信号が来て、続いてググッと腱が伸び縮みする感じ」だそう。体験してみたいような、したくないような……。

次のdocomo Open Houseにも期待!

 私たちの知らない研究開発が日々重ねられていて、時にそれが新規サービスに結びついていることを、肌で感じられるのがdocomo Open House'22だった。特に、今回の展示内容は、データという無形の世界を飛び出して、リアルな世界に影響するようなテーマが多く取り扱われていたように思う。

 消費者の多くはNTTドコモを情報通信の企業と捉えていると思うが、いつかはそうでなくなるのかもしれない。もしくは、いままさに、情報通信という言葉が示す範囲が急速に拡大しているのかもしれない。

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