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カンパニー制廃止のパナソニック、60年ぶりに経営基本方針を改定しITで会社を変える

2021年10月11日 09時00分更新

60年ぶりの基本経営方針改定

 だが、楠見社長兼グループCEOは、ここに強い危機感を感じたのだ。

 「創業者が示した綱領、信条、七精神の意味は知っているだけとか、経営理念の表層的な理解に留まったままではいけない。いま一度、経営基本方針に立ち返り、一人ひとりがしっかりとこれを実践していくように徹底しなおさなくはいけないという思いを持つに至った」とする。

 楠見社長兼グループCEOは、2021年10月1日の新体制のスタートにあわせて、60年ぶりに経営基本方針を改訂した。

 パナソニックグループでは、綱領、信条、七精神を中心に、その実践にあたっての考え方までを含めて「経営基本方針」と定義している。

 経営基本方針の改訂に関しては、楠見社長兼グループCEO自らも、編集メンバーの一人に加わり、約4ヵ月間に渡り、知見を持つ社員と多くの議論を重ね、原点となる考え方はそのままに、社員が忘れてはならないことを抽出し、現代に通じる指針にまとめなおしたという。

 「私たちが、本来持っていた基本的な考え方と、行動の指針を再び浸透させるための改訂」と位置づけ、ここでは、一人ひとりが持てる能力、スキルを最大限に発揮し、その一人ひとりがあるべき理想の姿を考え抜き、お互いに言うべきことを言い、多様な人財の異なる意見を積み重ねて迅速に質の高い意思決定をし、弛みなく改善を重ねることで、誰にも負けないお客様や社会へのお役立ちを果たすことや、常に現在の状況を素直に見極め、現在の方向性が社会の状況に合わなかったり、より良い方策があったりするならば、躊躇せず少しでも早く新たなより良い道を選ぶ姿勢を持つことなどを示した。

 物と心が共に豊かな理想の社会の実現を目指す「物心一如」、お客様大事の心構えを、誰よりもしっかりと実践し、お客様の信頼を得る「一商人」、一人ひとりが、全能力を傾けて、よりよい手段を生み出し、それに果敢に挑戦し、より多くの成果をあげることに責任感を持つ「自主責任経営」と「社員稼業」の考え方を徹底することなどを盛り込んでいる。

 「60年前にまとめられた経営基本方針の内容には、時代にそぐわなくなったものがあったり、綱領や信条は、60年前の古い言葉で表現されており、難しい文章もあった。改めて社員への浸透を図るためには、現代の社会環境や社会通念に則した今日的な解釈が必要と考えた。とくに、どのように実践していくべきか、という点が弱くなっている現状を鑑みて、当時よりも、その部分を大きく強調して、より具体的な指針として示した」という。

 たとえば、「綱領」では、「産業人たるの本分に徹し 社会生活の改善と向上を図り 世界文化の進展に寄与せんことを期す」としていたが、これを「私たちは企業人として、社会の発展に貢献するという意識を持って、この使命をたゆみなく実践し続けていく」とわかりやすく言い換えた。また、「無駄をなくす」という点では、これまでは形式知化されておらず、明言されていなかったことから、この部分をはっきり示す形で書き足したという。

 「経営基本方針を読んでもらうだけでは浸透しない。また、これを実践することが大切である。浸透させ、実践するためには、あの手、この手でやっていく。日頃の議論のなかでも、ここに立ち戻って考えるということが広がるようにしたい。まずは、この2年で社内に浸透させたい」と語る。

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